616 名前: ゼロの慎二 ◆mkWK7X3DHc [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:02:17
逃:ここは戦略的撤退! べ、別に敵前逃亡じゃないんだからねっ
この僕が大人しく従うとでも? 甘いね。とろけるように甘いよ、ちびすけ。自分より下の奴に従えと言われればNoと言えるのがこの間桐慎二様だ。怖い人に言われたら土下座だって躊躇いはしないがな。
こんなちんまい奴に偉そうにされて、黙って従う道理は全くない。
「――――嫌だねっ」
一瞬だけ近づく素振りを見せて、油断を誘うのも忘れない。相手が油断した所で一気に逆へと走る。
何故逃げるかって? そんな事に意味は無い。偉そうな奴にはとりあえず逆らいたくなるのが人ってものさ。
「――なっ!? ちょと待ちなさいよーーーーー!」
古今東西、待てと言われて待つ奴は居ないのだ。御多分に漏れず、僕も待つつもりは無い。
――――ふっ、勝った。
勝利を確信した次の瞬間、僕は地面に平伏していた。
「……エアハンマー。逃げちゃ駄目、逃げちゃ駄目、逃げちゃ駄目。使い魔は一生の問題」
どうやらこれは、このガキの仕業らしい。この僕に地面を這い蹲らせるなどゆるせる事ではない。直ぐに立ち上がり、怒りに任せ胸倉を掴む。
「――今のはお前…………貴方様が――したの……でしょうか?」
烈火の如き怒りは、ちびすけ二号の後ろに降り立った竜により、あっという間に劣化した。だって恐いじゃないか。竜だよ、竜! 幻想種のなかでも最上級の化け物。ライダーが駆るペガサスなんて問題にもならない、正真正銘の出鱈目だ。
それを前にして漏らさなかった僕は、賞賛にあたりするねっ。小さい方はちびったけど……
僕の質問にこくりと頷き拝呈するちびすけ二号から、一秒でも早く離れるように、一号の元へ駆け寄る。
よく見ると、周囲には生態系に含まれ得ない生物が何匹も居るじゃないか。召喚しておいて、こんな世界に僕を放り出そうとするなんて、一号は酷い奴だ。
「ほらっ、着てやったぞちびすけ一号」
「ちょ、ちびすけ一号ってなによっ! 大体なんでそんなに偉そうなの、平民のくせにっ」
一号はムキーっと興奮し、今にも噛みついてきそうだ。そんな一号の疑問に答えてやろうじゃないか。
617 名前: ゼロの慎二 ◆mkWK7X3DHc [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:04:25
「――一号、お前は間違っている。偉そうにしているんじゃない、偉いんだよ。なんたって間桐慎二様だからなっ!」
「うっさい! 訳わかんない事ばっかり言ってないで、さっさと頭下げなさいよ馬鹿!」
ごすっとすねを襲う衝撃に、思わず身を屈めてしまった。
そして一号は、低くなった僕の頭――というか、髪をむんずと掴む。そしてキスをしてきやがった。
いくら僕が絶世の美少年だからってコレはやりすぎではないか? そんな疑問すら浮かぶ余地なく、手の甲に焼けるような痛みが迸る。
「い――イギっ……がっ」
痛みのせいでちょっとだけ涙が浮かんでしまった。ホントにちょっとだからなっ!
「痛い――イタいイタイいたい痛いっ!」
「ほら馬鹿。あんた大げさ過ぎるのよ。ルーンはもう浮き上がってるでしょ」
そう言って僕の尻を蹴り上げた。そう言われれば痛くないな……
「これでミス・ヴァリエールの契約は終わりですね。それでは教室へ戻りましょう」
その声に従うように、皆が飛び上がった。それは決して跳躍などでは再現しえぬ現象。重量遮断? いや斥力を発生させているのだろうか……。それより、この場にいた全員が魔術師だったことに驚嘆する。
「おいゼロ。お前も早くフライかレビテーション使えよ。遅刻しちまうぜ」
ニヤニヤと笑っているデブは、先程一号に風邪っぴきと呼ばれていた奴だ。
「うっさいわね! さっさとあっち行きなさいよっ」
「お~恐い恐い」
一号の顔を見ると、その言葉に浮かぶのは怒り――ではなく悔しさ、そして寂しさだった。
為す術もなく風邪っぴきを見送った一号は歩き出した。僕はその行動への疑問をぶつけた。
「おい、なんで飛ばないんだ?」
しかし答えは拳で帰ってきた。ピンポイントで鳩尾に。
「あんたは黙って付いてくればいいのよっ」
――――そろそろキレてもいいよね、神様?
耐:僕はフェミニスト、僕はフェミニスト……仮にも女の子に暴力はいかんよ。
暴:こんなガキは女とみなさない。よって一発くらい殴っても問題なしっ!
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最終更新:2007年10月22日 19:06