522 名前: Fate×ネギま ◆MnGA8SFSbU [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 12:06:12
先ほどまで騒がしかった宴は、主役が揃ったことで更にやかましい事になっていた。
そんな中を掻き分け皆に挨拶したり話していたりしていると、不意に肩を掴まれる。
「よう、衛宮」
「――――――」
いきなりの挨拶に少し固まる。
いや、知り合いに挨拶されたのだから、固まることはないのだが。
「……なんで黙ってるんだよ」
「いや、まさか慎二の方から来るとは思ってなかったから。
どうしたんだ珍しく。遠坂に無視でもされたか?」
「あははは。わざわざ僕から挨拶してやったのに言うようになったね、衛宮。
今日の主役じゃなかったら場外乱闘モノだよ」
さすが間桐慎二。この数年でますます紳士さに磨きがかかったらしい。
まあ冗談はこの辺にしておいて。
「本当に久しぶりだな」
「まあね。けどこんなもんじゃないか、高校出たらさ」
そうは言うが、こう言っては何だが、慎二は他の仲間内とは事情が違う。
慎二はいつか話していたように、本当に家を出て上京して行った。その後、間桐のこともあってか今日まで帰ってくることは一度もなかった。
「他の皆は近くに残ってたからな。たまに帰ってきたときに、顔を見るぐらいはあったけど。慎二だけはそうもいかなかっただろう?」
「別に、そんなに会う必要なんかないだろ。そういう無駄な気遣いなら桜あたりに遣っとけよ」
こうした解り難い気遣いを見ると、どれ程経っても慎二は慎二のままらしい。
「まあそんなことよりもさ。ちょっと付き合えよ、衛宮」
「付き合えって、何するんだ?」
「ああ、城を見て回ろうと思ってね。お前がいたほうが何かといいんだよ」
「色々言いたいことはあるが。とりあえず、なんで城に?」
「ああ、何か面白そうだからな。僕が楽しめそうなモノもありそうだし」
「ふーん…………で本音は」
「桜のやつがさあ、顔を見るなり色んな事言ってきてさあ、やれ人に迷惑かけてなかったかとか、やれ生活は大丈夫かだとか、いちいちうるさいんだよ。おまけに酒の所為か説教をするし、同じ事を繰り返し話すし、何でか黒くなってるし。
それを延々とだぞ! やっと逃げ出してきたんだ、僕を匿えよ衛宮!」
つまり桜から逃げるために城に隠れたいと。というか桜、そんなに慎二(の素行)が心配なのか。
「まあ理由は分かったけど。それよりも、イリヤには話したのか?」
「話すわけないだろ。桜に漏れたらどうするんだよ!」
ガクガクと足を震わす慎二。その恐れっぷりから、まるで桜が怪物かナニカのように錯覚するほどだ。
いや、確かに黒くなった桜はライダーの魔眼ばりの迫力である。
「わかったよ。慎二の気持ちも分からないでもないからな、付き合ってやるよ。
ただし、あんまり長くは駄目だぞ。いくら皆酔ってても、二人していなくなってたらそのうち気づくだろうし、そうなった場合後が怖い」
「分かってるよ。それじゃあ、ばれる前に行くぞ」
523 名前: Fate×ネギま ◆MnGA8SFSbU [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 12:07:03
少し森を迂回して城の裏手に回り、開いていた窓からなんとか侵入する。
よく考えたら、城に入った時点で住人に気づかれそうなものだが。まあ今日は無礼講ということで、少しくらいは大目に見てもらおう。
「で、入ったのはいいけど、どうするんだ」
「こんな城なんだから骨董品みたいなのがあるだろ。それでも見て回ろうぜ」
「慎二がそれでいいって言うならいいけど。
ただ、部屋に入らないほうがいい。怒られるだろうし、たぶん罠が仕掛けてある部屋がある」
そういうわけで、廊下に並ぶ高そうなアンティークを眺めながら歩く。
歩きながら、慎二とこの街を出て行ってからの事を話した。慎二のほうは、相変わらずと言うべきか、愚痴が多く口が悪い。しかし顔を見ると、そんな生活も満更ではないことが分かる。それが自分には少し嬉しかった。
そうして城を散歩すること数十分。三階までやってきたところで俺達は立ち止まる。
「なあ慎二。そろそろ戻ったほうが良くないか?」
「もう戻るのか? まあ結構見て回ったからね。戻ってもいいか。
……いや、ちょっと待ってろ衛宮」
何か見つけたのか、そう言ってまた廊下を歩き出す。
「何かあったのか?」
「ああ、これは…宝石か? お前も来てみろよ」
そう言われ、自分も近づこうとした瞬間
「な!」
突如慎二の周りが歪みだした。
「慎二!」
「おい! なんだよこれは!」
慎二を助けようと手を伸ばす。が、その歪みは距離さえ歪ませるのか、直ぐそこにいる慎二に触れることすら出来ない。
そうしているうちに、歪みが光へと変わっていく。
「まさか!?」
その光を見た瞬間、この異常が何なのか理解した。そして同時に、これから起こることも予想がついた。
だが、この光景を前にして、衛宮士郎が逃げるなど出来る筈もなかった。
一度だけ目を閉じ覚悟を決めると、俺は光の中に飛び込んだ。
気絶していたのか。気がついた俺は周りを見渡す。
視界がいまいちだが、この状況は自分の予想と若干、いや、かなり違ったものだと理解する。
ともかくそんなことよりも、まず慎二がどうなったかである。
「慎二! 大丈夫か!」
「うるさいね。そんな声で言わなくても聞こえてるよ」
後ろを見ると、慎二も気絶していたのか、座ったまま体を起こしていた。
「とりあえずここ何処だよ。城の中じゃないみたいだけど」
「ええっとそうだな。簡単に言うと」
ね:「でかい木の下だな」
ぎ:「林の中か?」
マ:「あっちのほうに街があるな」
!:「なんか住居かな? があるところ、街の中だと思うけど」
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最終更新:2007年10月22日 18:53