958 名前: Fateサスペンス劇場 ◆7hlrIIlK1U [sage] 投稿日: 2006/08/17(木) 22:48:48
二、なんと「秘酒・真祖殺し」をてにいれた!
これは……、凄い酒を手に入れてしまった。ちょっと味見してみたけど、凄く旨い。瑞々しい辛口。口に入れるとふわっと広がる、米そのものの豊潤な旨味。料理酒にしとうとしたけど勿体ない。いっそ今夜は宴会にしてしまおうか。
「料理してるの? シロウ」
「イリヤか。おはよう。ああ、夕飯の下ごしらえをちょっとな」
「そうなんだ。楽しみっ! お兄ちゃんの料理食べるの、とっても久しぶりだものっ」
「確かに。言われてみればそうだよな」
お兄ちゃん、か……。無邪気で元気な妹のようなイリヤ。思慮深く時に冷酷な姉のようなイリヤ。そんなイリヤをさっきまで抱いていたんだって事が、否応でも頭の中に張り付いている。今はもうメイド服を着てないけど、首筋に覗く赤いうっ血は、まぎれもなく俺自身のつけたものだから。
「喉乾いちゃったんだ。お水ちょうだい」
「あ、ああ……。ほら、どうぞ」
こくこくとコップの水を嚥下していくイリヤ。その姿がやけに色っぽく見えてしまって、慌てて頭を振って打ち消した。
「なあ、イリヤ」
「ん? どうしたのお兄ちゃん」
「今だけ……、姉さんって、呼んでもいいかな」
その台詞が、どんな意味を持っていたのか。俺とイリヤの時は止まり、音は消え、背景は消滅した。ただ、二人だけがいる世界。少女の赤い瞳は揺れて、銀の髪はそよぎ、唇が震える。細い指の間から、硝子のコップがゆっくりと落ちて、床にあたって、割れた。
「あ……。われ、ちゃったね……」
「片付けなきゃな……」
黙々とコップを片付ける中、気まずい雰囲気が流れている。イリヤは俺の言葉を何度も反芻しているようで、その解釈に間違いがないか、延々と確認してるようだった。
「冗談じゃ、ないんだよね」
「ああ。冗談じゃない」
「……いいよ」
「いいのか?」
「ええ、いいわよ。でも、突然、なんで?」
「なんでって……」
なんで、と言われてもな。久しぶりに会った事とか、愛し合った事とか、遠坂と桜の事とか色々要因はあるんだろうが、あえて一つ答を出すとするならば、それは。
「イリヤに甘えたかったから、かな?」
「……もうっ、なによそれ。さっきまで散々えてたじゃない」
赤くなった頬をごまかすように、ムックリむくれてみせるイリヤ。なんて可愛い姉なんだろう。まるっきり幼い外見なのに、それだけじゃないのがイリヤらしい。
「それじゃ、久しぶりの夕飯は期待していただきましょうか。姉さん」
「うん……」
「もう終わった?」
「ああ、下ごしらえだからな」
「じゃあさっ! じゃあ散歩いこうよ! 二人だけで!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて催促するイリヤ。どう見ても妹にしか見えないけど、まあ一応、俺の姉さんらしい人。藤ねえも似たようなとこあるから慣れてるけどさ。
「そうだな。まだ夕方だし、行こうか」
どこまで散歩に出かけようか?
一、そうだな。浜辺に夕焼けを見に行こう。
二、海だよ海。赤く染まった海で泳ぐんだ。
三、こんなサンゴ礁の島に温泉がわいてるですとーーー!?
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最終更新:2006年09月04日 16:59