ティアナたちの勝利によってなのはは戦線離脱していったが、それも過激派からみればどうということはなかった。
なのはクラスの実力者ならまだまだ幾らでも存在している。
なにより・・・・。
モブ1「最終防衛ライン突破されました! 敵がここへ着ます!」
穏健派の敗北は時間の問題となっていたからだ。
はやて編4話『欲望と裏切り、そして妄想・・・』
クロノ「万事休す・・・か。お前達は風船を割って離脱しろ。」
モブ「総司令はどうなさるおつもりですか」
クロノ「・・・・あれを使う。通信を全領域に開いてくれ」
とうとう過激派の主だったメンバーが中央司令室(という名前のテント)にたどり着いた。
その目はもはや自分がメインヒロインだといわんばかりに輝いている。
クロノは思う。自分の娘にはきちんとした恋愛というものを今から教えておこうと。
そのためにもここから生きて帰らなければ・・・。
クロノ「待っていたよ。ここまで来てもらったんだ。いまさら逃げも隠れもしない」
ライズ「いい度胸ね。なら、降伏して私達に装置を渡しなさい!」
アティ「今ならまだ気の迷いだったですみますよ。さあさあ、装置を早く!」
クロノはあまりの威圧感にドン引きしながらも
クロノ「そうはいかない。悪いがこの勝負勝たせてもらうよ」
そういって、最後の足掻きとばかりにマイクを握る。
アティ「・・・・・歌で懐柔されるのは異性人だけですよ? それも特定のですけど」
クロノ「その余裕もここまでだ。シンに借りたゲームの力を今こそ開放する!」
クロノ『聞け! 全ての過激派よ』
ルルーシュ「これは全領域通信!」
マイクを通じて全ての戦場にクロノの音声が流れていく。
突然の放送に多くの者は武器を片手に耳を傾けていた。
クロノ「この戦いは我々の負けだ。俺達にはもはやシンを守る力は残されていない」
クロノ「だが、我々が敗れたからといって、お前達がシンを手に入れられるわけではない」
クロノ「次元システムを手に入れたとしても、一度にいけるのは一人が限界だ。
恐らく、その枠を狙って君達の争いは活発化するだろう」
クロノ「そして、お互いの実力の差が互いの憎しみをあおる」
クロノ「穏健派の秩序は失われ、いつどこから攻撃されるかわからなくなる
例え、仲間であろうが、いつ敵になってもおかしくない」
クロノ「それどころか、同じ世界の仲間同士が潰しあう時代が訪れるだろう。今のお前達のように!」
クロノ「昨日までの隣人が、戦友が、家族が! お前に銃を向けるかもしれない」
はやて「黙れ、クロノ!」
はやてが自軍の通信装置で反論するが、それもあまり意味を成さなかった。
クロノ「お前を恨んでいる人間はいないか? お前を馬鹿にしている人間はいないか?
お前は本当に誰かに必要とされているのか?
