80 名前: Fate×ネギま ◆MnGA8SFSbU [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 19:54:40
見た感じ、高校か大学生といったところだ。警戒されるだろうが、話をする分には申し分ないだろう。
「そうだな、話しかけてみよう。
慎二、静かに着いて来てくれ。少し離れたところから出て、戻ってこよう」
この暗さと距離ならそうそう見つからないだろう。そう結論付け、茂みに隠れながら移動する。
「なあ慎二。話を聞くために、話を合わせておきたいんだけど」
「え? ああ、別にそんなことしなくていいよ。こんな時に女の子と話しても面白くなさそうだし、ここは衛宮に任せるよ。それに、あの衛宮が隠し事しながら話が出来るのかってほうが興味あるしね」
「ふっ、侮るなよ慎二。倫敦に行ってから色々あったんだ。そこで培われた実力、見せてやるさ」
そうメンチをきったところで出る準備をする。
とりあえず出る前にそれらしい格好が必要だ。俺はあっちから持ってきてしまったバッグがあるが、慎二は何も持っていない。ので
「投影、開始」
旅行鞄を投影して慎二に渡す。
「なにこれ?」
「鞄だよ、手ぶらじゃ変だろ」
「ふうん。ところで今のお前の魔術か? えらく便利じゃんか」
「まあそんなところだ。それについては今度詳しく話すよ。
とにかく今はこっちに集中しよう。慎二も気をつけてくれよ」
「それはこっちの台詞だよ」
ゆっくりと茂みを出る。話すことをまとめながら、自分を落ち着かせる。
昔ならいざ知らず。今は魔術師の助手としての経験があり、自分の事を隠すことは慣れている。
「あの。ちょっといいかな?」
「え? あ、はい。えーと、なにか御用でしょうか?」
「実は、ホテルを探してるんだけど。この辺りにないかな?」
振り返る先ほどの娘。第一印象としては、知ってる人物の中では、桜が一番近いように感じる。
「ホテル? いえ、この辺りには学生寮しか」
「学生寮しか? ってことは、この大きな建物が全て学生の住居ってこと?」
「ええ、その通りです」
「……失礼だけど、一棟にどれだけの学生が住んでるの?」
「ここは中学生が二学年分です。って言っても分からないですね。そうですね…、とりあえず1000人以上はいますが」
その数に暫し固まる。しかもそれで二学年分だというのだから、どう驚けばいいのかと。先ほど駅で地図を見て広いとは思っていたが、なるほど『学園都市』と言うのは文字通りというわけか。
しかし、まったく関係ないが
「そ「えっ!? お前、中学生なのか!?」か?」
「―――すみませんが後ろの方。今のはどういった驚きでしょう?」
「い、いやぁ。そ、その雰囲気とかスタイルで、ちゅ、中学生とは凄いなと思いまして」
ガタガタ震える慎二、凍りつく笑顔を見せる女の子。どうやら慎二はこういった笑顔がトラウマになってるらしい。それは兎も角、俺の台詞に被らないで欲しい。
しかし、まさかこれで中学生とは。遠坂が見たらなんと言うか…。
「まあそんなことはどうでいいか。しかしそうだな…」
「あの、失礼ですが。ホテルをお探しということは、街の外から来たと思うんですが、いったいどのようなご用件で?」
「ん? ああ。今度新しくこの街の学園に、仕事でお世話になるんだ。で、来たのはいいけれど、ミスで遅れてね。しょうがないからホテルを探してるんだけど…」
「それでしたら、ホテルを予約されてなかったんですか?」
「いや、本当なら着いた時点で、学園の責任者に連絡をする予定だったんだけど。こんな時間じゃもう連絡先にいなくて」
「なるほど、それでホテルを探していたんですか」
彼女はそう言うと、少し考える素振りを見せる。それら彼女の挙動や言葉に、違和感を覚える。
「あの。その学園の責任者とは、もしかして学園長の事でしょうか? もしそうでしたら力になれると思うのですが」
「いや、どうだろう。正確には学園都市の、だから。とりあえずその学園長の名前を聞いてみないと、なんとも」
「近衛学園長と言うのですけれど」
「ああ、その人のはずだ。近衛なんて姓、そうそういないだろうし…」
「でしたら。実は、学園長のお孫さんがクラスメイトなので、おそらく連絡を取れるだろうと思うのですが。どうでしょう」
81 名前: Fate×ネギま ◆MnGA8SFSbU [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 19:55:33
