294 :もしハサ ◆yfIvtTVRmA :2007/11/04(日) 13:52:50
迷う事はない、後ろにはあのバゼット、そしてこちらと戦おうという意思が濃厚な
マスターがいる。ならば強敵が互いに潰しあう状況を期待するためにも前に進むべき。
早足で、しかし足音を決して立てないようにしながら私はバゼットとの戦いを思い
返していた。あれ程の苦戦、私がまだ子供だった頃の父との修行を除けば一度として
なかった。
私よりも大きい魔力を持つ魔術師、冷気に対して完全な防御能力を持つ死徒、
実戦経験でこちらを大きく上回る傭兵、国内での戦いにおいても何度か危機は存在した。
だが、彼女ほど私の命に迫った敵は存在しない。それゆえに気になる事があった。
彼女はなぜ最初に戦うのをためらったのだろうか?ここからの脱出を優先していたの
だろうと最初は考えていたのだがそれは違うのではないかと今になって思えてくる。
戦闘中の立ち振る舞いから察するに彼女は間違いなくこういった戦場の経験者であり、
しかも凄腕の部類に属するだろう。ならば私に先手をとられた事実は彼女の戦闘力と矛盾
する。
何かあったのだろうか。お互いの顔を見た時に思わず思考を停止してしまうような何かが。
「あ」
扉を開け部屋内にいる相手に拳銃で狙いを付けようとして———、
私は間の抜けた声を出しながら拳銃を落とし、そのままの姿勢で固まってしまう。
ようやく分かったよ、バゼット=フラガ=マクレミッツ。君と私は以前に出会っていた
のだったな。ただ、私はその直後別の人物のインパクトのせいで出会っていた事事態を
忘れてしまっていたのだが——、
で、だ。
何でそのバゼットの顔を忘れてしまうほどの印象を私に与えた人物、すなわち
『牛丼屋なきゃう』の店員が私に突進を?幻覚か?それとも本人か?
いや今重要なのはそんな事ではない。せっかくギャルのパンティを使って相手の虚を
突く予定も会ったのにシミュレート外の事態のせいで全くの逆になってしまった現実。
かくて因果は巡る。奇襲には奇襲で、幸運には不運で、これも因果応報というべきか。
パーカーの男、バゼットに続く三人目との戦いは相手の全力の一撃を受けるところから
始まった。
最終更新:2007年11月17日 13:11