しなのは名古屋・大阪~長野間を中央本線・篠ノ井線経由で結ぶ特急列車。中央西線の看板列車。

中央西線初の昼行優等列車「しなの」

 中央本線の名古屋塩尻中央西線と呼ばれている。この区間は開通当初から勾配や急カーブの多い難路線であり、蒸気機関車牽引の客車列車ではスピードアップに限界があった。
 優等列車は戦後から名古屋~長野間に夜行準急列車が1往復のみ設定されていたが、名古屋~塩尻間は5時間近くかかっていた。現在、特急しなのが同区間を2時間足らずで結んでいる事を考えると隔世を感じることである。

 昭和28年(1953年)9月、臨時ながら中央西線で初めて昼行の準急列車が名古屋~長野間に登場する。この列車は「しなの」と名付けられ、同年11月に定期列車に格上げされた。当時のダイヤは以下の通り。

2805レ:名古屋09:55→長野15:30
2806レ:長野12:50→名古屋18:29

 昭和30年代に入ると、上野~日光間の準急日光にキハ55形気動車グループ(当時はキハ44800形)が投入されたことをきっかけに全国に気動車による優等列車網が築かれるようになる。
 それは中央西線でも例外ではなく、客車で運転していたしなのは昭和34年(1959年)12月にキハ55形グループに置き換えられ、同時に急行に格上げされた。当時のダイヤは以下の通り。

801D:名古屋08:45→長野13:13
802D:長野15:08→名古屋19:43

 昭和36年(1961年)になると、急行型気動車キハ58形グループが登場し、同年10月には中央西線でも使用が開始された。これに伴い、名古屋~長野間にはしなのの他に信州あずみという2つの急行が増発され、また大阪~長野間の準急ちくまが同じく気動車化され急行に格上げされた。これで名古屋~長野間の急行は4往復となり、編成は全てキハ58形グループ8両による共通運用となった。
 さらに昭和37年(1962年)12月には名古屋~新潟間に急行赤倉、多治見~長野間に下りのみできそこまも加わり、中央西線を通る優等列車は充実するようになる。
 ちなみに赤倉は昭和60年3月改正で長野~新潟間の運転に変更となり南越後に、昭和63年3月で再度赤倉に改称。信州きそこまは昭和38年10月にしなのに吸収されている。

大出力気動車と振り子電車の投入で高速化を果たす

 しなのはキハ58形グループでも、当時強力な機関出力180馬力のエンジンを2基搭載したキハ57を主体とした編成であったが、それでも中央西線ではスピードアップには限界があった。そこで国鉄は昭和42年(1967年)、大出力機関を持った試作気動車キハ90・91形をしなの1往復に投入した。
 この試作気動車は一定の成果を収め、昭和43年(1968年)10月、キハ91を基に開発された特急型気動車181系(電車の181系とは別)が中央西線に初めて投入された。この車両を使用した特急はしなのとされ、既存の急行しなのあずみきそへ吸収された。特急しなのの当初のダイヤは以下の通り。

11D:名古屋08:40→長野12:51
12D:長野15:10→名古屋19:24

 名古屋~長野間は約40分の時間短縮を実現し、更に翌昭和44年(1969年)10月に同区間の複線部分が増えたためで、最速で遂に4時間を切る3時間58分の所要時間を実現した。
 昭和46年(1971年)には急行ちくま1往復がしなのに格上げされたため、1往復が大阪まで乗り入れている。

 しかし、表定速度で言えば60km/h台とまだまだ低速だった。今までが遅すぎたのである。さらなる高速化には電車でしかもカーブでもスピードの落ちにくい車両を投入することが肝要とされた。
 そこで国鉄が開発したのが初の振り子式車両である381系電車で、中央西線全線が電化された昭和48年(1973年)から投入された。これで表定速度は70km/h台まで向上し、名古屋~長野間を3時間20分で結んだ。気動車化当初と比べて1時間近く時間短縮されている。
 なお、この時1日8往復のうち投入は6往復で2往復は181系気動車のままだったが、昭和50年(1975年)に全て電車化された。昭和57年(1982年)には10往復の大台に乗った。この時、季節列車1往復が大糸線へ乗り入れを開始している。

