61 名前: D two×three×four  ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/09/06(木) 22:19:13

ていうか立ち読みでごめん。:ライダー





む、さすが冬の夜というものは、事の他冷えるな。
ひたひたと石段を叩く草履、足元が心許無い。
たまに小石などがつま先に触れ、其処から温度が奪われる気がした。
何故深夜にわざわざ外出かと言えばだ。
兄が以前から友人に注文しておいた品が、先ほど店に届いたという電話が来た。
すぐにでも届けようという申し出を、仮にも女性に夜道を歩かせるわけには行かぬ、と辞退しておいて
その癖寒空の下に自分ではなく可愛い弟を放り出すのだから兄もなかなか人が悪い。
(宗一郎兄が行こうと言ったが、其れは俺から断った。)
だいたい、『商品』だなどとぼやかしてはいるが、どうせ酒だ。
何が善は急げ、だろう。自分が帰ったら早速呑むつもりだろうか。
酒の臭いはどうにも苦手だ、自分はすぐに寝てしまおう‥‥‥

がさ。

「!」
長い石段から脇、草むらの揺れに驚き足を止める。
ね、猫か何かだろう。夜だから薄気味悪く思えるだけだ。
(いちいち肝まで冷やしていたら、凍え死んでしまう。)
急ごう、そう思い再び足を動かす。山を降りれば人里‥‥という言い方も大仰だが、明かりがある。
きっと寒さも和らぐに違いな

がさ、がさ。
「‥‥‥ぁ、‥‥‥。」

「っ!!」
声?
い、否、獣だ。住んでおいてなんだが、こんな山に好き好んで立ち寄る者は多くない。
しかもこの夜中に、だ。ありえない、ありえないぞ‥‥
「‥‥‥誰か、いるの‥‥‥?」
――――ッ!!
間違いなく、人間の声。

63 名前: D two×three×four  ◆cCdWxdhReU [sage] 投稿日: 2007/09/06(木) 22:20:38

思わず声のする方へ足を向け、草を数度かき分ける。
居た。
木に凭れ、気だるげにこちらに瞳を向けるその人影。
肩にかからぬ程度の黒髪に、シックなワンピース姿。
落ち着いた、美しい女性だった。

白い肌が闇に映え、月光を弾く‥‥否、光っている?
物の怪の類では、等と下らない事を考える。

「ねえ、君。」
「‥‥っは、はい!」
血の気の失せた唇が、ゆっくりと動く。
「よかった、困ってたの。助けてくれない?」
表情から疲弊が見て取れた。何故ここに居るのかは判らないが、
何処か具合を悪くして、体を休めていたのだろう。
「ええ。人を呼びしょう。」
「いらないわ。それよりも、こっちへ」
「‥‥‥へ?」

細い腕に予想外の力で、ぐいと引かれる。
袖ではなく襟を。

結果――――合わさる、唇。

「むうッ?!」
突然の事に咄嗟、突き放そうと手を上げ――――

そのまま。
視界が色を失った。



時にして一刻ほど後。
葛木はキャス子のものなので  :柳洞寺で、俺はようやく目を覚ます。
残念ながら不参加で御座います。:『マスター』がようやく目を覚ました。

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最終更新:2007年09月12日 08:21