14 名前: 僕はね、名無しさんなんだ [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 23:27:33

還:僕はなんとしても元の世界に帰らなくちゃいけない

 はぁ……帰りたいのにかえれない~♪なんてCMソング有ったけど、まさか本当にそんな目に遭うとはなぁ。僕はビジネスマンじゃないってぇの。リゲイン持ってこい馬鹿やろう……出てくるなよ、涙さんっ!
 くそぅ。夕飯抜きにされたせいで、お腹と背中が熱い包容しちゃってるじゃないか。そりゃ気分もネガティブになるってものだ。まったく、軽いジョークも笑って流せないだなんて心の狭い奴だよね。
 大体、山田太郎なんてベタ過ぎる名前の奴が本当にいるわけないだろ? いや、居るかもしれないけど、そんな奴は言葉とか世界って名前より少ないだろ、多分……。中に誰も居ませんよ的な? サーヴァントなんかより女の方が怖いよママン。今後少しは女性関係を考えようと思うね、アレは。
 駄目だ。腹が減りすぎて思考が訳わかんない方にバレルロール。危ないっ、地面にキッスしてる場合じゃないぜ相棒。――なんて現実逃避しても腹が膨れる筈もない。
 かといって僕が今居る部屋を抜け出しても、食べ物を入手する方法が無い。まさか現代の日本において、こんな不便を強いられるとは思いもしなかった。――――って此処は『現代』でも『日本』でもないんだっけ……
 確かハルケギニアだったかな? これがただのギニアだったなら大分マシなのだが……
 はぁ――これ何度目の溜め息だろ? 溜め息を吐く度に幸せが逃げるってのが本当なら、どれだけの幸せが逃げただろうか。
 ベットで幸せそうに眠っている一号が、とても憎たらしい。一人だけ夕飯食べやがって。僕は見てるだけだったんだぞっ! 昼は例の大立ち回り。夜は機嫌を損ねてご飯抜き。さらに言えば、此方の世界に来た日は何も食べて無かったのだ!
 つまりは、べりーはんぐりーな訳であります、隊長。ならば己が力で勝ち取るのだっ、スネーク! オーケーオーケー。やってやろうじゃないか。生憎ダンボールは無いが、この程度の任務なら股間を手で隠してたって出来るさ。
 ――――さぁ、ミッション開始だ!

15 名前: 僕はね、名無しさんなんだ [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 23:30:40

 全裸で厨房へ逝く
→厨房へ行く
 外のコンビニへ行く

 選ぶまでも無い。上はデッドエンドまっしぐら。外にコンビニなんて有りません。よって厨房へ向かう。あそこなら食べ物も有るはず。運が良ければ、まだ人が居たりして。そしてあわよくば夜食を作ってくれたりしないかなぁ……僕の幸運のスキル低そうだから無理だろうなぁ。絶対にEXだよ。説明で、この運の悪さは呪いの域である、とか書かれちゃったりさ。
 むっ、T字の廊下だね。ここは定石通り銃を構えながら――突進だっ! だって僕はサーチ・アンド・デストロイ派だからねっ! デストロイされるのは主に僕だったりする現実なんて知りません。
 のぅ! 大変なことに気付いたよ、大佐。僕は今丸腰じゃないか。こんな状態で敵に見つかったら――――なんてスネークごっこをしてるうちに厨房へ到着。
 さてここからが本番だ。ここまできて食料を入手出来なければ意味がない。Eat or Dieなんだ!

「こんな所で何をなさってるんですか?」
 不意にかけられる声。なかなかやるじゃないか。僕の後ろを取るなんて。ここは華麗にホールドアップしてやるよっ。
「あのー、何故両手を頭の後ろに組むんですか?」
 ん、こいつは敵じゃないのか? いや、油断するな。振り向こうとした瞬間ズドンッと殺るつもりかも知れない。
「あの~」
 だけど僕には通信教育で鍛え、喧嘩で磨き上げたCQCがある! そんな僕に不用意に近付いたのが貴様の敗因さっ!
 体を捻り、そのまま相手の腕を掴む。そして掴んだ手首を返し捻りあげる。
「きゃあ!」
 一度流れ始めた一連の動作は、悲鳴程度では止まらない。腕を後ろ手に捻りあげる。そして暴れられないように、相手の首へとスプーンを当てる。――あれ、間違えた。隣に置いてあったナイフを取るつもりだったのに、悲鳴に驚いてスプーンを取ってしまったじゃないか! だがそれは大した問題じゃない。相手は僕が何を持っているか見えないのだから。
 首筋に当たる冷たい感触。となれは鋭利な刃物だと思うだろう。

16 名前: 僕はね、名無しさんなんだ [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 23:35:40

 早く任務を済ませなければ。先程の悲鳴で感づかれたかもしれない。仲間が来る前に、目標を入手しなければ此方が危うい。

「静かにしろっ!」
 首筋に当てたスプーンを強く押し当てると、小さな悲鳴が帰ってくる。
 しっかしデカい胸だなぁ。桜と同じ位あるんじゃないか? メイドみたいな格好して、その筋の奴等には涎モノだな。ま、そんな事はどうでもいい。性欲より食欲だね。
――――くぅ~
 静かな空間に響き渡る異質な音色。ほぅら、お腹のマキリが催促してるぜ。

