889 名前: ファイナル ファンタズム ◆6/PgkFs4qM [sage] 投稿日: 2007/10/12(金) 23:06:39

「…………そういや令呪ってどうなったんだ?」

 実を言えばこの世界に来てからというもの、環境の変化に順応するのに忙しく、まともに手の甲を見ることなどなかったのだ。
 ―――思えば迂闊すぎた。
 令呪……。俺の大切な人である彼女との繋がりを示す大事なモノだというのに……。
 慌てて手に目を向ける。まさかとは思うが、俺がここにきてしまったせいで契約が解除されたということはないだろうか。もしそうなってしまえば、彼女が世界に現界するのは不可能となる。
 いや、それ以前に俺の場合は魔力供給そのものができてないんだけど、それでも遠坂曰く、サーヴァントとマスターとの契約が切れるということは、即ち聖杯からバックアップとして送られているエネルギーも断ち切られるらしく、やはりサーヴァントはこの世に現界することは無理となるらしい。
 ――――御託はいい。一刻も早く令呪の有無を確認したい。
 掌を天にかざし、甲を見る。令呪は………………ある。以前と変わらず3画のタトゥーの形を維持している。だが、これは―――?

「色が……黒くなってる?」

 令呪の本来あるべき朱色は褪せ、鉄が酸化したかのような黒色へと変色していた。
 嫌な予感に全身が支配される。その直感が間違いだと証明すべく、令呪に魔力を込める。だが……。

「…………駄目だ。何も機能しない」

 サーヴァントを完全に支配するべく、また、より密接にするべく考案された令呪システムは――――見た目どおりにただのタトゥーへと降格していた。
 なら、彼女は―――? 彼女はどうなったんだ?

「いや、だが万が一でも……それなら遠坂が…………って、あっ……」

 すっかり忘れていた。カレンだけじゃない。今頼りにしようとした遠坂もココに飛ばされたかもしれないってことを。
 あの時―――俺とカレンが光に巻き込まれたとき、遠坂はどこにいた? もしや……彼女もその光に吸い込まれていなかったか?

「マズイ……俺、ここでのんびりしてる場合じゃなかったかもしれない。カレンと、それからここにきているかもしれない遠坂を探しに行かなきゃならなかったんだ」

 全く以って拙かった。遅すぎる。そんなことにすら考えが及ばなかったとは。
 ……思えば莫耶との出会いで少々浮かれていたのかもしれない。その間にもし彼女らが危機に瀕していたとすれば、完璧に俺のせいだ……。
 後悔に次いで罪悪感が俺の脳髄めがけ襲ってくる。嫌な汗が噴出してくる。俺は……迂闊すぎた。
 ―――令呪だったものを見つめる。
 恐らく俺と彼女との契約はまだ切れていない筈だ。タトゥーが消えてないのが何よりの証拠。ただ圏外にある携帯電話の如く、魔力が届いていないだけだ。ならば彼女の消滅という、考えられる限り最悪な危機はない……と信じたい。デメリットといえば、こちらから令呪の施行が不可能になっただけ。
 これからのことを思う。これから俺が成すべきこと……そして莫耶とのこと……決して時間があり過ぎるということはない。一刻も早く動かなければ……。



Ⅰ:こちらにきていた遠坂凛
Ⅱ:間一髪で回避していた遠坂凛

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最終更新:2007年10月22日 20:47