913 名前: ファイナル ファンタズム ◆6/PgkFs4qM [sage] 投稿日: 2007/10/14(日) 00:11:25

とりあえず考えられることはカレンとの合流、そして遠坂の存在の確認、そして身寄りの無い莫耶の今後のこと。
正直、前者の2件に関してはそう悠長にしていられる時間がない。俺自身体験した獣人どもの恐怖。以前俺が味わったカメの脅威を考えれば、彼女らも確実にその危険に瀕している筈なのだから。
だがまず何をすればいい? ……歯噛みする。彼女らを探しにいこうにもこの世界はどこまでも未知であり、そして広すぎた。とても俺1人の力でどうこうなるものじゃない。

「シロウさん」
「うーーーん……」
「シロウさ~ん」
「うーーーーーーん……」

俺のことを調べてもらっているシドには悪いが、こうなれば俺が街を出てカレンらを探しに行くほかあるまい。とにかく時間がないのだ。だがどうする? 俺はサーヴァントほど強くないし、できることといえば出来損ないのモノを再現するだけだ。加えてそこらの獣人にも苦戦するザマ。いや、しかし……。

「―――シロウさんっ!」
「うおっ、とぉ。……なんだコーネリアさんか。声くらいかけてくれ」

慌てて後ろを振り返れば、桃色の衣装に身を包んだ、俺がこの世界で一番初めに出会った彼女がいた。何故だか頬を膨らませてぷりぷり怒っている。

「かけましたよ何度も。どうしたの? そんな深く考え込んじゃって」

思わずハッとする。見れば辺りは既に暗闇に包まれていた。それほどまでに意識を集中していたとは。―――まいったな、また莫耶に怒られちまう……。

「いや、ちょっとね。コーネリアさんこそどうしたのさ。もう遅い時間だろうに」
「私は……ちょっと鉱山区まで。……シロウさん、もしかして悩んでたりします? あの、とても深刻そうだったから。良ければ相談に乗りますよ?」
「む……」

確かに悩んではいるがこればかりは俺の問題だ。他の人に譲る訳にはいかない。……しかしカレンらに関しては俺だけの問題という訳では決してないが、それでも目の前の女性に話す気にはなれなかった。

「…………」
「あ、いえ、話したくないのなら構わないんです。別に無理に聞こうだなんて思いませんから」

―――いかん、どうやら俺が沈黙しているのを自身の発言に対して不愉快に思われているのだと受け取ったようだ。せっかく心配してくれたというのに今はおろおろと困りきっている。
もちろん不愉快に感じてなど誓ってない。そろそろいい加減にこの頑固頭をなんとかしなくてはいけない。我ながら融通が利かなさすぎて困る。

「いや、ありがとう。心配してくれて嬉しく思う。でもどうしても話す気にはなれないんだ。もう少し時間が経てば話せると思うけど……ごめんな、それまで待っていてほしい」
「いえ、お気にせず。気長にその時を待っています」
「ごめんな……」

申し訳なさで胸が苦しい。それでもどうしてもこれは俺自身で解決したい問題なのだ。他の人の手を煩わせたくないという思いもあるが、それ以外にも、元いた世界の人間とこちらの世界の人間とできっぱり線引きしている自分がいたりする。……自己嫌悪で一杯だ。

「あ、そうだ。シロウさん」
「ん?」

何だろう? おずおずと、先程とはまた違った申し訳なさで彼女が話しを切り出した。

「あの、もしよろしければ貴方も鉱山区でガルカ達と――――」

――――ドォン!!!

「うわっ!?」

それは唐突すぎた。
穏やかな会話を中断せしめるには十分すぎるほどの異常。バストゥークを包む破壊音。まるで大砲か何かを直撃させたかのような悪意を込めた衝撃。
第六感が告げている。タイル張りの床を震わせるこの威力……今夜、魔術にも引けをとらないとてつもない怪異が起こっているのだと!

「コーネリアさんは早くどこかに避難していてくれ! 絶対に音源に近づいちゃ駄目だ!」
「あっ、ちょっとシロウさん!?」

日常の衛宮士郎から異常に適応した衛宮士郎へとスイッチを切り替える。
音の大きさからして音源は街の入り口付近。恐らくここなら安全な筈だ。彼女に危険はあるまい。なら俺が気にすべきことは2つ。音源の正体、そして……莫耶の安全!

「畜生……莫耶、無事でいてくれ!」



Ⅰ:天を覆う真龍の王
Ⅱ:地を這う無数の悪魔
Ⅲ:メーガス3姉妹

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最終更新:2007年10月22日 21:02