335 名前: もしハサ ◆yfIvtTVRmA [sage] 投稿日: 2007/09/19(水) 02:56:38

「そしてこんなものは聖杯戦争じゃないわ。ここでマスター同士が戦う事は決して聖杯戦争なんかじゃあない、
たちの悪い悪魔に踊らされる様な物よ」

凛は慎二にというよりは自分自身に言い聞かせる。今ここで慎二の見ている目の前で宣言する事により凛は戦いを回避し、
ここからの脱出と人命救助を聖杯よりも優先する事を自分自身に課したのである。

「いい間桐君?私に協力を仰ぐのなら私に従いなさい。私達は今回の聖杯戦争はあきらめる。
というよりも今回はアサシンに聖杯を取らせない方向で動く。幸いアサシンが私達に手を出せないのは本当みたいだしね」
「ほ、本当かい?」
「ええ。もし私がアサシンなら、そしてマスターに手出しが可能だったら適当なマスターを一人だけ残してさっさと
この状況を解決するでしょうね」
「でも遠坂、あいつがこの状況を楽しんでいるとしたら?自分が手出しできるにも関わらず、
魔術師同士の戦いが見たいから手を出してないんだとしたら?」
「それはないわね。もしアサシンが魔術師同士の戦いが見たいだけならそれこそ聖杯の力で拷問ランドを建設して
そこでやればいいじゃない。もちろんアサシンはこれから私達が■し合うのを見て結果として楽しむでしょうけど、
今彼に必要なのはやはりマスター同士で潰しあう事そのものよ。だから私はそれに逆行する。もちろん間桐君もね」
「あ、ああそれでいいよ。どうせ僕が勝てるわけないし」

逃げを選んだ事、それはすなわち今までの自分の生き方を否定する事では決してない。
この様な状況で冬木の管理者だった父、そして歴代の遠坂ならばどう動くか、そう考えると自然と答えが出た。
もしもハサンの思惑通りに事が運び、彼の願いが叶えられたならばこの冬木市は間違いなく地獄と化すだろう。
それだけは防がなければならない。例え今回の聖杯戦争を無駄にしてしまってでも。

聖杯を作り上げた200年前の魔術師達の最終的な願望は凛には知りえない事だが、少なくとも悪趣味な暗殺者の
欲求を満たすためのものではない、そうであってはならない。

「ブラボー!」
拍手と共に凛と褒め称える声が部屋に響き渡る。慎二ではない、モニターからだ。

「素晴らしい、イヤホント素晴らしい演説でしたマスター。思わず私も感動してしまいました」
モニター内のハサンがハンカチを取り出し目元を押さえて感動を示している。見ているだけで腹立たしくなる光景だ。

「随分と余裕ね。それとも内容が理解できなかったのかしら?要約すると私はアンタをぶっ潰すって言ったのよ」
「うひゃー、それはコワイコワイ。もし今回のマスターが皆貴方と同じ意見を持ったりしたら確かに私もまずいです。
恐らく奇想奇館と共に私は消滅し、勝者不在で聖杯も現れずに平穏無事に終わってしまうでしょう。
――――でも残念ながら私の用意した演出に好意的なマスターもいたんですよ。三号室のハサンさーん、どうぞー!!」

336 名前: もしハサ ◆yfIvtTVRmA [sage] 投稿日: 2007/09/19(水) 02:57:54

モニターのハサンが一瞬ぶれてから消え、次の瞬間には毛皮を着込んでマイクを持ったハサン、その後ろに戦う男女が写された。
「はい、こちら三号室から中継のハサンです。さ、寒いですー!!この部屋すっごく寒いですー!!」

ハサンが画面下に引っ込み部屋が大写しになる。
首からロザリオを提げた黒衣の男とスーツ姿の長身の女の戦いの舞台は一面銀世界と化していた。
床も壁も椅子も至る所が霜で覆われ、二人の吐く息が白く輝くのがモニター越しからでも確認できる。

男の両手には拳銃が握られていた。一定の間隔で決して休むことなく射撃とリロードを繰り返す。
女は飛んでくる弾丸をある時は避け、ある時は拳で弾き飛ばし体を守っている。恐らくは強化の魔術を両手に施してあるのだろう。
そして、壁や床に当たった弾丸を中心に霜がさらに厚く形成されていく。

「なあ遠坂、あの銃で撃った場所が凍ってるみたいだけどどういう原理なんだ?」
「あれは銃なんかじゃないわ。直接見ているわけじゃないから確証は持てないけどあれは多分
魔術書かなにかを銃の形に改造したものね。言峰から聞いたことがあるわ。悪魔狩りと呼ばれる奴らの中には
人外レベルのゲテモノや組織に属さず我流の戦闘術を身に付けた者もいて、彼らの場合こういったカスタムをしないと
実力が発揮できない例もあるって」
「じ、じゃああいつは、じ、人外レベルの」
「・・・さすがにそれはないわよ。人外レベルっていうのは例えるならアサシンに閉じ込められたこの状況で
単身で内部から破壊して脱出できるぐらいの存在とかに使うべき表現ね。
ただこうして動きを見るかぎりじゃあ、彼そして防戦に徹している女性も―」
そう、どちらがより強いかは判断できないが恐らくは両者とも自分よりも上の魔術師なのだろう。
[選択肢]
イ.二人を止める為に、あるいはこの隙に士郎と合流する為に慎二と一緒に部屋を出る。
ロ.もうすこしの間モニターにかじりついてこの二人の戦いの続きを見る。

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最終更新:2007年10月22日 18:48