こんばんは。
前回の講義を聞いた人は知っていると思うが、僕の名は
比留間慎也(ヒルマ シンヤ)だ。
普段はとある組織で“隕石に起因する超能力”の研究分析を行っている。
この講義は今晩で第2回目だ。
今回からは研究の結果明らかになった“能力の性質”について紹介していこう。
といってもまだこの分野の研究は始まって間もない。
この講義で取り扱うものの多くは研究途中のデータや仮説にすぎないので、ひょっとしたら間違っているかもしれない。
(まあ科学の理論と言うのは、ある意味では須らくそういうものなのだが、この分野は研究が始まってまだ間もないので、特にその傾向は顕著だ。)
その点に関しては常に留意しておくように。
補講(第1回)
と、その前に、前回の講義で飛ばした部分が何点かあるので、本題に移る前にちゃちゃっと説明してしまいたいと思う。
世の中にどんな“能力”がありうるのかを知りたい人だけ聞いてくれればいい。
それと、前回の>>367で
(書き換えられた法則は)「時間的、物理的に限られた範囲内」(にしか適用されない)
と言ったと思うけど、正しくは「時間的、空間的に限られた範囲内」だ。訂正しておいてくれ。
意識性能力についての補足
意識性、と書くと、使用者が意識を失えば(気絶させるor眠らせる)能力は解除される、と誤解されるかもしれないので補足。
確かにその方法は有効なことも多いが、すべての能力に対して通用するとは限らない。
使用者が意識を失っても効果が発揮されつづける能力もあるし、中にはコントロールが失われたことで暴走を始めてしまう能力もあるだろう。
また、基本的に能力は日の出日の入りをまたいで使用し続けることはできない。
しかしこれも法則ではなく傾向に過ぎないようで、意識型能力の中には一旦発動してしまうと日の出や日の入り後も効果が継続する能力も(非常に稀な例だが)確認されている。
無意識性能力についての補足
使用者の訓練次第では意識を集中させることで一時的に能力を停止できる場合もある。
もちろん、すべての無意識型能力においてそれが可能というわけではなく、
また大抵の場合は非常な努力と集中力を要する芸当であることには留意しておいてほしい。
長い前置きだったけど、それではこれから講義を始める。
今晩のテーマは、「昼の能力」と「夜の能力」が切り替わるタイミングについてだ。
「昼の能力」と「夜の能力」が切り替わるタイミングについて
1人の人間が2つの能力を持っていて、それぞれ「昼」「夜」にしか使えないことが分かった。
その次は当然、「じゃあその昼夜の判定基準ってナニよ?」って疑問が出てくると思う。
これについてはだいぶ前からいろいろな議論がなされていて、たとえば>>52でいろいろな仮説が立てられていたりするけど、
専門家たちの間では「体内時計」説が今のところ一番妥当だとされているようだ。
しかし、有力じゃない、というだけで排斥するのもアレなんで、
一応、他の説についても専門家たちの検証結果を解説しておこう。
光度判定説の欠点
まず、「明るさで判定する」という説は、ある意味では合っているが、核心をついてはいない。
夜中に明るい部屋で「昼の能力」を使おうとしてもあまりうまくいかない、というのは諸君も経験済みだろう。
同様に、昼間に暗い部屋で「夜の能力」を使おうしても上手くはいかない。どうやら“能力”には太陽の光が大きく関係しているらしい。
もっとも、“太陽光と同じ性質を持つ光”を当てることによって、人工的に発動タイミングをずらせるのではないかと考えている専門家もいるらしいが。
時刻判定説の欠点
「絶対時間」(標準時)で決定されるという説もある。
ここでいう絶対時間説とは、例えば現地時間で6:00~17:59の間の12時間は「昼の能力」、18:00~翌5:59は「夜の能力」が使える、というような説のことだけど、
しかし、この説には致命的な欠点がある。
まず思いつくのは、季節によっては日の出や日の入りの瞬間と切り替わりの瞬間との間にかなり大きなズレが生じてしまうという問題だ。
日本国内だけで見ても、冬至と夏至では日没時刻にかなりの差がある。
さすがに真っ暗になっても「昼の能力」が発動していたり、日が昇ってもしばらく「夜の能力」が使えたり、というのはマズかろう。
外国にまで視野を広げるともっと極端な例を出すことができて、たとえば夏のフィンランドやドイツなどでは夜8時になっても日が沈まなかったり(いわゆる「白夜」というヤツだ)するので、
一律に6時から18時までは「昼の能力」の時間帯、と見なしてしまうのは都合が悪い。
そもそも時刻なんてものは近代の人類が勝手に決めた時間の基準にすぎないのであって、自然現象(隕石によって齎されたわけだし。)がそれに従って動くとは考えにくい。
(たとえばロシアのウラジオストクは日本の明石市よりも西にあるにも関わらず、日本よりも東にあると見なして時差が計算されていたりする。)
