比留間慎也の考察(第3回)


こんばんは。
僕の名は比留間慎也(ヒルマ シンヤ)だ。
第1回、第2回の講義を聴いてくれてくれている人には分かると思うが、
普段は“隕石に起因する超能力”の研究分析を行っている科学者のはしくれだ。

僕が受け持つことになったこの講義は、今晩で3回目となる。
今回は“能力鑑定士”についての講義を予定していたが、予定をちょっとずらして
“能力”を使うことに対するリスク、すなわち“反動現象”について話すことにしよう。

というのも、鑑定士については特に詳しく学ばなくても命に支障はないが、反動による不意の事故は実際に人命を奪うこともありうるからだ。

この講義を受けている諸君の中には危険なリスクを伴う“能力”を持っている人もいることだろう。
自分が持っていなくても、身内や友人が持っているかもしれない。
だから、予定を変更して一日でも早くこの情報を提供することは、我ながら間違った選択ではないと思う。

それでは、講義を始めよう。

能力の反動について

激しい運動をすると身体に負担がかかるように、能力にもその使用に伴う“反動”のようなものが当然存在する。
この現象は「反動」「代償」「リバウンド」「ペナルティ」「ネガティブフィードバック(NFB)」など、さまざまに呼ばれている。

次は、世の中にはどんな反動が存在する(確認されている)のかを見ていこう。


反動現象の分類

通常の社会で反動とされているものには【生理的反動】と【超常的反動】の2つの種類がある。
さらに【生理的反動】は【肉体的反動】と【精神的反動】、超常的反動は【副作用的反動】と【主作用的反動】に分けられる。

厳密にはほとんどの“能力”において複数の反動が同時に複合的に発生していると考えられるが、
個人によってどのような反動が強く表れるのかは異なる。
例えば“能力”を行使しすぎるとその場で昏倒してしまう人もいるし、急激な疲労に襲われる人もいる。
変な“能力”の使い方をすると“能力”が拒絶反応を示す人や制御しきれなくなる人もいる。
……といった具合だ。

生理的反動

生物学、生理学の範囲内で起こる反動現象。
通常の意味でいう疲労のようなものだと思ってもらえれば分かりやすい。
ほとんどの能力に付随して発生していると考えられ、特に【意識性】の能力者なら誰もが経験したことがあると言われている。
【生理的反動】には以下の二種類がある。


肉体的反動(リバウンド)

“能力”の使用時に身体に負荷がかかる現象。
肉体の疲労や生命力(免疫力)の低下など。
“能力”を行使しすぎると細胞死、老衰などが加速されるケースもある。

精神的反動(ネガティブフィードバック)

“能力”を使うことによって精神に変調をきたす現象。
急激な睡魔や昏倒、疲労感、無気力、厨二病など。
“能力”を行使しすぎると様々な精神病や意識障害に発展したり、人格崩壊の引き金となりうる。

※ 括弧内は当研究所で推奨している呼び方だが、世界的に統一された名称ではない。

超常的反動

“能力”の範囲内で起こる反動現象。
20世紀以前の科学ではありえなかったような現象が発生することも多い。
具体的にどのような反動が表れるのかは能力の性質に左右される。
【超常的反動】には以下の二種類がある。

副作用的反動(ペナルティ)

“能力”に組み込まれたルールに従って、その“能力”が起こす主要な現象とは別に発生する、自分自身に危害を加えるような超常現象。
過去には身体が塩の塊になってしまったというケースもあるらしい。
また、能力を濫用すると一時的にその“能力”が使えなくなる、というルールも弱いペナルティと言える。

主作用的反動(スーサイド)

能力の内容そのものが自分自身に危害をもたらしてしまう現象。
自分自身の体が耐えられないほどの高速移動や、自身の発火能力による焼死事故などの事例が当てはまる。
いわば、“能力”による自滅。

※ 括弧内は当研究所で推奨している呼び方だが、世界的に統一された名称ではない。
  あ、当研究所というのは僕が勤めている研究所のことだ。

無意識性の能力における反動

【無意識性能力】を持つ人においても、上記のような反動が確認できる。
ただし、【意識性】ほど極端な反動は起こりにくい。
ただし、中には生命に危険を及ぼすようなケースもあるから油断はできないが。


“反動による事故”の防止のために

残念なことに反動現象の存在は学術的にはあまりポピュラーではなく、研究している人も少ない。
ほとんどの“能力鑑定士”は“能力”の内容を教えてくれることはあっても、それに伴うリスクまできちんと教えてくれる人は少ない。
だから反動による事故を防止するためには
  • まずは自分の能力がどういう性質(主作用、副作用)を持っているかを把握すること。
  • 一日にどれくらいまで“能力”を使っても大丈夫かを把握すること。
  • できれば、自分だけでなく親しい人にも上記の情報を教えておくこと。

といったことを個人で行っていくのが最善の手法だと言える。
不慮の事故を防ぐためには、文字通りあらかじめ慮っておくことが重要、というわけだ。

能力鎮静剤

これは宣伝になってしまうが、僕が所属している研究所では現在【無意識性】の能力による事故を防止するため、
“能力”やそれに付随する反動を抑える“能力鎮静剤”とでも呼ぶべきものを開発中だ。

もちろん抑え続けるには薬を服用し続ける必要があるが、
実用化されれば多くの人々が“能力”に悩まされることなく暮らすことができるようになるだろう。

──おっと、もうこんな時間か。
まあ、“能力”による反動現象の概要は、大体こんなところだ。

最後に、前々回の講義での【結界型】能力の解説が分かりにくいという意見があったので、
ここで第一回とはちょっと違った観点からの説明をしておきたいと思う。

補講(第三回)

  • 法則歪曲型能力についての補足2
【結界型】能力は「周囲の空間を支配して自分が有利になる領域を作り出す能力」といえる。
作り出す、空間を物理的に創り出すのではなく、周囲の空間の性質を弄って作り変えるといったほうが分かりやすいだろうか。
この「性質を弄る」ところから、法則歪曲型能力と名付けられている。

ちなみに英語圏ではforcefield-ability(意訳すると「力場展開型能力」)と呼ばれている。



それでは、今夜の講義はここまでとさせてもらおう。
質問は常に受け付けている。 何か分からないことがあったら聞いてくれよ。

補足

  • 厨二病
チェンジリング・デイ以降に発症者が急増し、医学界で認められた“精神疾患”の一種。

主な症状として「自分は人とは違う」という疎外感、「世界が自分と敵対している」という被害妄想、
「自分はやろうと思えばばなんでもできる」というような過剰な全能感などが挙げられる。
“能力”によるネガティブフィードバックが原因で、2000年以降患者数が急激に増大した。
非常に軽度なものなら自然に治ることもあるが、重度の患者になると自身の“能力”を乱用し始め、社会に多大な迷惑をかけることがある。


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  • 比留間慎也
最終更新:2010年07月08日 03:07
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