8 名前: ファイナル ファンタズム ◆6/PgkFs4qM [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 18:09:30
それでは一番乗り、失礼しますo( _ _ )o
―――とりあえずだ。一つだけ言えることがある。それは莫耶があの怪しい3人組に見つかることだけは絶対にあってはならないということ。
説明できるだけの確証はない。
だが仮に莫耶が彼女らにやましいことがあるとしても、そうであって彼女らに捕まった場合、彼女はどうなる?
……これは俺の主観でしかないが、罪狩りと名乗る彼女らからは妙に不安に駆られる気配を感じるのだ。上手くは言えないが……もしそんな彼女らに莫耶が捕まることがあれば、彼女はただでは済む筈がないのだと確信できる。そんな危うさを彼女らから感じるのだ。
こればかりは信憑性のない直感でしかない。ただの勘でこの切迫した状況を推し量ろうだなんて非常に馬鹿げてる。しかしそれ以前に俺は無条件で少女の味方でありたいと思う。守ってあげたいと思う。
莫耶の罪の是非に関しては証明してあげられることなどできない。だけど彼女を危険な目には遭わせたくなどないのだ。―――遠目から見る彼女の怯える表情は、誰かに助けを求めていた。これに目を逸らして何が正義の味方か。
「……ん?」
知らずに俺は3人組の前に立っていた。毎度のことながら馬鹿すぎる。恐らく報酬と代価はまず釣りあわない筈だ。まず間違いなく俺は痛い目を見るだろう。
だが彼女がこの状況を打破するには、粘着的に辺りを監視しているこいつらを何とかしなくてはならない。それが彼女の身を案じる上での絶対条件。……さて、どうしたものか。
「何だいお前? ……もしかしてお前がクリスタルを盗んだ張本人かい? アタシ達に手間をかけさせる前に名乗り出るなんて殊勝じゃないか。……だけどそれってつまりアタシらは舐められてるってことかね」
大鎌のフルフェイスがこちらを舐るように視姦する。目は兜で覆われているものの、その視線の妖しさは人間のものではないと理解できる。ミスラ……猫人間。無謀にも彼女らの前に出てきた俺は、さながら猫の前で身を竦める鼠と言ったところか。
そしてフルフェイスに続いて他の2人も俺を凝視し始めた。
――――断言できる。こいつらは強い。
俺だって聖杯戦争を生き抜いたという自負がある。平均的な一般人よりも腕はたつと自信を持って言える。……だから解る。小柄な彼女達が俺の何倍も、それこそ比べ物にならないほど強いんだって。
ふとそれが懐かしい感覚だと悟った。一見人と何ら変わらない外見を持ちながらも、人では決して辿り着けない境地に屹立する最強の戦士達……。
この目の前にいる3人の気配は、サーヴァントのソレだった。
後悔するにしては遅すぎる。彼女達の目の前に、立つべきではなかった……。
9 名前: ファイナル ファンタズム ◆6/PgkFs4qM [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 18:10:17
「わ、早いねぇ。もう見つかっちゃったよ! これでボク達の仕事は終わりかな?」
「待て。まだこいつと決まった訳ではあるまい。おい、貴様。我々に何の用だ。まさか伊達や酔狂で我々に寄って来たとは言うまいな?」
「もしもコイツが喋らないってんならさ、アタシに任せておくれよ。ご無沙汰なんだ、迸る血潮と耳を劈く絶叫がさ……。この逞しそうな男ならいいモノを持ってると思うんだがねェ」
「うっ……」
怖気が肌を駆け抜ける。
猫だと? とんでもない、猫なんて可愛すぎて目の前の女からはまるで連想できない。こいつらは巨大な蛇だ。その滑った体表を四肢に巻きつけ、俺の体力がなくなるのを今か今かと待ち望んでいやがる……。その糸のような舌で頬を撫で、呟くのだ。早く食べさせてくれよ、と。俺をひと呑みにするべく、機を窺っているのだ……。
何とかなると思っていた。前に出さえすれば、機を見出せないまでも、事態は好転できると信じていた。だがこの状況は勇気と讃えるには愚かしすぎるほど無様。
引っ切り無しに痙攣する手。全身に水を被ったが如く覆い尽くす汗。相手を直視することさえ躊躇われ、下を向いている目線。―――戦う必要性すら感じない。衛宮士郎は全身を以って敗北を訴えていた。
「震えてるよ、この子! 可愛いなぁ……。ねぇ、ボクのペットにしちゃ駄目かな? 大事にするから! ……駄目?」
「それは許可できんな。コイツが罪を負っているかどうかは判然としないが、もしあるとするならば無事に帰す訳にはいかない。私達は罪を正しに来たのではない。罪狩りとして罪を狩りに来たのだ」
「え~~っ、そんなぁ……」
「どうでもいいよもう。早く殺ろうよ、コイツ。アタシゃ我慢するってのが嫌いでね。早くズタズタにしたくて堪らないんだよ……」
他の2人はいい。まだ話が通じる余地は見出せる。だが……フルフェイスの女。こいつだけは絶対に無理だ。今もなお獲物を狩るべく小刻みに体を震わせ、熱の篭もった目で俺を侵し尽くす。その姿は野生の動物と同じ……まるで理解の範疇の外にあった。きっと兜の中では溢れたヨダレで一杯であろう。
抵抗する言葉すら浮かばない。
篭手に包まれた手が俺を捕食しようと伸びてくる。殺される。衛宮士郎は、死んだ。
「―――おい」
―――だがそれはもう一つ横から伸びてきた手によって阻止されることとなった。
Ⅰ:それは厚手の皮手袋に包まれていた
Ⅱ:黒い―――大きな篭手だった
Ⅲ:綺麗な子どもの手の平だった
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最終更新:2007年10月22日 21:23