「――――もしかしてお腹空いてるんですか?」
――くぅくぅ
「それでここに?」
――くぅ~
「良かったら何か作りましょうか?」
――くぅ
 腹の蟲が僕の意を察したように、彼女への相づちを打つ。こんな所で間桐の血を垣間見るなんて……流石は蟲使いマキリだね。恥ずかしくて涙が出そうじゃないかっ!
 彼女の行為を無碍にしたりはしない。だって食事を貰えるんだから。となれば彼女を捕縛している必要はないのだ。腕を放す。

「ふふっ、面白い方ですね。それじゃあ少しだけ待っていて貰えますか。賄いの残りですけど、美味しいんですからっ」
くるりとスカートを翻し、眩しいばかりの笑顔を向けてきた。その表情に少しだけドキッとしてしまった。
「――ふ、ふんっ、この僕に賄いなんかの残りを食べさせるつもりか?」
 それは照れ隠しだったのだろうか、思わず口をついて出てしまった。そしてすぐに後悔する事になる。彼女の悲しそうな顔を見て……
「――すみません。でも、今用意出来るものがそれしか無いんです」
 ズキリと何かが痛む。それは久しく忘れていた痛み。
「――いや、それでいい。急いで用意してくれ」
 ハイとだけ返事をして厨房の奥へと消えていく。その後ろ姿を見送り、テーブルについて待つことにした。

17 名前: 僕はね、名無しさんなんだ [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 23:39:08

 しばらく待っていると、鼻腔をくすぐる香りが漂ってきた。ああ、なる程。彼女が美味しいと言うのも頷ける。沈黙していた蟲共が騒ぎ始めた。
「おまたせしました」
 彼女の持つ器から湯気が立ち上ている。そこから放たれる芳香。思わずゴクリと唾液を飲み込む。誰かが空腹は最高の調味料だといったけど、あれは正しいね。今目の前に在る料理が、至高の品だと言われても信じられそうだ。
 静かにテーブルに並べられる料理達。待ちきれないとばかりに、並べ終わると同時に食べようとする。
 だが彼女はそれを良しとしなかった。スプーンもった手をぺしりと叩き、駄目ですよと子供を叱るように注意する。
「食べる前にする事があるんじゃないですか?」
 人差し指をピンとたて、行儀が悪いのはめーですよと。
「――――いただきます」
「はい♪ どうぞ召し上がれ」
 スープを一口含んだ瞬間、たまらない幸福感が襲いかかってくる。今まで食べてきた一流と呼ばれる店の物と比べても、勝るとも劣らない。純粋な味だけならば、到底及ばない筈のこのスープ。それが今は、堪らなく美味しかった。
 余計な物を削ぎ落とされ、澄み切ったそれを口に運ぶ。もう一口、もう一口と。空になっていた胃にも抵抗なく入っていく。その温もりが体中に染み渡っていく。
 気がつけば皿は空になっていたが、腹はまだ足りないと叫んでいた。
「ふふっ、まだおかわりならありますから」
「ふんっ、不味くはないね」
 素直に美味しかったとは言えず、そんな憎まれ口を叩きながら、空になった皿を差し出す。それを笑顔で受け取る少女。その笑顔は僕を安心させる何かを持っていた。
 二杯目を食べ終わり、ようやく満足感が湧いてくる。僕の幸運スキルは意外に高いのかもしれないな。

18 名前: 僕はね、名無しさんなんだ [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 23:40:53

「ふぅ――ご馳走様」
「お粗末様でした。って私が作ったわけじゃないですけどね。それじゃ私は片付けとかありますから失礼しますね」

戻:部屋に帰って、大人しく寝るか
待:名前も知らぬ少女の手伝いをする

――没ネタ――
 早く任務を済ませなければ。先程の悲鳴で感づかれたかもしれない。仲間が来る前に、目標を入手しなければ此方が危うい。
「答えろっ!」
「――ツチノコは……かなり美味い」
 情報を聞き出した相手に用はない。暫く眠ってもらおう。
「ヴッ! ヴッ! ヴッ! ヴッ! ヴッ! ヴッ! ヴッ!」
 ――――ゴキッ
 てへっ、殺りすぎちゃった♪

――没ネタ2――
 だけど僕には通信教育で鍛え、喧嘩で磨き上げたCQCがある! そんな僕に不用意に近付いたのが貴様の敗因さっ!
 体を捻り、そのまま相手の腕を掴む。そして掴んだ手首を返し捻りあげようとする。しかし相手は掴んだ掌を抑えるように、空いていた手を添えると手首を返した。するとそこを支点に体が綺麗に回転した。視界が反転し、背中から衝撃が突き抜ける。くそっ――呼吸が出来ない。
「まだまだ甘いですね、スネークさん。おじいちゃん直伝のCQCは、そんなに甘くないですよ」

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最終更新:2007年10月22日 21:19