410 名前: ??? ◆6/PgkFs4qM [sage] 投稿日: 2007/09/21(金) 12:20:19

キンコーンカーンコーン……

「ふあぁ~あっ、と、終わった終わった。一成、帰ろうぜ」

 窮屈な授業と、最後を締めくくるHRが終わり、ようやく学校から解放される。クラスメートの中でも特に小柄な体格をした、俺、衛宮士郎は大きく伸びをした。こった体から鳴るぽきぽきという音が、妙に心地がよい。
 本日はバイトの予定もない。久々に柳洞寺にお邪魔しちゃおうかな。

「なぁ、今日お前んち行ってもいい? 久しぶりに遊ぼう」
「すまない、衛宮。これから生徒会の会議があってな、どうしても外せられないのだ…。悪いが今日は先に帰っててくれないか?」
「ん、そか。了解」

 仕方ないか。慎二の奴を誘おうかと思ったけれど、どうせアイツまた女遊びとかそんなんだろ。今日は備品を修理って気分じゃないし、早く帰って、料理のレパートリーでも増やすかな。
 とぼとぼ階段を降りていると、途中で蒔寺、氷室、三枝さんの3人娘とすれ違った。いつも通りに茶々を入れられたが(主に蒔寺に)、毎日毎日元気なやっちゃ。そんな風景も、ま、見慣れた日常である訳だが。
 と、校門を抜けた時、これもまた見慣れた赤い背中が目に入った。……何てこった、よりによって赤いあくまと鉢合わせちまうとは……。

「あら衛宮くん、ごきげんよう―――ってやけに嫌そうな顔ね…。何? 文句でもあんの?」
「いや、別に。遠坂、これから帰るんだろ? 途中まで一緒に帰ろうぜ」
「ん、いいわよ。私も1人で帰るとこだったし」

 まぁ、遠坂の住む異人館とは方向が逆なんだけどさ。スルーすると後が怖いし…。多少いびられる位は何てことないサ!
 案の定、蒔寺とはまた違ったいびりをちょこちょこ受けたが、最近はこれもまた彼女の魅力の1つなんだと考えている。遠坂は世に言う『つんでれ』だから、『でれ』が出るまでの間、耐えるのが紳士のマナーなんだって藤ねえが言ってた。何だそりゃ。
 こちらもみんなの近況も混ぜて適当に返す。そして我が家のエンゲル係数の話を持ち出した時、彼女は大笑いしていた。こっちは全然笑えん。たかが食費、されど食費。実はウチの家計、本当に切羽詰まってるんだよ、遠坂……。

「あ、そうだ衛宮くん。唐突だけどさ、アーサー王物語って知ってるわよね?」
「……あ?」

 本当に唐突だな。アーサー王物語……。
 ……俺にとっても馴染みの深い少女が、選定の剣を抜いて王となり数々の伝説を残すも、最後は仲間の裏切りによって、全てが崩れ去ってしまう、だったな。
 ただの勇猛を讃える話ではなく、彼女の栄光と衰退がこの話には含まれている。その悲劇性により、この話が世に出てから数世紀たつも、未だに全世界からの支持を得ている。――――英雄の典型。これほど英雄らしい英雄は珍しい。

「そりゃお前、知ってるも何も、そのアーサー王が俺んちのエンゲル係数を上げまくってるんだぜ? 今更だろ」
「私ね、あんまりその手の話は深く読まないんだけど……いや~、昨日読んでみたらとっても面白かった! セイバーったら本当に凄い人物だったんだなぁ、って改めて痛感したわ。それだけに気苦労も多かったんでしょうね………」

 遠坂が珍しく目をキラキラさせて語っている。…………相当アーサー王物語が気に入ったようだ。
 ―――本来、アーサー王は男として伝えられている。だが、実質彼女は女だ。性を隠しながら、あの荒波を乗り切っていたんだ……。確かに、相当なストレスだったに違いない。加えて、最後は身内によって討たれている。

「そうだな。………へへ、家に帰ったら、肩でも揉んで、美味しい茶菓子でも出してやるか」
「ちゃんと大事にしてあげなさいよね。彼女にとってはようやく手に入れた平穏なんだから……」

 セイバーのあの振る舞いを見ると、ついつい普通の女の子という印象を得てしまいがちだが、彼女はれっきとした英雄なんだよなぁ…。

 ―――そうこうしている内に、彼女の家との分岐点まで着いてしまった。いつもよりたどり着く時間が早く感じたのが不思議だったが。
 別れを告げようと遠坂を見れば………何故か彼女はあさっての方向を見つめていた。何だろうと彼女の視線の先に首を向けると……。



Ⅰ:桜がいた
Ⅱ:いつもの3人娘がいた
Ⅲ:カレンがいた
Ⅳ:言峰がいた
Ⅴ:わかめがいた

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最終更新:2007年10月22日 19:47