お前を倒してヒロインになりたいと思っている人間は本当に誰もいないのか?」
クロノ「私の部下がお前達の中にも紛れているぞ。シンを傷つけるお前達を倒すために」
はやて「嘘や! 騙されるんやない!」
はやての声は届かない。クロノの演説は次々と人の心を蝕んでいく。
アティ「蹴落とされる・・・なら、蹴落とされる前に・・・」
ライズ「おい! しっかりしろ! あいつの声を聞くんじゃない!」
クロノ「お前達の敵は、お前達のすぐ隣にいる! お前か?・・・いや、お前だったか?」
クロノ「過激派は、無数の信管を突き刺した巨大な爆薬のようなものだ」
クロノ「その連携はたやすく壊れてしまう。たった一発の砲撃で。・・・いや、立った一発の銃弾で!」
クロノ「さぁ、お前達の本当に倒すべき相手は誰だ。今こそそいつに銃を放て!!!」
「「「「「「 うわああああああ!!! 」」」」」」
360度全部敵と思い込んだ過激派は同士討ち(?)を始め瞬く間に崩壊していった。
あちらこちらに反乱の火の手が上がり、もはや指揮官の支持を聞くものなど誰も居ない。
というか、指揮官同士ですら争っている。
??「ほ、ほんとに撃ってきやがったですぅ!」
??「くそ、誰が敵なんだ!」
元々、過激派は穏健派に勝つまではと集まった連中だ。
自分達の勝利がほぼ決定した今、虎視眈々と装置の奪取を狙っていた輩は決して少なくない。
そんな場面で放たれたクロノの言葉は、アスランの髪より弱い過激派の結束を粉々にしてしまった。
さきほどまで味方だった人が掌を返したように敵になるのだ。まさに地獄絵図である。
クロノ「・・・・まさか、こうも簡単に崩れるとは・・・」
この隙をついて逃げ出すクロノ。
自らの生み出した戦いの結末に、穏健派は恐怖した。
シン「あ、クロノ提督。これやってみませんか?」
クロノ「これは・・・ゲーム機?」
シン「いつも(彼女達の件で)お世話になってますからお礼代わりです。
ほんとは、デス子が懸賞で当てたけど、やる人がいなかっただけですけど・・・」
クロノ「なるほど、そういうことならありがたく貰っておくよ」
あのときのやり取りがなければ、確実に穏健派は負けていた。
見方を変えればシンの力によって、過激派は穏健派に敗れたことになる。
まさに、因果応報である。
クロノ(・・・これは帰ってきたらシンに酒でも奢っておかないとな)
中に入っていたソフトがなんだったのかは、恐らくわかる人にしかわかるまい。
崩壊していく過激派を尻目に、総大将であるはやては未だに余裕の表情を崩していなかった。
YAGAMI「まさか、こんなせこい手で来るなんて。まあええわ、はなッからあんな連中あてにはしとらんかったし、
こうなったら私らの広域魔法で一気に殲滅するで!リイン」
はやては、この混乱を逆に利用し、自らの手で装置を奪取しようとしていたのである。
それだけの力が自分にはあると、彼女は自負していた。
普通に考えれば、魔法の詠唱時間が長すぎる彼女はタイマンには不利だ。
だが、この世界ではもう一つの特殊技能『メインヒロイン補正』がある(と、本人は思っている)
一番最初にシンを愛した女である自分が、そこらの女どもに負けるはずがないのだ。
(注:最初は恐らくマユかステラです)
だが、はやての目論見はあっけなく外れることになった。
リインⅡ「・・・・おことわりです、はやてちゃん。」
はやて「な、なんやて! 何のつもりや、リイン!」
リインⅡ「聞こえなかったのですか? もうあなたにあごでこき使われるのはごめんだって言ったのですよ!」
信頼していたリインフォースⅡの反逆。
運命の女神ははやての手を離れ、ここから彼女は大きく道を踏み外していく。
はやて「・・・・冗談で済ませる内に戻ってきたほうがええ。敵になるなら容赦はせんで!」
リインⅡ「容赦しない? 詠唱時間の長さから単騎ではキャロにすら劣るあなたが、
このリインに勝てるとでも思ってるですか?」
はやて「・・・・目的はなんや! やっぱりシンか! シンやな!」
リインⅡ「一緒にしないでください! リインの目的は起動六課です!」
はやて「???」
リインⅡ「数々の不祥事から、クロノ提督は起動六課の隊長をはやてちゃんから
リインに替えてくれるといったのですよ。
いつもいつも物事が自分の思いどおりに行くと思ったら大間違いです!」
はやて「な、なんやて~!? あの黒いの絶対に許さん!!」
??「ざ~んねん、ここまでだったみたいね」
はやて「・・・・朝倉、あんたも裏切るんか!」
ここで、更に登場する予想外の人物。
参謀長であった朝倉涼子が裏切ったのだ。
ヤンデレの代表格であり過激派に真っ先に組した彼女まで裏切るなど、完全に想定外である。
朝倉「裏切る? 気付いてなかったのかしら。私は元々穏健派だったの。あなたを殺せばシン君が悲しむし、おとなしく捕まってくれるとありがたいんだけど?」
たとえ抵抗したとしても相手は二人。それも、彼女は詠唱のタイムラグがでかすぎて一対一はお門違い。
追い詰められたはやては何もできずに降伏するはずだった。
しかし、相手はあの『八神 はやて』である。
このあと、過激派筆頭は伊達ではないことを二人は身を持って知ることになるのだった。
はやて「く、こうなったら最後の手段や。幾多のYAGAMIよ、わが身に集え!
