著者 : 高田崇史 発行元 : 講談社 新書本発行 : 2002.11 文庫版発行 : 2005.12
浪人生コンビ、通称「八丁堀」と「饗庭慎之介」、そして大金持ちで美形の高校生「千葉千波」がパズルのように謎を解く、千葉千波の事件日誌シリーズ第3弾。
収録作品
文庫本裏表紙より引用
有名な"川渡しの問題"を高田流にアレンジした「山羊・海苔・私」、図書館を舞台にした暗号を解く「八丁堀図書館の秘密」など、論理パズルと事件の謎解きをコラボレートした、ユーモア推理短編集。有栖川有栖氏が「高田ワールド」を分析した解説も収録。読めばあなたの脳が活性化する、好評シリーズ第3弾!
引用終わり
この書評をご覧いただく前に、シリーズ第一作「千葉千波の事件日記 試験に出るパズル」の書評をご覧いただくとよいと思います。シリーズ全体についての解説的内容になっていますので。
というわけで、今回もぴいくん、千波くん、慎之介の三人が活躍する「パズル小説」です。 年度の後半に入ってきても、相変わらずぴいくんと慎之介は勉強している気配がありません。やはり彼らの将来が心配です。
さて、本編ですが、第一作と同じく最初と最後を徹底したパズルっぽい物語で挟んで、真ん中は意外と普通の推理小説的な物語で構成されています。といっても実は一作目を初めて読んだときには、最初と最後の物語のパズル的インパクトに加え、全編にちりばめられたパズルに目がくらんで、すべてがパズル的な物語だと感じていたのですが。
それにしても、最後の「もういくつ寝ると神頼み」は第一作のラスト「夏休み、または避暑地の怪」とダブります。「夏休み〜」では見分けの付かない三つ子の小坊主が登場し、これでもか! というくらい読者を翻弄してくれましたが、今回は「松五、竹三、梅太、キク、ヨキ、コト」のお年寄りオールスター。しかもみんなお互いの名前と顔が一致しない……。 実は、パズルとしてはそれほど難しいものではなかったのですが、とにかく彼らがしゃべりまくると、もう、カオスです。高田先生は遊んでいるとしか思えません。
まあ「パズルである」と言うことを免罪符にした、この荒唐無稽さがこのシリーズの魅力の一端を担っているのでしょう。
しかし、全編これでは、もはや物語としてどうかという感じもします。 ですから、真ん中の方の普通の推理小説的物語達も、全体的な物語としての流れを作る上で、欠かすことの出来ないパズルのピースだったように思います。
また、このシリーズのもう一つの楽しみ。 全編で繰り広げられる、本編と関係あったり、なかったりするパズル達ですが、ワタシ的には、前作より、読書をしながら考えるにはちょうど良い感じの難易度であったように思います。 実際に解けるかどうかは別として、読書しながらその問題にぶつかったときに、とりあえずちょっと本気で考えてみようと思わせる感じの問題が多かったのではないでしょうか? (三角関数はさすがにアレですが……)
今作は、あの有栖川有栖先生が解説を担当されています。 第一作の森博嗣先生の解説とはまた違った、ユーモアあふれる解説です。 それにしても、さすが有栖川先生。 この短い文章の中でも名言を生み出されています。
「私・有栖川は人格に歪みが生じるほどに文系なので……」
うはははは。 文系過ぎて歪んでしまった人格って!!
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