学校週5日制


 学校週5日制は、子どもたちの生活全体を見直し、ゆとりある生活を送らせることで、子どもたちが個性を生かしながら豊かな自己実現を図ることが出来るよう、また、学校や地域社会での様々な体験をさせることで「生きる力」を育む目的で平成4年から月一回、平成7年からは月2回と言う形で段階的に実施。
平成14年から完全学校週5日制が実施されている。

 文科省の調査によれば、休日が増えることでお手伝いや自然体験を多くすることができ、その結果、そうした体験が豊富な子どもほど、道徳観や正義感が身についているという。しかしその一方で、「休日に何もすることがない」と2人に1人が感じていることもあり、休日の過ごし方について悩んでいる保護者の方もいるようである。



一部引用
文部科学省


ゆき

追加

 学校五日制はさまざまな思惑があって実行され、多くの議論を巻き起こし、いまでも未解決の部分がある。
 もともと欧米のキリスト教的伝統においては、日曜日は教会に行く日であり、休日は土曜日である。最近は教会に行く人も少なくなっているので、実際上土日が休日のようになっている人々も多い。
 日本は教会に行く習慣がないので、休日は日曜日であった。1970年代の石油ショックで世界経済が大打撃を受けたとき、いち早く復興したのが日本で、70年代後半から80年代にかけては、日本が世界経済を牽引するような印象を与え、アメリカの低迷がめだった。当時の著作では、ジャパン・アズ・ナンバーワンとか、アメリカの凋落というような題名の本がたくさん出された。こういう中で、日本人は働き過ぎだ、公平な競争をしていない、というような非難が巻き起こり、日本に労働時間の短縮を求める圧力が強まった。また、日本の競争的な学校教育への批判も同時に高まり、日本の子どもはあまりに過多な教育内容に圧迫されてストレスに悩んでいるというような指摘である。
 そこで、政府は、労働時間の短縮と教育内容の精選(ゆとり)を合わせて導入し、欧米の批判に答えようとしたという側面がある。もちろん、これは日本人にも歓迎される側面もあったが、批判する人たちもいた。学校を五日制にすることは「公立学校」の場合法律によって可能だが、労働日で土曜も休みにすることは、企業の判断となる。したがって、学校を五日制にしても親が働きに出れば、かえって、家庭に放置される子どもが出てくるので、新たな問題が起きないか、また、私立学校は受験体制の中で有利になるために、導入しないのではないか、等々の反対論もあった。また、土曜日を休みにしたら、塾にいく生徒が増えて、経済格差が教育格差を拡大する危険があるという批判もあった。そこで、労働の五日制の導入をまちながら、部分的に学校の五日制を段階的に導入する、また、土曜日の塾は自粛するように行政指導する、また、土曜日にボランティアの活動などを奨励するなどの措置がとられ、学校の五日制がかなり普及することになった。しかし、今でも私立学校はあまり導入しておらず、我が大学も土曜日に授業が少し行われている。
 さらに問題を複雑にしたのは、PISAの学力テストで日本が落ち込み、ゆとり教育への非難が巻き起こり、土曜日の授業復活論が起きたことことだ。
 労働者がゆとりある生活を営めることは重要であり、それは子どもも同じであるという側面と、厳しい国際経済競争にさらされているという側面のバランスをどうとるか、というようなことが、学校の五日制の背景にある。
最終更新:2007年05月16日 06:44