セッートアッーープ!!!」
リインⅡ「・・・・・・」
朝倉「・・・・・・・」
しかし何も起こらなかった(現実では)
彼女の頭の中では本編にすら登場しなかった壮大な変身シーンが流れているのだろうが、
傍目から見ると、何も起こっていないのにはやてが一人で踊っているようにしか見えない。
誰にも見せたくない、誰も見たくない極めて壮絶な光景だ。
残念ながら、この醜態を文章に書き表すことははばかられる。各員脳内で補ってもらえればありがたい。
朝倉「・・・・・・妄想大爆発ね」
リインⅡ「はやてちゃん・・・酸素欠乏症にかかって」
はやて「ふふふ、魔法少女ファイナルゴットYAGAMI、今ここに爆誕!!!」
たぶん、しめの大爆発がバックで巻き起こり変身が終了したのだろう。
誰にもわからなかったが・・・・。
はやての攻撃力が上がった。防御力が上がった。すばやさが上がった。詠唱速度が三分の一になった。魔力が二倍になった。
シンからの『愛情』が100万パワーになった。
はやて「これで戦闘力は五倍! かくごしい、リイン、朝倉!」
あえて付け加えるが、これももちろん彼女の脳内テロップにすぎない。
リインⅡ「・・・いや無理です、妄想乙」
朝倉「・・・妄想もいい加減にしなさい・・・「ラグナロク ブレイカー!!」って本当に強くなってる!」
何とか回避したものの、朝倉涼子が情報操作しテリトリーとしていたはずの本拠地の壁には20mほどの巨大な大穴があいていた。
さらにその先にはこれまた巨大なクレーターが出来上がっている。
しゃれにならない威力である。本当に非殺傷かと疑いたくなるほどだ。
リインⅡ「じ、自己催眠! 妄想の力恐るべしです! 」
はやて「 これが、シンとの 愛 の 力 や! 」
朝倉・リインⅡ「「 絶対に違う!!! 」」
数分後、リインⅡと朝倉涼子を振り切ったはやてが戦場へ乱入。
暴走した彼女は穏健派、過激派の双方に甚大な被害をたらすのだった。
そして、終わりの見えない戦いはついに最終局面へ
おまけ
ストームレイダー「蒼きJF-704式 トランスフォーム 」
ALICE「ガウォークモード SET UP」
ヴァイス「はっはっは、見たか! 管理局脅威の科学力を!」
スバル「イエーイ♪ 管理局の技術は世界一イイイイイイ!!!」
ティアナ「・・・・もういやOTZ」
はやてが敵味方無差別に暴走している頃、この戦いの裏に何者かの意思が絡んでいることを察知したユーノは、
真相を確かめるために単身探りを入れていた。
はやて率いる過激派の壊滅と復活、はやてのクラウディアの強奪事件、多次元の実力者の集結、
天才科学者の集合と時間跳躍システムの完成。
幾ら彼女が優秀でも一ヶ月あまりでこれだけの事件を、しかも一人で成し遂げられるものだろうか?
