680 名前: ゼロの慎二 ◆mkWK7X3DHc [sage] 投稿日: 2007/10/05(金) 01:31:54

怒:それでもこれは許せない。この慎二容赦はせんっ!

 もう駄目。泣いて謝ったって許してあげない。この僕に対するこの扱い、悪ふざけにしては度が過ぎている。
「いいかげんにしろっ! 勝手に人を呼び出しておいて、何なんだよおまえっ……! なんで僕がお前なんかに従わなくちゃいけないんだっ」
「あまり前でしょ。あんたは私の使い魔なんだから。あんたには拒否権どころか人権すら存在しないのよ。理解できる?」
「はっ! 僕がお前みたいな奴の使い魔? 冗談じゃないねっ。大した魔力も無いくせに、人間を使い魔にする? キツい冗談だ。全く笑えないねっ」
 僕には魔術の才能は無い。だけど魔力の有無かは微かにだが分かる。大体人間を使い魔に出きるような魔術師ならば素人にだって異常だと判るのだ。なのに目の前の餓鬼からはそれが無い。どう足掻いても到底無理なのだ。そんな奴が自分を使い魔にする? 馬鹿げてるね。
「冗談ではないわ。あなたの手の甲に出ているルーンが証拠よ。それは貴方が私の僕という証。それは貴方が死ぬまで消えない鎖なの。私の使い魔が嫌なら死ねば? そうすれば解放されるわよ。そして私もまともな使い魔を再度召喚出来る。良いこと尽くめじゃない。そうしなさいよ」
 駄目だ。こいつだけは許せない。勝手に呼び出して、次は死ねだ? 死ぬべきは僕じゃないだろ……
「――――もう一つ選択肢はあるんじゃないか? 例えば君が死ぬとかさ」
 もう止めない、止まらない。こんな馬鹿はいっぺん死ぬべきだ!
「そうね、それもあるわ。やれるもんならやってみなさい、平民風情が。あんたに殺られる程度なら生きていても仕方ないわ」
「――――吼えたね。覚悟はできたか? 懺悔は済ませたか? 別れを告げるものは居ないかい? ま、そんな隙を与えるつもり無いけどねっ!」

681 名前: ゼロの慎二 ◆mkWK7X3DHc [sage] 投稿日: 2007/10/05(金) 01:34:14

 場の空気は一触即発。物音一つで、今にも殺し合いが始まりそうだ。ピリピリとした空気が心地よい。
 既に手にはナイフが握られている。テーブルに乗っていた物をひっ掴んだのだ。
 本来食事に使われる物だが、十分に殺傷能力はある。今の僕なら出来る。そんな確信さえあった。
 何故だろうか? ナイフを手にした時から高揚感が消えない。血がたぎり、筋肉が喜びに打ち震える。今なら英霊だって相手に出来るんじゃないか、そんな妄想すら浮かんでしまう。
 神経が研ぎ澄まされていく。目の前の少女の呼吸が読み取れる。指の先から足の先の動きまで完全に把握できている。動いた瞬間に、彼女の首は真っ赤な噴水へと変わるだろう。
「さぁ、どうした。かかってこいよ。それとも怖いのか、平民風情がさ?」
「地面に頭を擦りつけて謝れば許してあげようと思ったけど、その気は無いみたいね。その中身が空っぽの頭、吹き飛ばしてあげるわ」
 ――――魔術か。問題は無い。発動したソレを避けて、ナイフを首に突き立てる。それで終わりだ。いつ発動かも判らないのだ。突っ込んだ瞬間に魔術を撃たれれば危ない。そんな危険を犯す必要は無い。
「さぁ、私に逆らった愚行。悔い改めなさい!」
 その声に合わせるように魔力が集まりだした。――――僕の持つナイフにっ!
 ヤバい!そう思った時にはもう遅かった。投げ捨たナイフは、手から離れて直ぐに爆裂した。それに生身の僕が耐えられる訳もない。
 爆風で吹き飛ばされた僕は、後頭部を壁に叩きつけてしまい意識を手放した。
続:意識が飛んだのは一瞬だけ。僕らの戦いはまだまだ終わらないっ。
終:目が覚めたのは既に夜。見上げた空には二つの月が浮かんでいた。

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最終更新:2007年10月22日 19:21