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ウソツキ屋の小ネタ-01

1


 一度目だけなら偶然だが、二度以上起こったならそれは必然である。
 そんな話を聞いたことがある。
 まぁ世の中には二度あることは三度ある、なんて言葉も残っているわけだから先人の言葉というのも数撃ちゃ当たるくらいのものなのではないかとも思うが。
 ただ、今ならその言葉を信じられそうだった。
 陽も暮れ、空に数え切れないほどの星と心奪われるような満月が浮かぶ夜。
 そういった日には、必ずと言っていいほど彼女がそこにいた。

「――貴音」
「っ、何奴!」

 そして声をかける度にこんな反応が返ってくるのも恒例のこととなっていた。

「あ……あなた様は」
「あー、とりあえずこれをどうにかしてくれ」

 目の前に突き出された手のひらをつっつくように指さすと、慌てて貴音は腕を引っ込めた。

「も、申し訳ありません。またこのようなお恥ずかしいところを……」
「いいって、そんなに気にしなくて」

 正直もう慣れたし……というのは心の奥に仕舞っておくことにした。

「また月を見てたのか?」
「はい。やはり満月の夜は、心安らぎます」

 そう言って上がった視線を辿ると、頭上に淡く輝く月の姿があった。
 自分もよく月を見上げている方だと思うが、貴音は決まって満月のときにこの場所に佇んでいるようだった。
 初めて会ったときと同じく。

「こんな風に声かける度に怒鳴られるのも、もう4回目だっけ?」
「そ、それは……」

 自分と同じくらいの背丈の少女が縮こまっている。いつも毅然とした態度を崩さない『銀色の女王』が。
 そのことがどこかおかしくて、つい頬が緩んでしまう。

「わ、笑わないでください! あなた様は……いけずです」
「悪い悪い。でも変わったよな貴音も」
「え?」
「前より、少しだけ明るくなった」

 月を見上げると思い出す。初めて出逢ったとき、思いつめた表情で月を見上げ語りかけていた目の前の少女。
 しかし765プロでも仕事をするようになってから、その憂いを帯びた瞳には別の輝きが宿るようになっていた。
 もっとも、彼女自身と彼女たちを送り込んだ黒井社長がそのことに気付いているのかは分からないが。


「そう、でしょうか?」
「あぁ」

 それっきり彼女は俯いて黙り込んでしまった。顔に複雑な色が見え隠れしているのを目の当たりにして、自分
が失言してしまったのではという不安に駆られる。

「何か、悪いこと言ったか俺?」
「いえ、あなた様は何も。ただ……己の使命を忘れてしまったわけではないにしろ、安らぎに我が身を置いてい
た自分が情けなくなっただけです」
「使命?」
「私は、民たちに……」

 ――くぅ。

 言葉を遮るように何かが暗闇の中で響いた。
 何かあったかと辺りを見渡してみるが、近くには誰も、そして何もない。
 貴音にも聞いてみようと視線を彼女に戻すと、月明かりに照らされた顔には朱が差し、いつもは凛々しい双眸
もどこへ向けていいのか分からないように右へ左へと彷徨っていた。

「……あぁ」

 時刻は8時を過ぎた頃。
 仕事を終えてからずっとここで月を眺めていたというのなら腹の音も鳴るというものだろう。
 かく言う自分も昼以降何も食べていない。つられてこちらの腹の虫まで騒ぎだしそうだった。

「どっかで何か食べてくか?」
「え? あ、いえ、それは……」
「一応言っておくけど、俺の懐に二人分食費の余裕があるのはかなり珍しいと思う」

 その言葉に呆気にとられていた貴音だったが、やがて小さく笑みを浮かべて頷いた。

「それでは、馳走になります」
「よし! それじゃあどこで……」

 と考えようとしたところで、視界に端に屋台が飛び込んできた。のれんにはでかでかと『ラーメン』と書かれている。
 屋台のラーメンとは不思議な魔力が込められている。醤油の香りが鼻腔の奥をくすぐり、空腹と相まって一層
食欲が沸いてくる。

 ――まてまて、一人ならともかく今日は貴音がいるんだぞ。

 なんとか駆け寄りたくなる気持ちを押し止め、改めて貴音に声をかけようとして……

「――らあめん」

 何やらとてもうっとりとした眼差しで、先ほどまで自分が見ていた屋台を見つめる『銀髪の女王』がいた。
――夢の中で また包んで……

 テレビから聞こえてくる貴音の歌声を聞きながら、次のオーディションに参加するための資料をまとめる。
 本来ならじっくり聞きたいところなのだが、今は誰の場合でも仕事中に番組を見ることが多くなった。もちろ
ん彼女たちが出ている時に限るのだが。
 そしてまるで自分の代わりとでも言うように、雪歩が真剣な表情でテレビに映る貴音の姿に注目していた。

 ――あなたが来た! 待ち伏せするの
 ――でもやっぱりサッパリ 目合わない
 ――ドキドキした ハートがしぼむ
 ――もう シュン ねぇ bad bad you!