なにより、彼女は良くも悪くも真正面からの強攻策を好む傾向がある。
(もちろんシンが絡んだ場合のみです)
両者の戦いの原因となった手紙やテレビ局の呼び出しは、はやてのこれまで使っていた手とは明らかに異なっていた。
これらの事柄によってユーノは確信した。
この事件には、過激派と穏健派の両者を戦わせ漁夫の利を得ようとしている黒幕がいると!
証拠を掴んでそいつらを白日の下に晒せば、かならずやこのスレで自分の出番が増えると!
もちろん、そんなことをしても出番が増えるとは限らないし、こんなことをしている間に
クロノが事態を終息させてしまうかもしれない。
第三者から見れば、こんな儚い希望に賭けるなど馬鹿馬鹿しいと言われるだろう。
なにより彼はサブキャラである。
『目立つ=死』の法則が当てはまる立場にいるのだ。
永遠に出番の来ないことになる可能性も十分にありえた。
それでも、彼は死亡フラグ上等の覚悟で事件の真相に挑んでいった。
セミレギュラーなんて望んでいない。ただ・・・もう少し・・・もう少しだけ欲しい。
出番を手に入れたい・・・せめて空気と呼ばれるほどに・・・。
脚光を浴びたい・・・・せめて忘れ去られない程度に・・・。
ユーノ「僕だって空気なのに・・・・なんで名前が一度も出てこないんだよぉ~~~!!!」
これまで空気すら超越する霞のような扱いを受けてきた彼の、まさに魂からの叫びであった。
さて、寄り道はここまでにして本編に戻るとしよう。
行動を開始した彼が一番最初に疑ったのは元次元犯罪者であるスカリエッティだった。
というか、過激派と穏健派両方に近付くことができ、なおかつ混乱を望む奴など彼ぐらいしか思いつかなかったというのが正しい。
なにより、この手の騒ぎには真っ先に彼が関わってくるはずなのに、今回は時空跳躍システムを手がけて以来一切の音沙汰がない。
戦闘データを得る絶好の機会だというのに、ナンバーズが一人も出てこないこともユーノの疑惑に確信を持たせる結果となった。
ユーノ「待っててくれ、クロノ、アルフ、みんな。僕は必ず手柄を立てて出番を手に入れて見せる。もう誰にも淫獣なんて言わせないよ」
クロノ達に過激派の対応を任せ、一人でスカリエッティのアジトに潜入するユーノ。
もう一度言うが、彼はあくまでサブキャラである。
そうやって格好をつけた結果は、ここに記すまでもないだろう。
ユーノ「出番を手に入れてしまえば・・・・こっちのものだぁ!!」
もしも、あえて一行で説明するならば・・・。
突入して数分後には、フェレットの簀巻きが一つ廊下に転がっていた、とだけ言っておこう。
はやて編 第五話「終焉は彼方に消えて・・・」
ユーノ「うう・・・ここは・・・」
ヴィヴィオ「あ、もう起きたの?」
目を覚ましたユーノの耳に、聞いたことのある声が届く。
驚いて体を起こそうとするが、足を縛られているためもんどりうって倒れてしまった。
よくみれば、腕も足もロープでがんじがらめだ。
ヴィヴィオ「ひさしぶりだね、ユーノさん♪ それともフェレットさん?」
縛られた彼に声をかけたのは、シンの義理の娘(?)であり、安全のため聖王教会に預けられたはずのヴィヴィオであった。
ユーノ「・・・そんな、どうして君がここに・・・!」
なんとか抜け出そうともがくものの、この(フェレット)姿ではどうしようもない。
魔法を使おうともしたのだが、この部屋全体にAMSが掛かっているらしく、魔力素を集めてもうまく連結してくれなかった。
(変身魔法も消えるって? そこはまあご愛嬌で)
ユーノ「・・・それにしても、ここはどこなんだ?」
ヴィヴィオがいるということは聖王教会だろうか?