JR化後のしなの

 国鉄分割民営化後の昭和63年(1988年)、しなのは16往復まで増発された。この時、前面展望型のグリーン車クロ381-11~13が登場し、長野方先頭車に連結された。
 依然381系で運転されていたしなのだったが、流石に老朽化してきた。そこで平成7年(1995年)、22年ぶりの新型となる383系が登場する。まずは先行モデルが名古屋~木曽福島間の臨時しなの91・92号に投入され、翌年から381系を置き換えていき、12月には定期は全て383系での運転となった。最高速度が130km/hに引き上げられたこともあり、名古屋~長野間は最速で2時間43分で結べるようになった。また、時刻表での列車名は「(ワイドビュー)しなの」とされている。
 なお、381系のしなのは名古屋~白馬間の臨時列車で顕在であったが、平成20年(2008年)5月6日に運転を終了。35年の歴史に幕を下ろした。

運転時刻表(参考)

  • 下り
駅名 1号 9号 21号
大阪 0858発
新大阪 0902発
京都 0925発
米原 1003着
1005発
岐阜 1038発
名古屋 1056着
0700発 1100発 1740発
金山 1744発
千種 0706発 1106発 1747発
多治見 0723発 1123発 1804発
中津川 0749発 1149発 1830発
南木曽 0800発
上松 0822発
木曽福島 0828発 1225発 1906発
塩尻 0856発 1253発 1936発
松本 0905着 1303着 1946着
0907発 1305発 1947発
明科 0918発
聖高原 2013発
篠ノ井 0952発 1344発 2031発
長野 1000着 1352着 2039着

  • 上り
駅名 2号 10号 16号
長野 0610発 1100発 1400発
篠ノ井 0618発 1108発 1409発
明科 0650発
松本 0705発 1151発 1451発
塩尻 0714着 1200着 1500着
0715発 1203発 1503発
木曽福島 0743発 1231発 1531発
上松 0748発
南木曽 0808発 1555発
中津川 0821着 1306着 1606着
0823発 1308発 1607発
恵那 0832発
多治見 0851発 1335発 1635発
千種 0908発 1352発 1652発
金山 0912発
名古屋 0916着 1359着 1659着
1702発
岐阜 1724発
米原 1759着
1801発
京都 1848着
1850発
新大阪 1914発
大阪 1918着

※本来中央本線は東京駅が起点なので名古屋発は上りになるはずだが、JRになってからは中央西線は名古屋駅、中央東線は神田駅という様に起点が改められた。

編成の変遷

  • 1953年:準急しなの登場
1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車 7号車
D51 オハフ33 オハ35 オハ35 オハ35 オハ35 オロ35 オハ35
機関車 三等車 三等車 三等車 三等車 三等車 二等車 三等車
塩尻←                  →名古屋・長野
  • 1959年:急行格上げ、気動車化
1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車 7号車
キハ55 キハ55 キハ55 キロ25 キハ55 キハ55 キハ55
二等車 二等車 二等車 一等車 二等車 二等車 二等車
塩尻←                  →名古屋・長野
  • 1967年:大出力試作気動車導入
1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車 7号車 8号車
キハ91 キハ91 キサロ90 キサロ90 キハ91 キハ91 キハ91 キハ91
二等車 二等車 一等車 一等車 二等車 二等車 二等車 二等車
塩尻←                  →名古屋・長野
  • 1968年:特急しなの登場
1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車 7号車 8号車
キハ181 キハ180 キハ180 キハ180 キハ180 キサシ180 キロ180 キハ181
二等車 二等車 二等車 二等車 二等車 食堂車 一等車 二等車
塩尻←                  →名古屋・長野
  • 1973年:振り子電車登場
1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車 7号車 8号車 9号車
クハ381 モハ381 モハ380 モハ381 モハ380 サロ381 モハ381 モハ380 クハ381
普通車 普通車 普通車 普通車 普通車 グリーン車 普通車 普通車 普通車
塩尻←                  →大阪・名古屋・長野
  • 1988年:パノラマグリーン車登場
1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車
クハ381 モハ380 モハ381 モハ380 モハ381 クロ381-10
普通車 普通車 普通車 普通車 普通車 グリーン車
←名古屋・大阪                 →長野
  • 1996年:全列車383系に置き換え
1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車
クロ383 モハ383 サハ383 モハ383-100 サハ383-100 クモハ383
グリーン車 普通車 普通車 普通車 普通車 普通車
←長野                   →名古屋・大阪



長野駅を発車する383系しなの

381系による白馬行き臨時しなの81号

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年10月04日 01:10