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月下の魔剣 > 3


「はあぁっ!!」

高く飛びかかってくる最初の犬に、待ち構えていた渾身の力を込めて陽太はレイディッシュを振り上げる。
レイディッ根は犬のわき腹に直撃し、その身体を高く打ち上げた。犬はブロック塀の淵にぶつかり、そのまま向こう側に転がり落ちる。

一瞬で無力化…まさかこれを狙って!? 驚愕して陽太を見ると

「お、おぉ…!?」

本人も驚いていた。偶然だったらしい。

そんな陽太が息つく暇なく、ほぼ同時に二匹目、三匹目が襲いかかる。
今度は踏み込んで二匹目の頭にレイ大根を振り下ろして怯ませ、即座に引いて三匹目の攻撃を防御する。
その牙がガッチリと大根に食い込むのが見えた。引っ張るがまるで離れない。
しかし陽太はあろうことか早々に武器を手放し、犬の口に嵌るように足の裏で蹴りこんだ。

「陽太まだっ!!」
「問題ない」

二匹目に向き直る。合わせられた両手が開かれ、その手から新たな武器が現れる。
白く、細く、その長さは身長を軽く超えていた。右手に持ち左手を添え、頭上に構えるそれは…

「レイディッシュ・守口(ガード)!!」

「…え何、それも大根なわけ?」
「………」

もう突っ込むのは諦めたのか、陽太は無言で攻撃を始める。
細長い大根の先端がヒュンと目の前を通り過ぎて、僕は慌てて陽太から距離をとった。
前進しながら長いリーチで鞭のように振り回すそれは、犬を少しずつ後退させ僕から離れていく。
そこで気付いた。さっき大根を口に嵌めた犬が見当たらない。

「ねえ陽太、もう一匹は…」
「逃げたんだろたぶん。レイディッシュ落ちてたし」

細長い大根を振り回しながら歩く陽太の足元に、落ちていた普通の大根。空いた手で拾い上げる。
真ん中辺りが少し削れているのは牙の跡だろう。

「つまりこいつをとっちめれば終わりってわけだ」

残った犬を睨みつける。犬は後退しながらも戦う意思は依然変わっていないように見えた。

「こいつで…決める!」

身体を横に捻り勢いをつけて、細長い大根を投げた。
意表を突かれた犬は脚を掬われバランスを崩した。その無防備な横腹に大根を叩きつけると、ついに折れる大根。
大根が折れるほどの凄まじい勢いで弾き飛ばされ、壁に叩きつけられる犬。

バチッ…何か機械がショートしたような音が聞こえて、犬は動きを止めた。
恐る恐る近寄って見る。荒い息は聞こえるが、立ち上がる様子はない。

「や…やった……すごいじゃん陽太!!」
「ふっ。こんな雑魚相手にな…」

振り向いた陽太が言葉を止める。どうしたのか聞こうと口を開けたその瞬間。

「伏せろ晶ぁっ!!」

叫ぶ陽太の剣幕に押されて、わけもわからずしゃがみ込んだ。
一瞬両手を合わせ、大きく引かれた陽太の手から大量の何かが散弾のように放たれる。
そのうち幾つかが、僕のすぐ後ろで何かに当たって弾けた。ギャン、と、今日何度か聞いた声。
陽太に手を引かれてその背中ごしにやっと見たのは、さっき逃げたと思い込んでいた犬だった。

「こいつ…逃げたんじゃ…」
「どっからかまわり込んでたらしいな。くだらねえ真似しやがって…お前の相手は俺だ」

僕を背中で押して犬から離し、両手を合わせてもう一度、手の平に大量に発生させるそれは

「ショットガン…ナッツ!」

クルミだった。大概予想はついたので突っ込むのはやめておいた。

陽太と犬の距離は数歩。犬よりも先に動いたのは陽太。右手のクルミを投げると同時に走り出す。
走りながら両手を合わせ、新たな武器を生み出した。
緑の持ち手の先端に、白く丸い球体。その大きさは頭部を超える。

「終わりだ!! レイディッシュ・桜島(ロゼオ)オオォッ!!!!」

クルミの嵐で動けない犬の頭部に、十分な勢いをつけて丸い大根が叩きつけられた。
砕ける大根。潰されるように地に伏せる犬。その頭部の宝石に、ビシッと小さなヒビが入るのが見えた。
バチチチッ…激しく火花が散り、犬は動かなくなった。

「お…終わっ…た?」
「ま、こんなとこだな」

これが当たり前、とでも言うように軽く、すっと振り返る陽太。
以前だったら信じがたいことだけど、その姿は…まるで本物のヒーローのように見えた。


<続く>

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最終更新:2010年06月15日 22:30
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