夕暮れ時の
バフ課オフィスビル。
敷地の一角にそびえ立つ3階建ての日本風な建物、
真実が正門の前で背筋を伸ばす、
「頼も~~~う!!!」
大きな正門の側の詰め所から門番のイズコが飛び出してくる。
「この前、3番隊の皆さんにボッコボッコにされたのもう忘れたんですか?」
腕組みをして遠くを見るような目をする真実。
「威嚇しても駄目ですって、真実さん全然迫力ないんだから」
唇を尖らせる真実。
「わかってますよ~だ」
「1番隊の皆さんに相手して貰えばいいじゃないですか!!!」
「トト姐さんは忙しそうだし、アシュラさんは女相手には本気出せるかって取り合ってくれないし
他の先輩達は自主トレなんて絶対しないんだもん」
「だからって他の隊に道場破りしなくても良いでしょ?」
呆れた様子のイズコ。
「アタシだって強くなりたいんだもん。邪魔しないでよ!!」
「わかってくださいよ……、拙者だってこれがお役目なんですから……」
ギギギという大きな音と共に正門がゆっくり開く。
土埃とともに
マドンナが姿を現す。
「随分騒がしいですね」
地面に跪くイズコ。
「申し訳ありません!」
「貴女が手間取るなんて珍しいですわね」
扇子を仰ぎながら。真実を見るマドンナ。
「はて?ああ……、トトのとこに配属になった……」
「松尾真実です!」
頭の先から足の先までジーッと見つめるマドンナ。
緊張した面持ちの真実。
(マドンナ副長って姐さんの同期でライバルなんでしたっけ)
両肩に触ったり、真実の体にベタベタと触るマドンナ。
(なに?まさかそっち系?)
たじろぐ真実。
「で?1班のホープが5班に何の用ですの?」
「100人組手がしたいなぁなんて……」
「最近隊長会で話題ですよ?
身の程知らずの小娘が他の班に道場破り紛いなことをしていると」
ハハハハと笑う真実。
「ようは腕試しがしたいのでしょ?」
扇子を懐にしまうマドンナ。
首を傾げる真実。
「どこからでも掛かってきなさい。
私を一歩でも下がらせたら貴女の勝ちで良いですよ」
唖然とする真実。
「すまないんだけど、武器を貸してあげてくれないかしら?」
イズコの方を見て微笑むマドンナ。
「悪趣味なことを……」
イズコが眉間に皺を寄せ、呆然としている真実を呼ぶ。
「これは代々イズコの名と共に受け継がれてきた大切な刀だ。
万が一折ったりでもしたら、血で償って貰いますよ」
「いや、そんな大事なもの預けられても……」
「遠慮せず、掛かってきて良いんですよ?」
「丸腰の相手に刀なんて使えません!」
「困りましたねぇ……」
マドンナが地面に落ちている2cmくらいの木の枝と小さな小石を拾う。
「ま……、まさか……」
構えを取るマドンナ。
「さぁ、いつでもどうぞ」
顔を真っ赤にする真実。
(いくら副長でも失礼よ!)
