P-Fスタディ


 P-Fスタディは欲求不満場面に対する反応から自我防衛水準での被験者の反応の背景に潜む人格の独自性を明らかにするための検査であり、1945年以降にソール・ローゼンツァイクによって体系化された。彼はフロイトの防衛機制のタイプの実験的な心理力動的研究にとってフラストレーション現象が最もふさわしいものであると確信し、現在のP-Fスタディ反応分類へと発展させた。もともと、パーソナリティ研究の手段として考案された技法であり、標準化された心理測定的テストではないのでテストではなくスタディという名称がついている。

テストの体裁

 日常、誰もが経験する可能性のある欲求不満場面が24枚描かれており、いずれも左側の人物が右側の人物に不満を起こさせている。この右側の人物がどのように答えるかを想像してその言葉を空欄の吹き出しに記入していく。絵は線画で描かれており、登場人物の描写は全て省略されている。これは表情の印象によって特定の反応を誘発するのを避けることを意図しているという特徴がある。これらのことから、P-Fスタディは投影法に属している。しかし、刺激として用いられている図版がTATなどとは違ってフラストレーション場面に限定されていたり、人物が決められている点で、制限付きの半投影法と称されている。また、P-Fスタディには成人用、青年用、児童用がある。

解釈方法(ここでは主なもののみ記述)

 被験者から得られた反応を情緒と判断からそれぞれアグレッションの方向が他罰的(Extraggression E-A)、自罰的(Intraggression I-A)、無罰的(Imaggression M-A)の3つに分類する。またアグレッションの型として障害優位型(O-D)、自我防衛型(E-D)、要求固執型(N-P)に分類する。ここでのアグレッションは攻撃ではなく、主張性を意味している。アグレッションの方向と型の組み合わせから9種、(厳密には11種)の分類が行われる。
 分類後、記録表を用いてまとめる。記録表には(a)場面別評点記入欄、(b)プロフィール欄、(c)超自我因子欄、(d)反応転移分析欄に加え、欲求不満場面においてどの程度、常識的な方法で適応することができるかを示すGCR(集団一致評点)を記入欄が設けられている。中でも、被験者の反応傾向を知るのに最も重要なのがプロフィール欄である。各評点因子の心理学的意味についてここでは%欄のみ簡単に以下に述べる。

 E-A%は他責的反応であり、欲求不満の原因を他者や環境のせいにする。これが高い人は防衛機制の中でも「投射?」を働かせ、相手からの非難を反対に相手への非難とし、敵意を示すことになる。
 I-A%は欲求不満の原因を自分の責任に帰し、これが高いと後悔や罪の意識を抱きやすい。そのため、防衛機制では「置きかえ?」「孤立化」「帳消し」を用いる。
 M-A%は欲求不満の原因は誰にもなく、不可避の事件と捉え、妥協の動機が強く「抑圧」によって自分を守ろうとする。

 また、O-D%は欲求不満に対する自我の反応の表明を避けるいわゆる逡巡反応である。
 E-D%は欲求不満場面において歪力を解消する根本的な反応で自我の強調に関係し、児童・成人・青年のいずれも45%前後出る。 N-P%はE-Dの反応の発展であり問題解決に関係する。

 超自我因子欄はE,Iの出現率と関係する傾向を捉えるために設定されている。E%は社会に適応するために必要な好ましい程度の攻撃性、自己主張性のあることを示す。I%は悪いと思いながらも言い訳をする傾向を示す。E,Iどちらも社会に適応するためには必要なことであり、標準であることが望ましいとする。

 反応転移分析欄で吟味されるのはテストに関する心構えや被験者が心の中で秘めている心理構造、また再教育効果の測定というように臨床診断上非常に重要な意味をもっている。非行少年、精神障害児、愛情生活、経済的などに恵まれていない人の場合などさまざまなケースを考慮し、それぞれの傾向をつかんでおくことで、再教育や心理療法の効果を3ヵ月後、6ヵ月後に再テストし、比較することができる。これは効果測定の大きい資料となる。


最終更新:2008年07月12日 13:49