18 名前: 衛宮士郎/ライダールート 投稿日: 2004/09/14(火) 01:26

女性は、

「今のは私の宝具の一つです、マスター」

と、よく分らないことを口走った。

「は————?」

振り向いたその瞬間に石にされなかった事に安堵する暇も無く、俺は言葉の意味が分らずに素っ頓狂な声をあげる。
宝具、という言葉も聞いた事も無ければ、の一つ、という事は複数所持しているものなのか、まったくもって理解出来ない。
混乱の上に恐怖を上塗りされ、更にその上に新たな混乱を塗り固められた俺の頭は、今度こそ本当にパンクしてしまいそうだった。

「自己封印・暗黒神殿————私が保有する三つの宝具のうちの一つです」

そんな俺の事などお構い無しに女性は淡々と言葉を続けていく。
俺はその間何をする、出来るわけでもなく、ただ茫洋と、声に導かれるままに彼女を見遣り、今まではっきりと見る事が出来なかった彼女の姿を観察する。
暗闇の中、尚深い漆黒をしたボディスーツは胸と腰を隠すだけで、身体のラインがぴったりと浮き出ている。
妖艶な印象さえ与える際どい衣裳に強調された、滑らかな曲線を描く胸や、腰。
それに、黒衣と正反対の白磁の白の肌の対比はとても強烈で、鮮烈で。
そんな全てが俺には刺激的過ぎて、はっきり言って目のやり場に困ってしまう。

……けど、そんな事よりも。

俺より約十ほど年上なその女性は、無表情に加え、奇妙な眼帯をつけてなお、
その————夢か幻か見間違うほどの、とんでもない美人だった。

月光に照らされた美しい紫の長髪は、絹を梳いたように滑らかで、指の間をする抜ける砂金のようにきめ細かく。
冷淡な印象を与える流麗な顔は気品があり、されど同時に、濃密な血の匂いも感じさせて、
このままずっとこうしていたい、彼女を俺の思うがままに、いや、俺を彼女の思うがままにして欲しいという甘美な誘惑に吸い込まれてしまいそうだった。

————そんな、危うい俺の精神を食虫華の蜜底から救い出したのは、

「効果は魔眼殺し。————今の石化は、その封印を解き魔眼キュべレイを発動した結果です、マスター」
「————っ!?」

————魔眼キュべレイという、とんでもない言葉を発した、食虫華の主だった。

俺は、

1「ま、魔眼キュべレイって……、じゃあ、あんたはもしかして————」驚愕に慄きながらも何とかそれだけを問うた。
2「————何者だ、おまえ」半歩後ろに下がって、警戒しながら低い声で尋ねた。
3「あんたが俺のハマーンさまなのですね!」現実逃避して、黒衣を突き上げる豊かな胸に顔から飛び込んだ。

投票結果

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2006年09月03日 19:31