75 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2007/09/08(土) 01:36:13


 私の意識は、真っ白になった。
 ……許せない。
 よくも私の翼を。
 よくも、お父様から頂いた完璧な身体を――!!

「あ、あ……ああああああああああああああああああああああっ!!」

 腕に力を込めて跳ね起きる。
 引き千切られた翼は、気が狂いそうになるくらい痛い。
 けれど、そんなものは無視していい。
 気が狂うのなら勝手に狂えばいい。
 今はただ、目の前にいる男へ飛び掛って――!

「あ、ぐっ……!?」

 手が届く直前で、身体が止まった。
 がくん、と私の上半身が宙に泳ぐ。
 手も、足も、何かに捕まれたように動かない。
 見れば、私の両手両足には、何処から伸びて来たのか、無数の茨が絡みついていた。
 腕を滅茶苦茶に動かして振り払おうとしたけど、茨の鎖はびくともしない。

「はなっ……放しなさい……放せぇっ……!!」

「――無駄ですわ、お姉様」

「っ!!」

 誰か、居る。
 私の後ろに、もう一人。
 そうだ、思い出した……翼を奪ったのはあの男じゃない。
 あの男が話している隙に、後ろから誰かが私の翼を引き千切ったんだ。
 じゃあ、私の背後にいるコイツが……。

「誰っ!? 一体何者なのっ!?」

 首を捻って後ろを睨みつける。
 すると、そこには……。

「……初めまして、お姉様。
 私は薔薇乙女《ローゼンメイデン》第七ドール……雪華綺晶」

 第七ドール。
 そう名乗る、真っ白なドレスに身を包んだ存在が立っていた。

 ……頭の片隅で、「嘘だ」と誰かが呟いた。
 でも、白熱しすぎて既に沸騰している私の頭は、それについて深く考える余裕はなかった。
 コイツが。
 コイツが私の翼を奪った張本人……!!

「貴女……よくも、私の翼を……!!」

「これの、ことですか?」

 そう言って、白い女が片手で持ち上げて見せたのは……見間違えるはずもない、私の翼だ……!

「かっ、返して……!!
 返して、返して、返してぇっ!!
 私の、私の羽根っ……お父様から貰った、大事な翼を返しなさいよぉっ……!!」

 縛られた手を、必死に雪華綺晶へ……その手に持っている翼へと伸ばす。
 でも、腕はピクリとも動かなくて、その距離は一ミリも縮まらない。
 女――雪華綺晶は、そんな私を見て、蕩けるように嘲笑った。

「うふふ……お姉様、とっても可愛い。
 そんなにこの羽根が大事だったんですか……?」

 そう言って、私の翼を指で摘むようにして持ち上げ、顔の高さまで持って来た。
 そして、その翼を…………まさか!?


α:「でも、残念でした」床に落とし、踏みつけた。
β:「あぁ、これがお姉様の……」口に含み、舐った。

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最終更新:2007年09月11日 08:33