925 名前: Fateサスペンス劇場 ◆7hlrIIlK1U [sage] 投稿日: 2006/08/17(木) 20:13:40
何故だろう。午前中に始めたはずなのに、気が付けば既に夕方に近い。隣では全裸の桜がクークー寝ていて、その寝顔は実に可愛いのだが―――。
―――未だにヘッドドレスだけはしっかりつけてるのは何故なのか。
自分の趣向に悲しくなった。
「さて、とっ!」
一念発起。酷使を続けてだるい身体を無理にでも起き上がらせる。夕暮れまでまだ少しあるこの時間。夕食の仕度に丁度いい。はっちゃけすぎて泣かせてしまったみんなへのお詫びもかねて、昨日の桜へのリベンジもかねて、今夜はちょっとしたご馳走だっ!
と、思ったのだが。
「あ、シェロ、じゃなかった、衛宮さんですね。そうですよね?」
キッチンの床下から割烹着のお嬢さんがにっこり笑って登場するというこの展開。―――よく、わからない。じゃなかった。なんでさ?
「そうだけど。えっと、どちらさま?」
「あ、申し遅れました。わたくし琥珀と申します。よろしくお願いしますね」
「あ、ご丁寧に。衛宮士郎です。こちらこそ宜しく」
ついつい相手にあせてペコリとおじぎしまう日本人体質。今はイギリスっで暮らしていても、人間の本質って変わらないなーって思ってみたりみなかったり。というかこの人、どっかで会った事なかったっけ?
「いきなりですが衛宮さん。昨日持ち去ったわたしの宝物、返していただけません?」
ギラーンと、妖しく目を輝かせる琥珀さん。滅茶苦茶に怖い。なんつうかその、とってもバッドエンドの予感ですよ? ってメイド服? 持ち去った?
「あ、ご心配には及びません。一言返すっておっしゃっていただければ、後はわたしが責任を持って回収しますから。そうそう、今ならお礼も差し上げますよー」
返してくれなければお注射をお礼にするだけですが、なんて、この人なんだか知らないけど怖すぎる。
「え、ええ。返しますよ。よく分からないけど持っていって下さい」
「ありがとうございます! そうですよね。話せばちゃんと分かって下さりますよね! 衛宮さんですものねー! それをあのネコ、あちきがオドして取りかえしてやるにゃ、なんて、結局役に立ってないじゃないですか!」
よく分からない琥珀さんは、よく分からないナマモノに憤慨しつつ喜んでおられた。本当に、よく、ワカラナイ。ってこの言葉便利だな。俺まで口癖になりそうだ。
「それでは失礼しましたー! これ、約束のお礼です。またいつか、次元の狭間とか暗くて広い箱の中とか、そういう場所でお会いしましょう!」
ちゃおーと、床の穴の中に消え去る琥珀さん。いやまったく、最後までよく分からない人だった。今穴の空いた場所を調べてみても、頑丈な床板があるだけで扉なんて全くない。床板をぶち抜けば、秘密の抜け穴でもあるのだろうか。
「いやー! 汁が。あれやこれやの汁と汁と汁がー!」
あ、床下から悲鳴が聞こえたかも。
それはそうと、彼女に貰ったお土産って―――?
一、なんと「家庭菜園の草」をてにいれた!
二、なんと「秘酒・真祖殺し」をてにいれた!
三、なんと「注射器とカラフルな薬」をてにいれた!
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最終更新:2006年09月04日 16:57