しかし、それにしては物々しすぎる。
彼らのいる部屋はコンピューターやらモニターやらが所狭しと並べられており、
ピアノの鍵盤のようなキーボードや中身のないカプセル群が部屋の不気味さを増長している。
まさに『これぞ悪の組織!』といった内装だ。
造った人間の趣味がありありと見て取れる。教会というより研究所のような・・・。
ユーノ「研究所!? そうだ、僕はスカリエッティのアジトに進入しようとしてここまで連れてこられたんだ!
ヴィヴィオ、もしかして君も奴に攫われて・・・」
だとすれば、一旦脱出は諦めてヴィヴィオを保護を最優先にしなければならない。
出番が欲しいと言って人の道を外れたら・・・もっと出番がなくなる。
一期でエロに走ったため二期でスタッフにハブられた経験は伊達ではないのだ。
スカリ「楽しんでもらえているかね?」
扉の一つが白い煙を上げながら音を立てて開き、一人の男が部屋に入ってきた。
ユーノ「スカリエッティ! やはりあなただったのか!」
いつものよれよれではなくきっちりとアイロンをかけた白衣をはためかせ、颯爽と登場するスカリエッティ。
さすがに元悪の科学者だけ合ってマッドサイエンティストの姿が板についている。
久々の出番に気合十分といった感じだ。
ご機嫌に、悪っぽいテーマソングまで流しているのは完全に蛇足だったが・・・。
(有名なダースベ○ダーの曲だけに選曲は悪くなかったが、後ろでラジカセを持って立っているウーノが
雰囲気をぶち壊しにしていた)
ユーノ「こんなことをして・・・・一体何が目的なんだ!」
粋がってはみるものの、縛られて床に転がされていては文字通り手も足も出ないユーノ。
おまけに格好がフェレットなのだから、どれだけ頑張っても笑い話にしかならない。
スカリ「勘違いしてもらっちゃ困るねぇ。私はただ依頼を遂行したに過ぎないのだから」
ユーノ「依頼? 一体誰から・・・あ、駄目だ、ヴィヴィオ!」
その質問にユーノが答える前に、ヴィヴィオがスカリエッティの元へ駆け出してしまった。
急いで止めようとするが、所詮はまな板の上のフェレット。
縄を抜けられないまま、ヴィヴィオはスカリエッティの傍までたどり着いてしまった。
いつもながら、肝心な時にも役に立たない男だ。
ユーノ 「早くそいつから離れるんだ、ヴィヴィオ! そいつは君のママを裏で戦わせてた張本人なんだ!」
ヴィヴィオ「あれ? まだ気付かないんだ?」
スカリ 「くっくっく、君もつくづくかませ犬だね。いや、この場合はかませフェレットかな。こんな初歩的な推理もできないのかい?」
ユーノ 「なん・・・だって?」
スカリエッティは今にも笑い出しそうになるのを懸命に堪えている様子だ。
それもそうだろう。真相を知っているものからみれば、ユーノの言動は余りにも的外れだったのだから。
そう、どれほど難解そうに見えても、真実とは知っている者から見ればしごく単純なものだ。
スカリ「考えても見たまえよ。どちらの陣営にもたやすく接近でき、どちらの人間からも警戒心をもたれない。
誰からも疑われず、誰よりシンを慕っている人間。いるじゃないか?その条件に当てはまる人物が今まさに君の目の前に!」
ユーノ「まさか・・・事の全てを裏で操っていたのは・・・」