「地域や季節によって基準となる時刻が違うんじゃないか?」という反論も一応成り立つけど、
そうすると事実上光度判定説や体内時計説と変わらなくなってしまうし、変わらないのだったらそれらの説を採ったほうが話が早いだろう。
体内時計説
体内時計を知らない人のために簡単に説明すると、
人間を始め、ほとんどの生物は「概日リズム」という約24時間のリズムに沿って生理現象(寝るとか)を行っている。
このリズムは本能の一種で、ずっと日光の当たらない環境に居たとしても保持される。いわば体の中に時計を備えているようなものだ。
そこで、各々の生物が持っているこのような時計を「体内時計」と呼ぶ。
ちなみに、もしこの時計にズレが生じたとしても、日光を浴びることでズレが直るしくみになっている。
(ここまでは隕石衝突前の地球の科学でも分かっていたことだ。)
そして、検証実験の結果、隕石による能力もどうやらこの「体内時計」に従っているらしいということが分かった。
つまり、基本的には日光がない場合は、その人が直前で生活していた場所での日の出や日の入りの時刻によって「昼」と「夜」どちらの能力が使えるかが決定される、ということだ。
(ただ、この実験はまだ数回しか試みたことがないため、まだ正確な事は分からない。真相の究明にはさらなる追試が必要だろう。)
ただし、先程「“概”日リズム」といったように、生物の体内時計は正確に24時間というわけではない。
(人間の場合は、個人差はあるが大体25時間などと言われている。)
普段の生活においては、この一時間ほどのズレは“太陽の光”によって修正されているが(逆にいえば、修正が利くようになっている、ということである。この環境適応能力は生物の進化の過程で有利に働いてきただろう。)
日の当らない空間の中で長時間過ごすとか、もっと単純に海外に行く(時差があるからね)ことで「ズラす」ことができてしまう。
でも、こうした「ズレ」を利用した能力の活用(悪用)は、うまいことにうまくいかない。
理由は簡単、つい今しがた言った通り、体内時計は太陽の光で修正されてしまうためである。
仮に意図的に体内時計をずらし、「昼」に「夜の能力」を使えるようにしたとしても、外に出て日の光を浴びた瞬間、その努力は水の泡になってしまう。(「瞬間」といっても個人差はあるだろうけど)
しかも体内時計と外界の時刻が著しくズレている場合(「時差ボケ」がひどい場合)、体内時計の調整が終わるまでは能力がうまく使えなくなってしまうという実験結果が報告されている。
まったく生物の体というのは、上手く出来ているものだ。
また、近くで昼の能力(or夜の能力)が使用されると、体がそれに反応して昼夜を認識してしまう場合もあるらしい。
これが本当だとしたら中々興味深い事だ。
能力の切り替わり方
昼夜の能力が徐々に切り替わるのか、あるいはある時点を境に瞬間的に切り替わるのかについては個人差がある。
また、同じ人でも体調や日によって切り替わる速度に差があるようだ。
アナログ的変化
前の時間帯の能力が徐々に弱まっていき、次の時間帯の能力が徐々に強まっていくパターン。
デジタル的変化
ある瞬間(多くの場合日が差した瞬間)に瞬時に能力が入れ替わるパターン。
僕が思うに、これは人間が眠りに入るときや夢から醒めるときに似ていると思う。
布団に入ってすぐに眠ることができる人もいれば、布団の中でいろいろ考えているうちにだんだんと眠りに入っていく人もいる。
何の前触れもなく目を覚ます場合もあれば、夢の中に現実の情報(音など)が入り混じってきてそれから目が覚める場合もある。
「昼」「夜」の具体的条件
まとめると、
- 屋外では基本的に「日の出」「日の入り」で判定。
- 密室や窓のない建物、極地方などの特殊な条件下では体内時計で判定。
- 徐々に切り替わるのか、ある時点で瞬間的に切り替わるのかはその人次第、体調にも左右される。
- 近くで使われている“能力”が昼の能力か、夜の能力かといったことも体内時計に影響を与える。(要検証)
ということになる。
この他にも「最も近くの隕石が衝突した場所での時刻」「実は時間帯の基準になる能力を持つ人物がいる」
などいろいろな説が唱えられているけれど、どれも説得力や根拠の面ではどうしても体内時計説には劣ってしまう。
とはいえ、学会はそれほど排他的なシロモノじゃない。他の説や反証が出てくれば体内時計説が覆されたり修正されることがあるかもしれない。
もし何か新しい、面白い説があれば学会まで届けてほしい。その時は僕も考察に参加するとしよう。
というわけで、今夜の講義はここまでだ。
あと、質問は常に受け付けている。
また何か分からないことがあったら呼んでくれよ。
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最終更新:2010年06月15日 22:35