4 名前: Fateサスペンス劇場 ◆7hlrIIlK1U [sage] 投稿日: 2006/08/18(金) 00:57:49

三、こんなサンゴ礁の島に温泉がわいてるですとーーー!?

「……まじ?」
「マジよマジ。セラから聞いたんだから確かだもの。どうする?」

 それはもう、入ってみるしかないだろ。こんな南の島にはミスマッチだけど、そのギャップがかえって新鮮かもしれない。こいつは一生に一度しかできない経験かも。

「よしっ、いくぞ」

 タオルは持った。石鹸も持った。その他諸々、準備は万端。さあ、いざ出陣!

「あっ……、シロウ!」
「どうかしたか?」
「手……、つないでほしいなって」
「了解。姉さん」



「おっーーーーーー!」

 いやはやまさにこれぞ温泉。純和風の露天風呂。日本の東北地方にあったら猿が入ってくるんじゃないかってぐらいこれでもかって完璧に温泉。

「凄いぞ凄いぞ凄いぞ! このいかにも水道水な蛇口! 肝心な部分をぼかしてある成分分析と効能表示! 極め付けにこれ見よがしに大量の温泉の素が捨ててある! くーっ、これぞ日本の温泉だっ! イリヤっ、でかした!」
「シ、シロウ……?」

 なぜかあきれるイリヤを後目に、ちゃっちゃと全裸になって体を洗う。ついでにイリヤも脱がせて洗う。これぞ日本古来のスキンシップ。じたばた暴れても気にしない。

「やっ、やめなさいっ。恥ずかしいでしょ、シロウ!」
「はっはっは。今さらじゃないか。姉さんの裸は隅から隅まぐほぉお!」
「デ、デリカシーがないっ!」

 まあ、なんだかんだで結局一緒に入る事になったわけだが。

「あんまり……、じろじろみないでよ……」

 姉さんあなたは最高です。



 水平線の向こうまで、空は、海は、赤く赤く染まっていた。血のような紅。炎のように燃えている。手元で掬ったお湯も、なんだか赤くなっている気がした。

「凄いね……。なんだか世界の終わりみたい」
「ああ。本当に、そんな感じだな」

 風が吹いている。浜辺では、波が高い。見上げれば幾千もの流れる雲が、遥かな上空を駆け抜けていった。あまりにも世界が雄大すぎて、ちっぽけな自分が少し怖い。そっと寄り添ったイリヤを抱いて、今日という日の終わりを見届けよう。

 俺とイリヤ。そして土左衛門だけが見守る小さな世界の。

「って、土左衛門?」
「きゃっ! 誰かいる!」

 イリヤの悲鳴で思い当たるのは、今朝、忘れもしない桜の悲劇。まさか、また犠牲者がでてしまったのか。プカーとやばけに浮かぶその人影を、とにかく最速で拾い上げた。

「大丈夫か!?」
「ネコにゃ」

 あ、変なの拾った。

「にゃにゃにゃにゃにゃ。押しも押されぬ天下の美女、このあちきと一緒にお風呂だなんて、そんな嬉し恥ずかしレアイベント、お前なんぞにはもったいないぞこの少年! とりあえずあちきの裸を見た責任とってもらうんだからっ。いやんっ!」
「いやお前、服着てるじゃないか」

 ま、その、なんだ。色々突っ込みたいところはあるんだが、こういうものに遭遇してしまった場合の対処法はだな。

「シロウ。やっちゃって」
「オッケー、姉さん。よし。―――飛んでけっ!」

 ぽーん、と遠くに放り投げた。

「にょあー!」

 実にいい感じにぶっ飛んでいくネコ(仮)。そのまま放物線を描いて落下し……、てはくれなかった。つうかスカートから火を噴いて飛んでやがるっ。

「ただいまにゃ」

 水柱をたてて湯舟に着水する、迷惑きわまりない不思議なナマモノ(仮)。おかげでお湯が溢れてしまった。

「んー、高貴な姫君たるあちきを投げるだと無礼きわまりないが、結構楽しかったので許してやるにゃ。本来なら二人揃ってかつお節抜きの軽に処するところ。寛大な処置に心から感謝するがいいぜ。それでは我が最愛なるネコの衆、またなっ!」

 よう分からん事を次々まくしたてた物体らしきもの(仮)は、その勢いでどっしゅーんとどこかへ飛んでいった。下方向へ。

「あ、何か落としてった」
「シロウ、変なもの拾っちゃ駄目よ」

 変なものっていわれても……、うわなにこの変なもの。

5 名前: Fateサスペンス劇場 ◆7hlrIIlK1U [sage] 投稿日: 2006/08/18(金) 00:59:04

 帰り道。意味のない記憶はさっさと忘れる事にして、二人だけの道程を仲良く並んで歩いていた。もちろん手はしっかり繋いで。小さな手のひらが少し冷たく、握り心地がとてもいい。

「ところで、シロウ?」
「なにさ」
「さっき、何を拾ったの?」

 ああ、あれか。あれはなんというか。これなんだけど、見た方が早いかもしれない。ほら。これってさ、馬鹿げた考えなんだけど、もしかすると―――。
一、遠坂のツインテール部分じゃないか?
二、ルヴィアのドリルだと思うんだ。
三、セイバーの、アホ毛?

注 今回の選択肢において、某氏の作品(銀剣物語)はこれっぽっちも全く関係なくなくもないです。

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最終更新:2006年09月04日 17:00