ユーノの言葉を合図にヴィヴィオの体から光が漏れ出す。
部屋一面に広がった光が収まると、ヴィヴィオの姿はなのはと同じワンテールの女性に成長していた。
もちろん、レリックなど使っていない。
レリック無しで自由自在に大人モードと幼女モードを使いこなせるようになったのはひとえに、シンへの愛の努力の証である。
(『ご都合主義』的設定なので詳細は省略)
ユーノ「・・・・・・」
ヴィヴィオ「ふふふ、驚きすぎて声も出ないみたいだね。そ・れ・と、おしゃべりが過ぎるんじゃないの、スカリエッティ?」
スカリ「すまないね。どうしても彼の驚いた表情を見たいという欲求を抑えられなかったんだよ」
ヴィヴィオ「まぁ、いいよ。今日は記念すべき日なんだし」
愛くるしい姿をした幼女のヴィヴィオと、大人の姿になってしまったヴィヴィオが結びつかず、ユーノは呆然と二人を見上げていた。
ユーノ「・・・・・・どうして」
ようやく口に出せた言葉がそれだけだったというのも情けない話だが、
今度ばかりは仕方がない。
なにせ、スカリエッティが犯人だと思っていたらヴィヴィオがいきなり現れて自分が真犯人だと言い出したのだ。
おまけに十秒チャージもびっくりのスピードで大人になったのだから、超展開にも程がある。
ヴィヴィオ「だって私がなりたいのはシンパパの娘だけじゃなくてお嫁さんだもん
一生懸命考えたんだよ。なのはママから、どうしても欲しい物が有るなら全力で手に入れなさいって言われたから」
このとき、ユーノは確信した。
ああ、間違いなくこの娘はなのはの娘だ、と。
そして、後悔した。
この娘を機動六課に預けておいたのは失敗だった、と。
あのとき、無理にでもエイミィのところへ預けておけばこんなことにはならなかったのかもしれない。
やはり、機動六課は情操教育には最悪に不向きな場所だったのだ。
はやての頭の切れとフェイトの立ち回りの旨さ、そしてなのはの強引さと、
三人の長所(短所?)を見事に受け継いでしまっている。
ヴィヴィオ「前回の戦いが終わった後も、八神はやて部隊長は不満そうだった。だから過激派を動かすのはそれほど難しくなかったの。
でも、急がないとシンパパが帰ってきちゃうかもしれない。そんなことになったら、せっかく考えた計画が全部水の泡。
だから、刑事ドラマで見た通りに、貰った絵本を切り貼りして手紙を作ったの。戦いを早めに終わらせるために。
足がつかないように何人かに仲介させて渡したから、誰も気付かなかったでしょ?」
スカリ「最初に相談を持ちかけられたときは驚いたよ。だが、すぐに思い直した。
だってそうだろう。こんなチャンスは滅多にないのだから!」
ユーノ「・・・・そんな! 全ては最初から仕組まれてたっていうのか!」
スカリ「ああ、先に言っておくけどこの件に関して私は全く手を触れてないよ。すべて彼女が計画したものだ」
まさに『 冥 王 三 世 ! 』
ユーノはシンが帰ってきた時の事を思い、頭を抱えたくなった。
(縛られているので不可能だが)
このことを彼にどう説明しろというのだ!?
あなたの十歳にも満たない娘さんはあなたを欲するあまり戦争を起こしました?
はやて部隊長達はそれに乗せられて、すさまじい地獄絵図を生み出しています?
言 え る は ず が な い !