その不意の一言に言葉に詰まる。同時に、先ほどの違和感がなんだったか気付いた。
この娘の笑顔は、時たま見せる桜の笑顔に似ているのだと。あの逃げようとしても逃げられない、逃がさない表情に。
おそらく、最初から俺達は疑われていたのだ。自分が聞いていたことは、聞き出したのではなく、誘導するのに都合がいいから、わざわざ親切に話してくれたのだろう。
だが、そんなことが今分かったところで意味などない。今重要なのは、彼女の提案になんと答えるのがいいのか、ということだけだ。だが、どう答えても…
「それならやってもらおうぜ。その方が助かるだろ、お前も?」
突然の声に後ろを振り返ると、いつもの不機嫌面で慎二が立っていた。
不意を突くような提案に戸惑った俺とは違い、慎二の態度はいつもと変わらない。
「正直、野宿なんて嫌だからな。連絡取れるなら取ってもらおうじゃないか。
いいだろ、それで?」
その言葉で平静を取り戻す。慎二がどういった考えでその台詞を言ったが知らないが、疑われる態度を見せれば俺達の立場は危うくなるのだ。
彼女の話が本当か、それとも脅しなのかどうかは問題ではない。うろたえて疑われても、話が真実でも、結果は一緒なのだ。ならば、ばれるまではひたすら嘘をつき続けるのが最善だろう。
「ああ。もし頼めるなら頼みたい。いいかな?」
「……ええ、分かりました。では少しお待ち下さい」
そう言って寮に戻ろうと振り返ると
「貴方たち、何をしているんですか?」
その先から、また新たに金髪の娘が出てきた。この娘も、やはり中学生なのか。
こんな状況でこんなことを考えるのは非常識なのだが、本当にこの娘たち中学生なのか?
「あら? どうしたのあやか?」
「こんな夜中に外から友人の声が聞こえたら、誰だっておかしいと思うでしょう。
まあそれは後で怒るとします。それで、この方たちは?」
「そうねえ。仕事でこの街に来たのはいいけれど、ミスから困ったことになった方たち、かしら?」
「とりあえず、何故疑問文なのかしら」
何故かコントが始まる。このまま逃げたい気持ちだが、そんなことを出来るわけもないので。
「あの。さっきの話なんだけど…」
「え? ああ、すみません」
「さっきの話?」
「実は話の都合から、近衛さんに学園長の連絡先を聞きたいということになったのよ」
「どういった経緯でそうなったのか分かりませんが、とりあえず千鶴さんがそう判断したのならお二方は信用できるのでしょう。
ですが、近衛さんに話を聞くことは委員長として許可できません」
「どうして?」
「この時間なら、近衛さんはもう寝ているでしょうし。なにより相部屋の方は朝早くに起きなければならないで、今から起こすのは学生の本分からして許可できません」
それを聞いて、千鶴と呼ばれた娘は申し訳なさそう顔を向ける。
まあこっちとしては、その方が都合がいい。何せ話が本当のようなのだ。聞かれると大変困る。
「いや、そういうことならそちらの都合を優先してくれ。俺達のはただの我がままだし。駅もあるから一晩過ごすぐらいは問題ないよ。
慎二も、それでいいだろ?」
「分かったよ。一晩なら我慢してやるさ」
「分かってるよ。
まあそんなわけだし。悪かったね、こんな時間に呼び止めて」
「あの、よろしいんですか。あまり力に慣れなかったようですが?」
「いやいや、十分だよ」
「そうですか。そう言って頂けると幸いです…」
「気にすることないんだけどなあ。
それじゃあ、学園長が普段居る場所っていうのは? まあこれだけ広い学園だと分からないか」
「いえ、それでしたら。学園長ならいつも一番奥の校舎に居ますよ」
「ええっと……本当?」
「それはもちろん。だってそこは私たちが通う校舎ですから」
「はは、なるほど。いや、本当にありがとう。もしまた会うことがあればお礼をするよ」
そう感謝の言葉を述べ、彼女たちの寮を後にする。
いや危なかったが、最後にまさかこんな情報が手に入るとは。結果オーライと言ったところ、かな?
82 名前: Fate×ネギま ◆MnGA8SFSbU [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 19:57:49
歩き去っていった男二人を、千鶴とあやかの二人は、見えなくなるまで見送る。
「ごめんなさいね。隠れてもらってて」
「いえ、それは別に気にしてませんわ」
「そう。ありがとう、あやか。」
「そんなことよりも。何を話していたかわかりませんが、もし彼らが本当に不審者だったらどうするつもりでしたの!