「……四条さん、少し雰囲気が変わりましたよね?」
「ん? あぁ、そうだな」

 世間からの評価もそんなものだった。765プロとのコラボによって歌う楽曲の幅が広がったことが主な要因で
はないかと言われているが、なんとなくそれだけではないように思えた。

 ――雲の陰から 応援してる
 ――早く見つけてよ王子様
 ――そのときをまってる

 ちらりと見ただけでも、その歌う姿から発せられるもの……オーラとでも呼べばいいのだろうか?
 ともかくそれが以前まで感じられていた険のようなものが抜け落ちていたように思える。
 昨夜と似たような感覚。だが彼女はそれをただ良しとは思っていなかったようだが。

――ねぇ いいかな もっと笑顔送ってみて
――そうよ 指の先まで 真っ赤になるわ
――あなたが好き!

 だが、少なくとも自分は今の貴音の方が好きになれそうな気がした。
 物腰穏やかに礼儀正しく、どこか少し変わっていて可愛げのある今の貴音の方が。

「……何考えてるんだか」
「え? 何か言いましたか?」
「いや、なんでもない」

 ――胸の奥が苦しくって ええ もう!
 ――花になりたーい もっと
 ――鮮やかなカラー

 ……歌い終わると共に拍手が沸き上がり、司会が貴音に語りかける。先ほどまでの歌とはがらりと印象が変わ
り、いつもの古風で上品さを感じさせる貴音に戻っていた。

「はぁ……やっぱりすごいなぁ四条さん。私も、あんな風に凛々しくてかっこいい人になれるかなぁ」

 その言葉に、作業していた手が止まった。

「え? な、なんでシンさん笑ってるんですか?」
「い、いや! なんでもない」

 脳裏に浮かんだのは、昨夜幸せそうにラーメンを食べる貴音の姿だった。

 ――今までも似たようなことがあったけど、この仕事ってみんなのいろんな顔が見れるよな。

 ならば、いつかは彼女の言う『使命』というものを知ることができるのだろうか?
 そんなことを考えながら、また満月の夜にはあの場所へ行こうと心に決めていた。

「うぅ、やっぱり私なんかが四条さんみたいになれるわけないですよね……穴に埋まって反省してますぅ」
「え? あ、違うって! 笑ったのはそういうことじゃな……雪歩!? 出て来い雪歩ーーー!!」


 ……一度目だけなら偶然だが、二度以上起こったならそれは必然である。
 その原因が『彼』にしろ『彼女』にしろ、
 また次の満月の夜に二人は出会うのだろう。
 きっとまた、出会うのだろう。


P 「ユカタメイド……それは浴衣とメイド服を組み合わせた、まったく新し衣装!」
小鳥「すごい! どちらか片方だけの2倍、いや10倍の破壊力があるわ!」
二人「「萌え的な意味で!」」
シン「馬鹿やってないで二人とも雪歩引き上げるの手伝ってください!」


2


シン「へぇ、ライトノベルのコラボか」
貴音「はい。聞くところによりますと、あにめで使われたという曲を私たちが歌うようです」
響 「それに合わせて自分たちがその作品に出てくるキャラクターの服を着て宣伝するんだぞ。これ、コスプレっていうんだよな! 自分知ってるぞ!」
シン「なるほど、それで貴音たちは学生服を着てるのか」
貴音「そういうことです。恥ずかしながら、学び舎の服というものを初めて着たもので、少々気分が高ぶっているようです」
シン「はは、珍しいな」
美希「貴音たちはけっこう普通だね。ミキははじめてメガネなんてかけたからちょっとつかれたの。あふぅ」
シン「……っていうか、その耳はなんだよ?」
美希「知らないの? ネコミミだよ」
シン「それは知ってる。なんでそれを付けてるかを聞いてるんだ」
美希「ミキのキャラはねー、ネコさんで何でも知ってるけど知ってることしか知らない人なの」
シン「説明が端的すぎてさっぱり意味がわからない!?」

 ――ガチャリ。

伊織「アンタたちまだここにいたの。もうすぐ撮影が始まるわよ」
やよい「みんなを呼んでくるようにって頼まれましたー!」
シン「あれ? 二人は制服じゃないんだな」
伊織「年齢が離れてるからよ。マネージャーなら少しは知っておきなさいよね」
貴音「水瀬伊織、もう着替え終わっていたのですか。見えないところもこだわるというプロデューサー殿の指示で渡されたすくーるみずぎとやらを睨んでいたようだったので、もう少し時間がかかるものだと……」
伊織「ああああアンタは何余計なこと言ってるのよ!?」
シン(なんだ、いつものプロデューサーの病気か)
響 「やよいの服もかわいいな! いつもよりすっごく元気そうだし」
やよい「はい! 本はむずかしかったんですけど、かわりにアニメを見ていっぱいいーっぱい勉強して今日がずーっと楽しみだったんです!」
シン「だから元気があり余ってるってことか。やよいのはどんなキャラなんだ?」