このことを知れば、例えどれほどできた人間でも精神に異常をきたして黄色い救急車のお世話になる事間違いなし。
実際、ユーノだってこのまま眠って、夢オチでまとめようかと真剣に考えていたほどだ。
女難に慣れているはずのシンでさえ、この現状は受け止めきれないかもしれない。
よりにもよって、機動六課で唯一の癒しどころであるヴィヴィオがこうなってしまったと知れば、
シンの精神状態は種死最終話まで逆戻りするんじゃないだろうか。
今なら、知らないことが幸せだというものひとつの真理だとユーノは素直に納得できる気がした。
と、ここでひとつの疑問が浮かび上がってきた。
ユーノ「ヴィヴィオ、君の動機はわかった。でもスカリエッティ、あなたがヴィヴィオに協力してるのはどうしてなんです?」
スカリ「これは楽しくなりそうだ、というのもあるが一番の理由は金だよ。
はっきり言って最近お金がなくなってきてね。前のクライアントとは手を切ってるし、この大所帯の食費や研究費、
施設の維持費には莫大な資金が要る。スカリエッティ研究所の台所は火の車なのさ」
ユーノ「いや、そもそもスカリエッティへの資金はいったいどこから・・・?」
この問いに答えたのはヴィヴィオだった。
ヴィヴィオ「知ってる? 最近のテレビ局って羽振りがいいんだよ。なにかと話題に尽きない起動六課だから、
情報と引き換えにするって言ったら、こちらが提示してくれた金額をぱっと出してくれたの」
ユーノは戦慄した。
ユーノ「まさか、テレビ局に情報をリークしたのは・・・」
ヴィヴィオ「そう、それもわ・た・し♡」
ヴィヴィオ「私の目的は、過激派と穏健派が共倒れになる以外にもう一つあるの。
それはテレビ局が、彼女達の醜く争い合う姿を記録に残すこと。
そうすれば、帰ってきたシンパパはそれを見て彼女たちに幻滅する。
後は、私がそこに付け入るだけでいい。」
ユーノ「そ、そんな! シン君を手に入れるためにそこまでするなんて!」
信じがたい事実だ。ここまで綿密に計算されたシナリオを僅か六歳の子が独りで考え出したとは・・・。
ヴィヴィオ「大金も手に入って、シンパパの他の女性たちに対する評価もがた落ち。
私は大人の都合に巻き込まれた哀れなヒロイン役を演じればいいだけ。どう? 簡単でしょ?」
ユーノ(確かに完璧な計画だ・・・。どこにも隙が見つからない・・・)
スカリ「では、納得してもらったところで、そろそろ私達が残した最後の証拠を片付けるとしようか」
スカリエッティは一昔前の漫画に出てきたような奇天烈な形の機械を持ち出すと、
動けないユーノにまっすぐに発射口(?)を向けた。
ユーノ 「ま、まさか僕を消すつもりなのか?」
ヴィヴィオ「ううん、そんなことしたらシンパパが泣いちゃうから駄目だよ。
だから、ちょこっと記憶を弄って、このことを忘れてもらうの」
スカリ「な~に、たとえ思い出したとしてもその頃にはすべて終わっているさ。
(ボソッ)副作用でフェレットから戻れなくなるかもしれないが」
ユーノ「な、なな、なななななななななななんだってぇぇぇぇ!!!」
ヴィヴィオ「大丈夫♡ その時はなのはママがやったみたいにずっとペットとして飼ってあげるから」
ユーノ「(あ、そしたらまた幼女と一緒にお風呂に)って、一生は嫌だああああぁぁぁっ!!」
そのとき突然、ユーノの叫びに呼応したかのような大きな揺れが彼らを襲った。
ウーノ「皆さん! 伏せて!」
震度6クラスの大きな地震にも思えたが、初期微動がない地震などこの世には存在しないはずだ。
この場所が崩れることはないだろうが、予想だにしない出来事にユーノ達は焦りまくっている。
スカリ「・・・・・・始まってしまったか」
地面の揺れが収まったかと思うと、今度は周りの景色が次々と、まるでテレビの画面を揺らしているかのようにぶれ始めた。
ヴィヴィオ「これは一体・・・」
目の錯覚ではない。だんだん視界までが白くぼけてきている。
白い霧が周りを包んでいるのか、それとも白内障のように世界が白く見え始めているのかはわからなかったが、
とにかく異常事態であることは間違いない。
