著者 : 鯨統一郎 発行元 : 祥伝社 新書版発行 : 2005.10
鯨統一郎先生の得意とする、わずかな手がかりから話を広げて謎を解くタイプの短編集です。伝説のサイコセラピスト、波田煌子(なみだきらこ)が今度は迷宮入り事件を捜査する特捜班で犯罪心理分析官として活躍する。シリーズ第2作。
収録作品
以下、新書版裏表紙より引用
ぼく花山仁(はなやまじん)は迷宮入り事件を捜査する特捜班に配属された。憧れの刑事になれたと喜んだのも束(つか)の間(ま)、他のメンバーを知って愕然とする。囮(おとり)捜査で左遷された前泊(まえどまり)ナナ、定年間近の久保主任……。要は警視庁のお荷物軍団なのだ。極めつけは波田煌子(なみだきらこ)とかいう犯罪心理分析官。野暮な容姿と惚(とぼ)けた言動。プロファイルはおろか心理学についての知識さえ覚束(おぼつか)ない「エレベーターガール生首ゴロリ事件」「プロ野球スモール人形殺人事件」など、立ちはだかる七つの難事件をぼくらは解決できるのか?
引用終わり
こじつけたら日本一! 鯨ワールドを堪能しよう!
伝説のサイコセラピスト、波田煌子シリーズ第2弾です。前作ではメンタルクリニックを舞台として、いわゆる「日常の謎」を扱う、何とも平和な物語だったのですが、今作は……おなかいっぱいになりそうなくらいの猟奇事件のオンパレード。 もう死体の切断なんて日常です。 ひどいところでは、死体の部位を使って本人のミニチュア人形が作られたりなんかしちゃいます。 まったく二階堂黎人先生あたりがリメイクすればさぞかしえげつないことになってしまいそうなシチュエーションばかりです。
それなのに、我らが波田先生は相変わらずのマイペース。 おどおどしているように見えるのに、怖いもの知らずで辛辣で自信家で。
物語としては(おそらくわざとでしょうが)前回と同じように、パートナーとなる男性(花山刑事)の視点で語られ、彼はセックスアピール満載の女性(前泊ナナ)に憧れているといった設定で、前作と同じようなリズムで進みます。ただし、謎解きは前に述べたとおり、いかにも推理小説的な事件のオンパレードですので、前作よりは考える楽しみは味わえます。もっとも、真相は相変わらずぶっ飛んでいるので、あまり真面目に考えると脱力すること必至ですが。
それにしても、最後に波田煌子が言うように、やはり彼女には日常の謎の方が似合うような気がしますが、本作のように非日常的な殺伐とした舞台で、あくまでも飄々としている波田煌子もまた魅力的ではあります。
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