70 名前: ファイナル ファンタズム ◆6/PgkFs4qM [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 23:13:09

「莫、耶―――」
「く……シロウを、離せっ!」

 俺を喰らうべく伸びてきた捕食者の手を、綺麗な子どもの手の平が受け止めていた。

「おや……何だい、アンタ」

 興味の対象を俺から少女へと。俺へと向けられた手は、今度は少女へ向きを変えて伸ばされる。
 ―――思考が加速する。
 鉄輪が錆を纏った如く愚鈍だった思考に、一筋の潤滑油が差し込まれる。
 俺は誓った、少女を守ると。
 ならば―――それをやり遂げてみせろよ――――!

「―――投影開始」

 急ピッチで魔力を起動し、目標の情報を検索、そして解析する。
 投影対象は鎌。あの大鎌だ。形状、鋭さ、大きさ、材質、そして経験、余すことなく凝視する。
 『無限の剣製』……俺がアーチャーから得た、俺の錬鉄の魔術。だが結界を再現できる魔力にはまるで届かない。質も奴に比べると遥かに低い。だが―――これは俺にのみ許された魔術。もとより衛宮士郎はその魔術にのみ特化したもの。できない道理はない。
 魔術回路に魔力を迸らせる。魔力が暴走―――ショートする限界を見極め、荒れ狂うソレを右手へと集中させる。実体無き魔力がカラダを得……そして手には一振りの大鎌が握られていた。

「I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)。Yサイズ―――竜巻挽肉機(ギロティン)」
「ア、アタシの鎌…………しかもアタシの技まで!?」

 竜巻挽肉機(ギロティン)。鎌の計四回に渡る横薙ぎ。その払いはまさに刹那。放った相手を醜い汚塊へと変化させる必殺の技。―――だがこれは相手を傷つけるためのモノじゃあない。奴らの実力は骨身にしみて理解している。狙いは地面。皮肉にもあいつらが最初に地面を抉って埃を巻き上げたことがヒントになったんだ……!

 ブワッ!

「うっ……」
「うわっぷ! ま、前が見えないよ……」

 タイルが砕け、奴らが出来てきたときに起こしたものとほぼ同量の砂埃が宙を覆う。そこには奴らがつけたものと同じ形の傷が刻まれていた。
 鎌なんて技を放った瞬間、維持しきれずに霧散している。……だがこれでいい。そう、何も相手を傷つけなくたっていい。逃げる時間さえ稼げればそれで十分。この脅威から彼女を守るにはこれがベストなんだ。
 どよめく観衆を押し除け、最後の仕上げに取り掛かる。

「莫耶!」
「シロウ!」

 罪狩り達と同じくたたらを踏む彼女の腰を掴み、走る。もちろん魔力を足に込めて、だ。

「待て! くっ、『コールワイバーン』! 飛龍よ、奴らを追え! スカリーX、お前も獣を使って追いかけるんだ!」
「わ、わかったよ、姉さん。―――『よびだす』! ウサギちゃん、奴らを追っていけ~~!」



Ⅰ:街の中へ逃げる
Ⅱ:街の外へ逃げる
Ⅲ:思い切ってこの場に留まる

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最終更新:2007年10月22日 21:50