273 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [攻撃対象・使用技・遠or近sage] 投稿日: 2007/09/16(日) 12:45:49


「……気に、食わないわねぇ」

「えっ?」

 ぼそり、と呟いた言葉に、雪華綺晶が反応する。
 なのでもう一度、今度は聞き逃しが無いように、はっきりと言ってやる。

「気に食わない、って言ったのよぉ。
 薔薇乙女《ローゼンメイデン》の中で、一番最後に作られたヒヨッコが、この水銀燈に指図ですって?
 ふん、身の程ってものをわきまえなさぁい」

 雪華綺晶の顔が、さっと険しくなる。
 ……なんだ、そんな顔も出来たのね。
 今までずぅっと澄ました顔ばっかりだったから、ちょっと意外だったわぁ。
 そんな風に思っていたら、唐突に、手足を縛める茨の拘束がきつくなる。

「ぐっ……!」

「……お願いを、聞いてくれないんですか、お姉様」

 ……随分と声が硬くなってるわね。
 こういうのは「お願い」じゃなくて「脅迫」って言うのよ、お馬鹿さぁん。
 まあ、どっちにしろ……私の返事は決まってるんだけど。

「は……ぁ……っ」

 少しの間だけ、目を閉じる。
 ……雪華綺晶の「お願い」を断れば、私は、多分、ここで、死ぬ。
 それでも私は、死んでも契約を破棄する気にはなれなかった。

「さよなら……士郎」

 雪華綺晶に聞かれないように、お別れの言葉をそっと呟く。
 残念だけど、他にお別れを言う相手が思いつかなかったから。
 士郎。
 いつだったか、私を見て、美しいと言ってくれたわね。
 今の私は、価値を否定されて、翼をもがれて、間違っても美しいとは言えないけど。
 それでも、最後に一つだけ、残っていたものがあった。
 ならば私は、これを守り抜くために、最期まで戦おう。

 意識を凝らす。
 手も足も、締め付ける茨に絡め取られているけれど……まだ、これは動かせる。
 ありったけの力を注ぎ込んで、一気に膨らませるイメージ。
 片方奪っただけで済ませていたのは、余裕のつもりだったのかしら?
 まあいいわ……やれ、と念じる。
 途端に巻き起こる、逆巻く風。
 膨れ上がった私の片翼は、絡み付く茨を全て断ち切った。

「……っ!?」

 雪華綺晶が息を飲む音が聞こえた。
 目を開く。
 真正面から、相手を見据えるために。

「……当然、聞けないわ。
 私を誰だと思ってるの?」

 台座の上に立ち、散らばる茨の破片を余裕を持って手で払う。
 そうだ、教えてやらなければならない。
 この名にかけて、私は最期まで私でいるということを。
 足元に転がる燭台をコツンと蹴りつけ、私は胸を張って告げた。



「私は水銀燈。
 誇り高き薔薇乙女《ローゼンメイデン》の第一ドール。
 ……私に命令したいなら、この名を奪ってからにして頂戴」




*トリプルクロスルール*
第一群・第二群・第三群のいずれかから記号一つを選んで投票。
群が多いため、今回は『 各 3 票 で 決 定 』。
5票じゃないので注意。
複数選んだ場合は無効票とした上で仕置きつかまつりまする。

第一群
α:雪華綺晶に――
β:後ろの神父に――

第二群
γ:黒羽根を――
δ:燭台を――

第三群
ε:投げつける。
ζ:叩きつける。

投票結果

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最終更新:2007年10月22日 17:57