勘ぐっていた事がばれて暴れられた、なんて事になったらどうするつもりだったんですか…」
「あら。心配してくれてたの?」
「当たり前でしょう。 友人を気遣うのは当然です」
「さすが、私のあやか。けど、結果的に何も問題なかったんだから、良かったじゃない」
「はぁ。千鶴さんは、その辺りが抜けていると言うか、天然と言うか」
「そうかしら? まあ私の事はいいじゃない。
それよりも、私、あちらに失礼な事をしてしまったんじゃないかしら…」
「何がですの?」
「私、あのお二人が信用できるのかって事ばかり気にしてて、本当は何が聞きたかったのか意識してなかったから。疑うばかりで、相手の事を考えることを懸念してて」
「それは当然だと思いますが。千鶴さんは色々な人に気を使いすぎじゃないでしょうか」
「そうなのかしら?」
「まあ、それが自然なのが千鶴さんなのでしょう。
それと、お二方については気に病むことはないと思いますが。今回の事は、あちらのミスでこういった状況になったのでしょう?
でしたら、こう言ってはなんですが、あまり話を聞けなくともあちらの責任だと思いますけど」
「……そうね。あやかの言い分は正しいわ」
「では、納得したところで戻りましょう。明日も学校ですから、もう寝ませんと」
「そうね、過ぎた事だもの。
―――このことは、もう一度会えたときに考えるとしましょう」
83 名前: Fate×ネギま ◆MnGA8SFSbU [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 19:58:49
駅まで着くと、椅子に寝っ転がり、ため息を吐く。
「最後、本気で危なかった。助かったよ慎二」
「途中までまあまあだったけど、まだまだだね。やっぱり僕が居ないと駄目だね、衛宮は」
「いや、本当だな。
でも、よくあの時あんなこと言えたな。俺なんか、思わず固まったのに」
「ふん。あの女が勘繰ってたのに気づいたんだよ。どうせ、ああいう事言って、嘘ついてるか調べようとしたんだろ。桜に比べたら雲泥の差だよ、あれぐらい。だいたいクリリ○と天津○ぐらいの違いだね」
それはつまり、桜は地球人最強と言う事なのだろうか。
「けど学園長の孫っていうのは、本当だったみたいだけどな」
「くっ。い、いいんだよ、結果的に上手くいったんだ。結果オーライだよ」
「まあそれもそうだな。終わりよければ、って言うしな」
どうやら俺なんかより、慎二の方が状況を読み取ってたらしい。さすが桜で鍛えられているようだ。
そう考えると俺もまだまだ修行不足と言うか、経験不足と言うか。遠坂辺りなら、そんな修行なんかいらないわよ、なんて言うんだろうけど。
「それよりもさ。なんであんな事聞いたんだよ、衛宮」
「あんな事って、学園の責任者ってやつか? そりゃこの都市で一番権力がある人について聞いといたほうが、今後の都合がいいだろ。
言いたくはないけど、おそらく俺達だけでこの世界で生きてくのは無理なんだ。もし誰かを頼るとしたら」
「そっちじゃないよ! 最後に学園長の居場所を聞いただろ。あれ、前の話からの繋がりがおかしいじゃんか! その後にも、今度会ったらお礼するとか言うし。
あれだけ自分で言っておいて、なんで最後に危険なことしゃべるんだよ」
「いや、それは」
最後に聞いたのは、彼女が本当に申し訳なさそうにしてたから、気にしないようにと軽い気持ちで言っただけというか。お礼の話も、本当に感謝してたから言っただけで。
「つまり、自然にあんな言葉が出てきたと」
「そうなるのか、な?」
「はっ。本当に抜けてると言うか天然と言うか。相変わらず変なトコに気を遣うんだね」
「いや、その。…面目ない」
「ふん。まあ僕の目から見ても、あっちが気にした風には見えなかったし、許してやるよ」
「そう言ってくれると助かる」
「で、今度はどうするんだ。さっきお前が言ってたけど、僕達だけじゃこの世界で生きてくのは厳しいんだろ。また会うかも、みたいな事も言っちゃったし。本当に学園長とやらに会いに行くのか?」
「ん~…」
遠坂達の助けを考えれば、この街を出るのは極力避けたい。助けに来るまでの時間を考えれば、俺と慎二がサバイバルだけで生きていくことは難しい。結局、行き着く先として、最後には誰かの頼りが必要になるのだ。なら、出来るだけ力のある人物の方がいいと言うものだ。
問題は、その学園長という人物が、普通なら信じられない俺達の事情を受け入れてくれるか、なのだが。まあそんな事は、正直誰にでも当てはまる事だしな。
「そうだな…」
ネ:結論も出てるんだ。学園長まで一直線に行く
ギ:街で情報を集めながらでもいいだろう
ま:焦る必要はない。次は都市について把握しておこう
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最終更新:2007年10月22日 21:53