40 : ◆v98fbZZkx. :2007/10/19(金) 21:42:07

新規で書き始めます。リレーシナリオ。タイトルは最初の分岐で決定。


はじめは、鉄の臭いがした。
ああ、自分は嫌な想像をしているなと、そんなことを考えながら、遠坂凛は月明かりに照らされた狭い廊下を進んでいる。
場所は新都に建つ小さな貸しビル。本来であれば、彼女が想像しているような事態は起こりえないはずの場所だ。
だが、遠坂凛は知っている。今、この冬木市はいついかなる場所であっても、彼女が想像する事態が十分に起こりえることを。

聖杯戦争。

七人の魔術師と彼らに使役される七騎の英霊によって行われる聖杯の争奪戦。
冬木を舞台としたこの魔術の祭典は、時に魔術とはまったく関わりの無い人間をも巻き込んで血を流させることを、遠坂凛はよく知っていた。
「凛」
「ッ!?」
当然声をかけられて、凛は思わず身構える。
声に続いて、背後から声の主である赤い外套の騎士がうつつに姿を現すに至り、凛は自嘲するように息をはき、構えを解いた。
「アーチャー、驚かさないで」
「引き返すべきだ」
ひやりとさせられた意趣返しに軽口を叩く凛とは異なり、赤い騎士……アーチャーは真剣な表情を崩さぬままに正面、廊下の先の闇に浮かぶドアを睨むように見つめていた。
「理由は?」
「……手遅れだ」
なにが、とは言わない。幾多の戦場を超えて来たこの赤い英霊は、ただ、事実だけを主に告げている。
そして、その言葉を裏付けるように、ドアの向こうからはピチャピチャと濡れた音が響いている。
「この先にサーヴァントの気配は無い。 サーヴァントでないのであれば、それが何者であれ、今の我々が積極的に関わるべきではないだろう」
「……」
アーチャーの言葉は冷静だ。
一騎当千の英霊と英霊を使役することのできる魔術師。それらを相手取り戦争をするこの状況で、遠坂凛はそれが何者であっても無駄に敵を抱えるべきではない。
それは凛自身にも、十分に理解できていた。
だが、しかし遠坂凛は赤い弓兵の言葉に、かぶりを振った。
「例え敵が誰であろうとも、遠坂の管理地で勝手な振る舞いをさせるわけにはいかないわ。そして、何よりも、わたしが気に食わない」
その答えを聞いて、アーチャーはやれやれと言った風に肩をすくめた。
「アーチャー、不服なら帰ってもいいわよ?」
「とんでもない。喜んでお供しよう」
アーチャーの声を満足そうに聞き、凛は数歩足を進めると、ドアノブに手をかけた。
ひやりと金属の冷たさが皮膚を伝う。
「行くわよ」
アーチャーがうなずく間も無く、カチャリと音をたててさしたる抵抗もなくドアノブは回る。


そして、その先には……
GunParadeFate編:紅い瞳を持つ口の無い生物が、積み木遊びでもするように「何か」を組み立てていた。
Fate/式神の城編:様々な大きさのぬいぐるみが、何かに群がって「食事」をしていた。

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最終更新:2007年11月16日 12:26