ロック(locke,J.1632-1704)


 イギリスの哲学者、政治思想家で名誉革命の思想的旗手である。名誉革命後に成立した中産上層階級の市民教育論を展開した。
 『人間悟性論』(1689)は哲学に関するもので、経験論の思想が展開されている。また、『教育論』では、人間の心は初めは白紙であり、何の概念も持っていなと主張し思想の材料はすべて経験によって得られると説いた。学習した内容よりも身につけていく過程を重視し、形式陶冶の立場に立つ。古典のような書物の教育を排して、社会生活の中での実際の経験を教育の主な内容としようとする考えである社会的実学主義の立場とも言える。
 子どもを「自己の理性に従う自由な市民としての個人」へ教育するためには徳、知恵、礼儀の正しさ、学習が必要であるがこのような教育を十分に果たせる学校はないと公教育を批判し、子どもを家庭で育てるべきであると主張している。ロック自身はオクスフォード大学を卒業後、貴族の家庭教師をしていた。その頃、オランダに亡命したが名誉革命の後に帰国。

 政治論では『市民政府二論』(1690)でホッブズに対立して人民主権を説き、人民の抵抗権を主張して名誉革命の正当さを理論化した。「社会における人間の自由は、国家における同意によって確立された立法府の権力以外のいかなる権力にも屈せず、この立法府がみずからに託された信託に従って制定する法以外には、いかなる意思の支配も、いかなる法の拘束も受けないということのうちに存する」(「政府二論」第8章政治社会の起源について)
 これは三権分立への橋渡しともなり、のちにモンテスキューやルソーに受け継がれアメリカ合衆国憲法に具現化された。


最終更新:2008年03月13日 00:58