ユーノ「な、なにが、どうなって・・・!」
スカリ「ふむ、歴史の修正が始まったようだね。次に目を覚ましたとき私達が存在するのは、彼が消えている世界か、
それとも、リインフォースが救われた世界かのどちらかだろう。
もっとも、どちらにしろ我々は歴史の修正に巻き込まれることになるが」
体の感覚までなくなってきているというのに、スカリエッティはさも愉快そうにそう話した。
彼には最初から全てわかっていたのだ。
だからこそ、ヴィヴィオに手を貸し事態を動かした。
退屈を紛らわせるために。
自分が自分でなくなることの恐怖を払いのけるために・・・。
ユーノ「あ、あなたは最初からこのことを知っていたのか。それで・・・」
スカリ「折角無罪放免になったのに、いまさらBADENDに手を貸すつもりはないよ。
すまないが、今の私にとっては彼女達やお金より自分の娘たちの幸せのほうが大事でね。
・・・・・・・・といっても、もう聞こえてはいないか」
すでに周りには誰もいない。いや、正確に入るのかもしれないが、白い視界に阻まれ何も見えなくなっている。
スカリエッティはこれまで誰も見たことがないような真剣な面持ちで独り言を呟いた。
スカリ「・・・・間に合わなかったみたいだね、シン君。いや、まだ終わっていないか」
ウーノも、ユーノも、ヴィヴィオももはやどこにもいない。
五感が封じられ、自分の声すら聞こえてこない。
世界は完全な『無』に帰りつつある。
スカリ(誰一人抗うことのできない世界による修正。時間軸をさかのぼっての歴史の再構築。
それらの発端が滅びた魔道書の小さな願いと、たった一人の男の出会いとは・・・何ともこっけいな話だね)
全ての発端となった未来から、世界の修正は徐々に広がっていき、やがて過去にいるシンにたどり着く。
そうなれば、世界は歴史のゆがみの原因であるシンを消滅させ、歴史を元通りに作り直すだろう。
元通りの歴史・・・それは、シンが最初から存在しない世界。
そこでは今回のような苦しくもどこか楽しい馬鹿騒ぎではなく、真に血生臭い死に物狂いの戦いが待っているはずだ。
少なくとも、かつての自分ならその道を行くだろう。
あの頃のスカリエッティたちには、何の迷いもなかった。
欲望だけが自分のすべてと思い込み、世界を道ずれにしようとした自分を変えてくれたのは、誰でもないシン・アスカだ。
歴史にもしもはありえないが、もしも止めるものがいないままあのまま世界が進んでいったとすれば、恐らくその先にあるのは・・・・・・。
こうなってしまった以上、彼とこの時間軸の自分達が生き残る道は唯一つ。
消えてしまうはずの『リインフォース』を生き延びさせることだけだ。
リインフォースが生き残ることによって、はやての元に残された剣十字とシンの時空跳躍能力が共鳴することもなくなり、シンの過去への介入もなかったこととなる。
後に残る細々とした修正を我々の手で済ませれば全てうまくいく。
だがそれには、奇跡にも等しい数々の条件が揃わなくてはならない。
普通に考えれば実現はほぼ不可能に近い状況だが、可能性が全くないわけではなかった。
スカリ「そう、もしも『彼』がデスティニーの中に眠る『ロストロギア』を目覚めさせることが出来たなら
・・・どんな奇跡だろうと足元にすら及ばない。」
どうせ管理局や聖王教会にはユニゾンデバイス製造機としか伝わっていないのだろう。
だが、真実は違う。
かつて最強と謡われ世界を統治していた聖王が、そんな下らないガラクタを本気で量産させようとするはずがない。
『セイオウノツルギ』も元は聖王のゆりかごと同じ『アルハザードの遺産』。
天才と呼ばれたこの私でも、完全な解析は諦めたほどの代物なのだから・・・。
「さあ、シン君。私に見せてくれ!『セイオウノツルギ』の真の力を!!」
過激派も穏健派も、人間も人外も、この時間軸にいた存在の全ては飲み込まれていった。
再構築された世界に、シンが残っていられるかどうか。
それは、まだ誰にもわからない。
唯一つわかっているのは・・・。
まだ、何一つ終わっていないということだけだ。
はやて編 完
最終更新:2011年01月04日 12:34