鯨統一郎


contents

#contentsx

書籍情報

plugin_html is not found. please feed back @wiki.

著者 : 鯨統一郎 発行元 : 祥伝社 新書版発行 : 2007.9

伝説のサイコセラピスト、波田煌子(なみだきらこ)が学習塾の事務員として、塾生達の様々な問題を解決する。シリーズ第3弾!

収録作品

  1. 第1限 路線図と涙
  2. 第2限 相似形と涙
  3. 第3限 清少納言と涙
  4. 第4限 疑問詞と涙
  5. 第5限 月の満ち欠けと涙
  6. 第6限 確率と涙
  7. 第7限 基本的人権と涙

あらすじ

以下、新書版裏表紙より引用


教育こそが日本を変える。希望に燃え学習塾を開いた波田信人(はた のぶと)は戸惑うことばかり。受験を控えた難しい年頃の中学生の間で、厄介な事件が続発するのだ。 おちこぼれ生徒が突然試験で高得点をとったり、「トラが空を飛んだ」「日本からアメリカまで一時?」など嘘を連発したと転校生がいじめられたり。 そして信人最大の悩みが新米事務員・波田煌子。元警視庁のプロファイラーだというが、言動はお惚け。しかしカンニング疑惑の真相も、嘘つき発言の真意もどうやら掴んでいるようで……。


引用終わり

書評

当たり前に生徒を信じ続ける波田煌子は素晴らしい!

今回、この書評のために本作品を再読したのですが、初読時とはまた違った感慨がありました。 初読時は波田煌子の相変わらずのとぼけっぷりと、それと裏腹な自信満々な言動に魅了されっぱなしだったのですが、今回はちょっと違いました。 波田煌子、優しすぎる。 とにかくどんな異常な状況に思えても、生徒を信じ続けています。それも何とか信じてあげよう、ということではなく、「当たり前に」信じているのです。これって実はすごいことですよね。 今まで、メンタルクリニックの所長、警視庁のプロファイラーとして活躍してきた波田煌子ですが、私はこの学習塾の事務員というのが最も波田煌子の人間性が活きるような気がします。あくまでも学習塾の先生ではなく、事務員というのがポイントだと思いますが……。

ミステリとしては、今までのシリーズの中で、一番普通の謎解きです。もちろん強引なものは多いのですが、ある意味普通の推理で真相に近づけるものが多いように思われます。前作までは、正直言って鯨先生の作風を理解していない人に薦めるのはちょっと危険なものを感じていたのですが、この作品ならとりあえず普通のミステリファンの人にもお薦めできます。なんというか、普通の「日常の謎」系の小説になったような感じでしょうか? ただし、ミステリとしては「日常の謎」ですが、波田煌子がいる空間自体が「非日常」の空気を感じさせます。それも波田煌子以外の登場人物は、あくまでも普通であるがために、波田煌子の異質さが際だっています。それでも、生徒達はもちろん、波田煌子をうさんくさい目で眺めていたなみだ学習塾のスタッフ達も、いつしか彼女の周りに引き寄せられてゆく、その過程が静かな感動を誘います。

最後に波田煌子が密かに浮かべたうれし涙に、いろんなものが詰まっているような気がします。 軽い物語ながらも、名作だと思います。






{以下、(軽く)ネタバレありです。未読の方はご注意を };







正直なところ、初読時にはなぜ彼女はこの塾を去ってゆくのかよくわかりませんでした。波田煌子らしいといえばそうなのですが。 しかし、今回はシリーズ完結編「蒼い月 なみだ事件簿にさようなら!」を読んでから再読すると、彼女の「見つけた……」の台詞の意味がわかりました。 そして「蒼い月」事件で、とりあえずの到達点に至った彼女には、また本作のような世界に戻ってきてもらいたいと、切に願います。

感想・書評投稿

ぜひ、この書評に対するあなたのコメントをお願いいたします! こちらからどうぞ

あなたもこの本についての書評を書いてみませんか? 短いものでもけっこうです。 こちらからどうぞ

最終更新:2008年11月28日 19:12