やよい「――話しかけないでください。あなたのことが嫌いです」

シン「…………」
やよい「っていうセリフが有名な子みたいなんですけど……あれ? シンさん?」

 ――ざぁぁぁ……

響 「うわっ、崩れた!?」
貴音「なんと!? あなた様は砂に変化することができるのですか!」
美希「なんか昔見たライダーでこんなの見たことがあるの。ごーごーごーだっけ?」
シン「やよいに嫌われたやよいに嫌われたやよいに嫌われたやよいに嫌われたやよいに嫌われたやよいに嫌われたやよいに嫌われたやよいに嫌われたやよいに嫌われたやよいに嫌われたやよいに嫌われたやよいに嫌われたやよいに(ry」
やよい「ち、違うんです! そういうセリフがあったって言いたかっただけで……あああああしっかりしてくださいー!」

 灰のように崩れ去っていくシンの姿を見ながら、「あぁ、そりゃ砂にもなるわ」とちょっとだけ心の中で同情する伊織だった。

数分後、やよいの必死の呼びかけによりなんとかシンは一命を取り留めた。


貴音「では、私はあなた様の口の中にホッチキスを」
響 「じゃあ自分はカッパ着て腹を蹴り破るとこからだな!」
美希「ミキは……白くなっていろいろ絞り取る?」
シン「お前らなんでそんなに俺を殺しにかかろうとする!?」

 いったいこの作品の主人公はどんな日々を送ってるんだとシンは頭を抱えた。

貴音「水瀬伊織は……ぶるまぁだけを穿いて身体を見せるのでしょうか?」
伊織「なっ!? なんで私がそんなことしなきゃいけないのよ! この変態! ド変態! エクストリーム変態!」
シン「ちょっ!?(ドガッ!)なんでっ!?(バキッ)俺っ!?(グシャッ!)」

 なんにしても、その主人公とはいろいろと気が合いそうだ、と思うシンだった。

3


シン「社長、俺に話ってなんですか?」
高木「うむ……実は今度また新しいコラボレーションの企画が立ち上がってな」
シン「コラボレーション? 今度は何をするんですか?」
高木「こちらのアイドルたちが歌う曲を何曲かと、衣装を提供する予定だ。とりあえずは、ではあるが」
シン「はぁ」
高木「まぁそれはまだ少し先の話になるんだが、その縁で向こうから依頼が来たのだよ」
シン「依頼?」
高木「そう複雑なものではないんだが、企画が本格化する前に互いの連携を密にしようという提案が出された
わけだ」
シン「その相手側は何をしているところなんですか?」
高木「こちらとそう対して変わりはないよ。アイドルを育て、ステージで歌やダンスを披露させるという意味ではね」
シン(向こうもアイドルか……)
高木「しばらくはプロデューサー一人でもわが765プロは活動はできるし、この企画はこちらとしても是非成功
   してもらいたい。そこで君に行ってもらいたいと思ったのだよ」
シン「俺に、ですか」
高木「期間もそう長くはないし、いい経験になると思う。どうだね? 引き受けてはくれないだろうか」
シン「……まぁ、そういうことならやってみますけど」
高木「おぉ! そうかね! 私としても助かるよ」
シン「それで、何をすればいいんですか?」
高木「聞いている限りだと、簡単なサポート要員だそうだ。私も期待しているよ」
シン「…………」
ミク「…………」
シン「えー、と」
ミク「はじめまして、初音ミクです」
シン「あー、うん。俺、シン・アスカ」
ミク「シン・アスカさんですね」
シン「うん……悪いけどちょっと待ってて」
ミク「? はい」

 ――ピッ。

高木『私だ』
シン「どういうことですか社長!?」
高木『き、君かね。どうかな調子は?』
シン「調子も何も! なんですかここっていうかこの部屋は!? なんで女の子と二人っきり!?」
高木『う、うむ。私も君を送り出してから知ったのだが、サポートというのは彼女の生活という意味だったらしい』
シン「俺にどうしろと!?」
高木『彼女の歌の調律が主な仕事で、あとは適度にストレスを与えないよう世話をすると聞いてるな』
シン「聞いてないですよ!」
高木『だから私も後で知ったと……あぁ、何かな音無君? む、わかった。すまないがシン君、急用が入ったから私はこれで』
シン「ちょっ!? 社長!?」

 ――ブツッ! ツー、ツー、ツー……

シン「に、逃げられた……」
ミク「……あの、」
シン「な、何?」
ミク「よろしく、お願いします」
シン「……あぁ、うん」

 ――シン・アスカ、2ヶ月間の監禁……もとい拘束決定。
千早「…………」

 >そして如月千早さんの衣装をルカさま用に用意します! もちろんサイズ調整しますよw(週刊ディーヴァステーションより)

千早「くっ!」

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最終更新:2010年08月10日 00:50
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