314 名前: Fate/testarossa ◆JtheEeHibM [sage 二日目・言峰教会 - 決意] 投稿日: 2007/09/18(火) 10:07:46


 「―――マスターとして戦う。
  十年前の火事の原因が聖杯戦争だっていうんなら、俺は、あんな出来事を二度も起こさせるわけにはいかない」

  マスターとか聖杯戦争とか言われても、実感なんて湧かない。
  だが目の前に、理不尽な不幸に晒されそうになっている人がいる。
  切嗣の後を追うと、正義の味方になると決めたのだ。
  ここで逃げるわけには行かない。

 「よろしい。それでは君をセイバーのマスターと認めよう」

  俺の言葉が気に入ったのか、神父は満足そうに笑みを浮かべる。
  ……小さく息を吐く。
  男が一度、戦うと口にしたのだ。
  あとはそれに恥じぬよう、しっかりとやり通さなければ。

 「この瞬間に今回の聖杯戦争は受理された。
  これよりマスターが最後の一人になるまで、この街における魔術戦を許可する。
  各々が自身の誇りに従い、存分に競い合え」

  神父の言葉は重々しく、しかしその宣言には意味などないだろう。
  聞き届けたのは俺と遠坂と、あとはマスターではない氷室だけだ。

 「……もういいよな。さっさと出よう」

  俺の話も氷室の話も終わった。
  遠坂だって用事が無ければ来ないと言っていた。
  これ以上、この神父の言葉に付き合う必要は無いはずだ。

 「なんだ、もう帰るのかね衛宮士郎」

 「ああ。アンタと話すことなんて無い」

  言峰の言葉を撥ね退ける。
  これ以上聞いてたら内臓がせり上がってきそうだ。

 「残念だ。また日を改めて来るといい。
  マスターとしてでなければ歓迎しよう」

  それを聞き、遠坂が目を丸くする。

 「………驚いた。失格した時以外でここを頼ったら減点でしょ。
  一体どんなえこひいきよ」

 「教会と魔術協会の取り決めに、どちらにもつかぬモグリが縛られる必要はないだろう。
  それに彼には個人的に礼をしたくてな。
  食事の一つでもおごってやろうと思っていただけだ」

  その言葉に、ついに遠坂は凍りついてしまった。
  昨日会ったばかりの俺でも耳を疑ったほどだ。
  どれ程かは知らないが、俺よりは長い付き合いであろう遠坂の驚愕は、察して余りある。

 「――――衛宮」

  言いにくそうに、氷室が後ろから耳打ちする。

 「人助けもいいが、せめて相手を選んだ方が良いと思うぞ」

  ………どう返事をすればいいのだろう。
  忠告を素直に受け入れるべきか、正義の味方として差別はしないと反論すべきか。
  判断に迷うところだ。

 「――――まあいいわ。
  あなたたちの馴れ初めなんて聞いても仕方ないし、気にしないことにする」

  固まっていた遠坂が再起動する。
  どうやら触れないことにしたらしい。
  ……それはいいんだが、その誤用はわざとだろうか。

  遠坂は続けて二三、言峰に質問していた。
  他のマスターの情報について確認していたが、芳しくなかったらしく、早々に切り上げたようだ。
  挨拶もそこそこに帰りだしたので、こちらも外に向けて歩き出す。

 「最後に一つ言っておこう」

  凛にはいらぬ忠告だろうが、と前置きして、神父が声をかける。

 「帰り道には気をつけたまえ。
  これより君達の世界は一変する。
  聖杯戦争という、殺し、殺される側の世界に関わるのだからな」

  神父の言葉を背に、礼拝堂を後にした。

315 名前: Fate/testarossa ◆JtheEeHibM [sage 二日目・言峰教会 - 選択肢] 投稿日: 2007/09/18(火) 10:08:47


  外に出た途端、肩が軽くなった気がした。
  神父の重圧から逃れられた、というのもあるんだろうけど。
  外に待っているフェイトを見て、いくらか気分が楽になった気がした。

 「士郎、大丈夫? なんだか顔色が良くないみたいだけど……」

 「いや、大丈夫。少し当てられただけだ」

  教会での話の途中から気分が悪いのを押し殺していたとはいえ、出てきてすぐに心配されるなんて情けない。
  今は吐き気もほとんど薄れているし、なにより話すべきことがある。

 「それより、言っておかないと。
  ――――フェイト。俺に勤まるかわからないけど、マスターとして戦うって決めた。
  半人前な男で悪いんだけど、俺がマスターってことに納得してくれるか?」

 「納得だなんてそんな。
  士郎は初めから私のマスターなんだし、そんな気を使わなくてもいいよ」

  それに、と彼女は続ける。

 「私を召喚してすぐで、まだ何も分かっていなかったとき。
  それでもあなたは、鐘を守るために戦うって決めたでしょ?
  どんな時でもちゃんとするべきことを見失わずに、それを選ぶ事が出来る。
  そんな人となら、お互い信頼しあえると思うから」

 「そっ……そうか、うん。そう言ってくれるなら、その、助かる」

  さっきまで血の気が引いていた顔が、今は自分でも分かるほどに紅潮している。
  正面からほめられるのは嬉しい反面照れくさくもあり、その相手がフェイトほどの女性なら尚のことで、いかん、どうにもしまりが無い。
  冷たい夜風を頬に感じつつ、軽く深呼吸。
  気を取り直してフェイトに向き合う。

 「それじゃ握手しよう。これからよろしく、フェイト」

  右手を差し出す。
  マスターとサーヴァントの関係なんて知らないし、これから何をするべきかも分からない。
  ならせめて、一番初めの挨拶ぐらいはキチンとしておきたかった。

 「―――うん。こちらこそよろしく、士郎」

  フェイトも右手を重ねてくる。
  細い指は、寒空の下で冷えきっていた。
  ……冬の星空の下、出会ったばかりの女性と握手を交わす。
  冷静に考えるとちょっと変な光景だなと、わずかに頬が緩んだ。

 「―――二人とも、話は済んだ?」

 「――――っ!」

  あわてて手を離す。
  見れば、遠坂に氷室、加えて赤い外套の騎士が立っていた。

 「とっ、遠坂か。おどかさないでくれ」

 「? 何に驚いてるのよ、貴方は」

 「……いや、いい。忘れてくれ」

 「そ。じゃあさっさと決めましょ」

  たいして気にしていないらしく、話を続ける遠坂。
  だがいきなり決めろと言われても、何が何だかわからない。

 「決めるって、何を」

 「何って、氷室さんの処遇に決まってるじゃない」

  あ、そうか。
  教会で匿ってもらうつもりでここまで連れて来たんだった。
  その教会が当てにならないというのなら、どうするのか考えないといけないのだが。



 【Safe Haven】:遠坂の考えを聞く。
 【Guided Passage】:フェイトの意見を聞く。
 【Careful Consideration】:氷室の意思を聞く。

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最終更新:2007年10月22日 18:05