イズコが小声で「終わった」と呟く。
「覚悟!!!」
真実が一気に間合いを詰め、鋭い突きを繰り出す。
「わかりやすいですねぇ」
マドンナはため息をつくと。冷静に掌にくっつけた小石で切っ先を防ぎ、小枝で真実の胸部を鋭く突く。
「ぐははは」
(い……、息ができない……)
真実の手首をギュッと握るマドンナ。
ガッシャンと地面に落ちる刀。
口をパクパクと金魚のように動かし酸素を求める真実。
小枝が真実の胸に食い込んでいく。
「急に静かになりましたわね」
マドンナがグリグリと小枝を動かす。
真っ青になっていく真実の顔色。
イズコが目を細める。
「もう充分なのでは?」
「寸止めのつもりだったんですよ?」
クスクスと笑いながら、小枝を胸から離すマドンナ。
バタンと地面に倒れこむ真実。
起き上がろうとするが、激しい痙攣を起こし失敗する真実。
「か……、か……らだ…・…が……」
黒髪を掴み無理矢理顔だけ起こさせるマドンナ。
目からは涙……、口からは涎が零れて恐怖に怯えている様子の真実。
いつのまにか空には月が昇っている。
「戦いは先に動いた方が負けです。ようは我慢比べです」
踵を返し道場へと戻っていくマドンナ。
全身を激しく痙攣させながら、立ち上がろうとする真実。
「急に動くと、心臓が破裂しますよ?」
咳き込む真実。
「わ……、わたしは……」
真実が目を瞑り息を整える。
白袴姿のサムライガールへと変身する真実。
「私はもう誰が相手でも負けちゃいけない……」
「能力を発動させったって事は、死んでも悔いなしってことで良いんですよね?」
呆れるマドンナ。
真実が頷き口から槍を取り出す。
「相手との実力差もわからないとは、大変宜しくないですねぇ」
振り返り小枝を構えるマドンナ。
そのとき道場からカエデが走ってくる。
「どういうおつもりですか?1対1の間に割ってはいるとは……」
マドンナの前で跪くカエデ。
「副長!ここはアタイにお任せして欲しいっす!」
「ハオウ……、良いでしょう。
貴女もそろそろ任務に就かせようと思っていましたから……」
嬉しそうなカエデ。
「これを使いなさい」
小枝を投げて渡すマドンナ。
「カエデ……、お願いだから邪魔しないで……」
「ふん、いつまでもアタイの上にいると思ってるっすか?」
ヨロっと体をふらつかせる真実。
「大丈夫。すぐ楽にしてあげるっす」
小枝が巨大な斧に姿を変える。
大きくジャンプして斧を振り下ろすカエデ。
紙一重でそれを避ける真実。
「相変わらずね。アタシにはそんな攻撃当たらないですよ?」
一進一退の攻防を続ける2人。
途中までは面白そうに見て居たが、欠伸をしながら道場へ入っていくマドンナ。
「2人ともまだまだですね」
激しく戦う2人。
暫くして、真実とカエデが地面に転がる。
「もう止めっす!」
「そうだね……」
「ハンニャさんだっけ?早く追いつきたいのわかるけどさ
焦ってもしょうがいっすよ」
「わかってますよ……、そんなこと……、言われ無くても……」
「アタイなんてまだ一度も任務も任されてないんすよ?」
「アタシだってそんなのまだだよ……」
「1班のホープって噂っすよ?」
「アタシしか新人入ってないからさ。
みんな可愛がってはくれてるけどね
期待のホープって扱いは受けてないわね」
「じゃぁ任務を任されたことは?」
「ないない!同行はあるけど」
ホッとした表情のカエデ。
「多分ホープと書いて小間使いとか奴隷と読むのよ」
冷笑する真実。
走馬灯のように思い出される危険な任務の数々。
「あ……、いっけない……」
慌てた様子で体を引きずりながら、地面に落ちた刀の所に這っていく真実。
「やっぱりだぁ!!!」
刀に入ったほんの少しのヒビ。
「何事っすか?」
「この刀イズコさんに借りたモノなの。
何かあったら血で償えって……」
「それ傷なんすか?」
(ど……、どうしよう……)
「だって借りたとき、こんな風になってなかったもん!」
「アタイは知らないっすよ」
スッと暗くなる真実の手元。
慌てて逃げ出すカエデ。
「さて拙者もお役目に戻るとしよう」
「ご……、ごめんなさい!!刀壊しちゃいました!
修理代は次のお給料が入ったら必ず払います!だから命だけは!」
震えながら地面に頭を擦りつける真実。
明るくなるイズコの表情。
「その刀は歴戦の名刀、あの程度で駄目になるナマクラではございません」
「で……、でもここにヒビが……」
あたふたと取り乱す真実。
「その程度は傷には入らぬのですよ」
ホッとする真実。
ガキンという鈍い音。
後頭部を手で抑える真実。
「でも刀を乱暴に扱ったことはチャラにはならないですよ?」
「ご……ごめんなさ~い!」
涙目の真実。
真実が『ミョウオウ』と呼ばれるようになるのは、まだまだ先のお話
登場キャラクター
最終更新:2010年10月03日 18:39