197 名前: 夢のタッグトーナメント・型月編 ◆QWcajfuhO. [sage] 投稿日: 2007/09/13(木) 00:07:33

 迂闊に近寄るのは初心者のすること。私は彼女から距離をとり、腕を組みながら異変が起こった彼女を見守った。
 ……しばらく観察してみるが、彼女はただ苦しんでいるだけで何もしてこない。
 ほっと息を吐く。私の考え過ぎだったんだ。大方私が与えた傷の痛みに耐えられず、蹲ったのだろう。我ながら酷い傷だ。早く手当てをしてあげないと、本当に死んでしまう…。
 勝負は終わりだ。少女に対する警戒を解く。と、同時に後悔の念に襲われる。私があれだけ技をかけまくった相手は、ただの一般人の娘だったのだ。哀れみをもって、倒れた彼女を見つめる。
 ―――――すると突然、どこからか、バキリ、と音がした。

「………え?」

 腕を見る。私の鍛えられた両腕は……曲がっていた。
 ヒビだとか生易しいものじゃない。枯れ枝を折るが如く、ボッキリと、曲がっていた。

「……ぐ、あああああああああっ!!???」
「……………」

 初めに疑問。次いで激痛。最後に恐怖。
 フジノは膝が震えながらも立ち上がり、釣りあがった口を以ってこの私を嘲笑っていた。この邪悪な笑み、さっきとは根本的に違う―――。

「超能力者、ですか……? ぐ、マズイ、ですわね。油断した…」

 折れた腕は動かない。この状況、明らかにするまでもなく、こちらが不利だ。
 しかし、フジノも、ようやっと私が今までかけてきたプロレス技が効いてきたのか、体ごと倒れる。無理もない。今まで立てたのが賞賛されるほどの痛みだろうから。それでも―――目は死んでない…!

「……凶れ」
「くっ」

 慌てて横に飛びずさり、物影に隠れる。が、フジノが放った何かにかすったらしく、左足首を捻挫してしまった。腕ほどの重症ではないが、これでは走り回ることができない…。

「ぐあ、痛い…。何てこと、何てことですのこれは。何の変哲もない少女からこんな痛手を受けるだなんて。い、痛い…。―――フジノのパートナーであるアキハもただ者ではないでしょうね。ミス・トオサカ、どうか無事でいてください…」

 ふと、だらりと垂れた腕を見る。まるで壊れた人形だった。


――Interlude out.



――Interlude side Red Satan


「そろそろ降参してくださいまし。これ以上は殺し合いになるわ」
「はぁ、はぁ、くっ、はぁ…」

 ―――甘かった。彼女の実力を甘く見すぎていた。最初彼女に会った時、彼女に直接的な強さは感じられなかった。覇気などなく、まるで一般人と変わらない迫力だった。が、甘かった。人並みの体を必要以上に補完できるあの超能力があれば、どんな相手だって勝てるではないか。
 まだ私はあの力の直撃を受けていない。それでもこの冷えて動かない左手を思えば、あれの直撃が、どれだけ恐ろしい結末を招くかは理解できる。しかも見えないソレをいつまでもかわし続ける自信などなかった。それでもせめて目だけは、相手を射殺そうと睨み続ける。

「はぁ、まだ諦めていないの…? ならばあちらをご覧になってください。真にパートナーの身を案じるというのなら、今すぐに降参してください」

 女が指した方に目を向ける。そこには……私以上に傷ついたルヴィアが、あの少女から逃げ回っていた。折られたのか、ぶらぶらと揺れる腕が痛ましい。まさかこれは―――。

「あの藤乃とかいう女も超能力者なのね…。く、クソッ、卑怯よ!!!こんな反則、してんじゃないわよっ!!」
「汚らしい言葉を吐かないで。卑怯も何も、貴女、未知の相手と戦うことを承知でここまでついて来たのでしょう? それにここまで優雅に戦える能力もそうそうありませんよ」
「くっ、ぐ…」
「さあどうしましょう。戦闘続行か、降参か。…この一縷の望みもない状況で続けるのは蛮勇。敗北を受け入れるのは勇者です」
「う、ううう…」

 ルヴィアを人質にとられているようで気に入らないが……確かに、この戦い、私たちが勝てる見込みは殆どない。相性が悪すぎる。やられるのが判っているのに続けるのは、愚者のやること。この結果を受け入れるのは賢者のやること。死んでしまっては、しかも他の人間も巻き込んで死ぬのだけは嫌だ。
 是か非か。遠野秋葉の言うとおり、ルヴィアを助けてあげられるのは、今の私だけ――――。



1、敗北を受け入れる
2、まだ勝利を手にしたい

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最終更新:2007年10月22日 17:29