377 :もしハサ ◆yfIvtTVRmA :2007/11/08(木) 10:12:49
とりあえず、この一撃をしのぐ!!
なきゃう店員の突進からの掌打の命中のタイミングに合わせ、背後に飛、
「ぐぇっ!」
後頭部と背中に衝撃。
「んぎゃあ!」
直後目の前に黒いものが迫り顔に激突。そのまま後ろから誰かに引きずられる様に体の
前面を削りながら滑っていく。
最初にぶつかったのは廊下の天井、そこからほとんど減速することなく床に落ちて
いったのだと停止してからようやく気付く。
「あの」
膝立ちの状態にまで体を起こした所に部屋の中から声が届く。
「あのー、戦うのをやめて私の話をきいてもらえないでしょうか?」
甘い、甘いぞルーキー。私がお前の立場ならこのタイミングでは絶対にそんな事は
言わない。もし、本気でこちらと話し合いたいのだとしてもそれは完全決着が付いたとき、
すなわち身柄を拘束し戦闘能力を完全に削いだときに言うべき事だ。
確かにお前のパワーには驚かされたが、こちらはまだ指を4本突き指し肋骨のいくつか
が折れ瞼の皮がめくれて右目の視界が半分になり背中を強打した時に脊髄が損傷したのか
左足の感覚が無くなり歯が1本折れ服がボロキレになった程度だ。これで降参していては
悪魔狩りなどやってはいられない。
こちらがまだまだ元気だという事を見せ付ける為ドアの向こうに一発撃とうとする。
が、腰に手をやっても何も触れるものが何も無い。左手用の銃とホルスターは—?
「もう、止めませんか?」
再び降伏を促す声が部屋の中から聞こえてくる。そして、開いたままのドアの前には
彼女の両手がブラブラと揺れており、その手には二丁の拳銃が握られている。
そうか、飛ばされた時にホルスターごと落としてしまっていたのか。
378 :もしハサ ◆yfIvtTVRmA :2007/11/08(木) 10:14:16
—Interlude side zouken
慎二よ、一つ面白い話をしてやろう。第一回聖杯戦争の事は知っておるな?
そう、部外者を呼ばず儀式を行い、その後ワシと遠坂永人とアインツベルンの連中が
喧嘩したせいで聖杯を取り逃した戦いじゃ。
ここで慎二に問題をだそう。当時のメンバーはゼルレッチに弟子入りしたとはいえ
魔術師になってからまだ数年の永人と戦争に参加するには幼すぎた娘、そして当時は
戦闘技術も傭兵も保持していなかったアインツベルン勢、そんでもって全盛期のワシ。
では何でワシはこのメンツ相手に負けてしまったと思う?
「はい、全盛期のお爺様も実は大したことなかったからだと思います」
ちゃうわいボケ。でもまあワシと他のメンバーとの差が無かったという点から見たら
その答えもある意味正解じゃな。なあ慎二、魔術の基礎も知らない単なる武術家が
聖杯戦争の儀式の地の管理者とはいえ何でゼルレッチの弟子になれたと思う?
強かったのじゃよ、武術なんぞで根源に至ろうとしていた一人の馬鹿は魔道元帥が
惚れ込む程に、そして武術のみでワシと引き分けに持ち込む程に強い男だった。
宝石魔術も英霊の使役もろくにできず、己のうっかりで自爆する事も多々あったが、
それでも遠坂永人は以降の代の当主らと比べて決して劣る人物ではなかったのじゃ。
そういえば桜も一応遠坂家の人間じゃが、慎二よりはマシな程度で魔術師として全然
才能が開花せんかったのう。ワシの教え方がまずいのもあるかもしれんが、もしかしたら
桜のやつも—、
「いや、ナイナイ、それはないですよ」
じゃよなー。ああ、姉の方が良かったのう。
——Interlude out
最終更新:2007年11月17日 13:13