394 :ファイナル ファンタズム ◆6/PgkFs4qM :2007/11/09(金) 00:46:49


「こ、この水晶を渡せば、俺をここに居させてくれる上に手厚い看護までしてくれるっていうのかい……? あ、生憎と俺はこの有様。ここから出るなんてとてもじゃないが耐え切れない……」
「オヤマァ! もちろんざんす。タダで寝食昼寝付き、手の尽くした治療をすることでしてよ。更には特別にウィンダス名物、シャントット人形を……」
「だけどやっぱりそれはできない」
「!」
「詳しい説明は省くけど……あの水晶は離れ離れになってしまった大切な人と、俺とを繋ぐ唯一の物なんだ。どうしても手離すということは考えられない。そもそもアレはその人の物であって、俺の物じゃないんだ。だから勝手に貸す、とかはいくら考えたってマズイ。こういう理由だけど、どうかな?」

彼女が納得できるよう、できる限り正直に話してみたが……。
 反応を窺ってみるも、しかしシャントットは握り拳をぷるぷる震わせ、細めた目で俺を睨みつけていた。

「…………中々に面白いジョークですわね」
「ひっ」

 小さな体格とはまるで似つかない魔力が、彼女の体から満ち溢れていく。オーラは室内を侵食し尽し、小さな小さな俺の魔力をアンパンのように包み込む。
 冗談ではない。その魔力量、軽く俺の1000倍以上はある。この人、子どものような体してるくせに、中身はてんで化け物じゃないか!?
 迂闊だった……。見た目に囚われて内面を見誤るなんて……。俺は、馬鹿だ。ていうか自分なりに誠意を込めて話してみたのに、ジョークってどうよ!?

「貴方のような世間知らずなど、魔法で子豚に変えて調理ギルドに売り払う所ですが……まぁ、よござんす。もし、貴方が素直にクリスタルを渡してしまうヘッポコくんだったのならば、永劫にクリスタルは返さない所でしてよ」
「う……」
「貴方、この水晶が何なのか知っていまして?」
「し、知らない……」
「オホホホ! やっぱり! オホホホホホホ! にぶちん極まれりですわぁ!」

 ひときしり笑った後、彼女はぴたりと大笑いを止め、いたって真剣な顔でこちらを見つめてくる。
 途端、これは俺にとって大事な話なのだと直感が告げた。気圧されていた自身を立て直し、こちらも真剣に彼女の瞳を見つめ返す。

「教えてさしあげます。貴方のようなにぶちんでも理解できるよう、順を追って。
結論から言いますと、その水晶の名称は『土のクリスタル』と申します。火、水、土、風、4種の内の1つですわ。さて、何故、火、水、土、風と分かたれているかわかりまして? エミヤシロウ?」
「えと、万物の根源を織り成す、四大元素、だっけ?」
「そう。この世界は四大元素によって作られております。そしてそれらは決してタダで湧いてくるモノではありませんわ。ちゃんと元素の元となる発生源があります。

395 :ファイナル ファンタズム ◆6/PgkFs4qM :2007/11/09(金) 00:47:46


  伝説はこうして始まる。
  全ての起こりは『石』だった、と。
  遠い遠い昔、大きな美しき生ける石は、
  四色の輝きにて闇を祓い、
  世界を生命で満たし、偉大なる神々を生んだ。
  光に包まれた幸福な時代が続き、
  やがて神々は眠りに就いた。
  世界の名は、ヴァナ・ディール。

「……古くから伝わる言い伝えです。皆まで言わずとも、もうお解かりになって?」
「…………つまり、そこの机の上に置かれた水晶が、この世界を作った、と?」
「そう理解してもらって構いませんことよ。で、ここからが本題なのですが……もしも、もし、その水晶が割れたりなどして壊れてしまった場合、世界はどうなると思いますか?」

 ここにきて初めて思考が一旦停止する。見た目あの水晶は鉄並の硬度を誇るとは思えない。確かに割れる時は割れるだろう。だがこの世界の創造主が死んでしまえば、残された世界はどうなるというのか?

「————腐ります」
「えっ?」
「そこにある『土』のクリスタルを割れば、全世界の土が一斉に腐り始めます」
「…………」
「『火』のクリスタルが割られれば世界中から火という存在そのものが消失し、『水』のクリスタルが割られれば世界中の水が腐りだし、『風』のクリスタルが割られれば世界中の風は永遠に止みます。
もしも4つ全てのクリスタルが割られるようなことがあれば、世界を構成している四大元素全てが失われるということを意味し…………したがって、世界という存在が崩壊します。わたくしの言いたいこと、理解できて?」
「……ああ」

 彼女がどうしてクリスタルを渡せと要求してきたか。理解できなきゃ冗談にしか思えない。つまり、『クリスタル』を一個人が所持するには、明らかに危険すぎるということ。
 ならばこうも思い当たれる。少女は何故、コレを持っていたのか? 以前は疑問にすら浮かばなかったが、話を聞いた今となっては明らかに不自然だった。
 心の隅ではそんな話嘘だと力一杯訴えていた。だが、この世界に来て数々の怪異を目にしてしまった以上、今の話は十二分なリアリティを有している。ならば、俺がやるべきことは————?

「———— 伝説には、従来クリスタルにはそれを守護するクリスタルの戦士が存在したとあります。ですが現実にはそんな都合のいいモノなんてありませんわ。わたくし達の住む場所は、わたくし達が守るしかありませんわね。さて、この話を聞いてまだ意固地な姿勢を維持できまして?」



Ⅰ:渡す
Ⅱ:渡さない
Ⅲ:弟子にしてください!


405 :ファイナル ファンタズム ◆6/PgkFs4qM :2007/11/09(金) 13:58:49

先の展開ばらしちゃうと、氷雷光闇はもう1組のクリスタルで登場! ということで……。
ファンの方には設定改変しちゃって、ホントごめんなさいo( _ _ ;)o……。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年11月15日 14:03