なのはクロスの作品集-18


シン 「デス子、はやてのリンカーコアが完全に浸食されるまであとどれ位だ?」
デス子「ざっと、30分。誤差十五分といったところでしょうか」
シン 「ようやく、ここまできたんだ。終わらせるぞ!」
デス子「よし、やりますよ、マスター!」

シン・デス子 「「 ユニゾン イン!! 」」

『消えない現実とたどり着けない理想』
 デス子とユニゾンすることで、シンの体をデスティニーを基に構成されたバリアジャケットが包み込んでいく。
力を持つものの称号であるザフトの赤服を基調とし、両手にデスティニーの腕部分を籠手(こて)やグローブのように装着される。
折りたたまれた長距離ビーム砲とアロンダイトが背部に装着され、デスティニー象徴ともいえる赤い翼が光を放ちながら展開する。
最後に、両肩ではなく腕のパーツにフラッシュエッジが精製された。

魔力を持たないシンには、当然魔法は使えない。
それは、デス子とユニゾンした後でも大して変わっていない。
魔力を得ても、彼ができるのは魔力を圧縮し魔力弾や魔力刃を形成する基礎中の基礎ぐらいである。
理由はごく単純で、他人の魔力を流用しているため魔力変換効率が極めて低いのだ。
そのせいで、シンはどうしても魔法構成が複雑な補助魔法や多種多様な攻撃魔法が使用できなかった。
戦闘において単一の攻撃方法しか持たないのは圧倒的に不利。
ならば、攻撃方法を増やすことによって戦術の幅を広めようというのが、シンの行き着いた結論だった。
デス子『バリアジャケット展開確認 魔法兵装、カートリッジシステム共に問題なし。ユニゾン成功です』
シン 「先手必勝、行くぞ!」
シンは、両手と背中のアロンダイトに三基搭載されているカートリッジシステムの中で、
左手にある大口径カートリッジをロードすると、背中にマウントされた長距離ビーム砲を構えて、
闇の書の闇に向けて躊躇無く撃ち込んだ。
複合四層式バリアを張る前だったのか、そのまま魔力弾は闇の書の闇を直撃しその肉片を空間にばら撒いていく。

シン「やっぱり、この武装じゃ奴を貫くのは無理みたいだな」
かなりの魔力をこめただけに、その威力も絶大だったはずだが、
シンが次弾をチャージする頃にはすっかり再生されて傷跡すら残っていなかった。

デス子『では、計画通りにレリックで葬るとしましょう、マスター!』
シン「ああ、様子見なんてしてられない。一気に突っ込むぞ!」

それはまさに圧倒的だった。
弱者が強者をなぶるなどという甘いものではない。
砂場で遊ぶ子供が蟻を戯れで埋めてみる。
目の前のハエが邪魔だったから新聞を丸めて叩き潰す。
相手を殺すという認識さえ起こらないような無造作に命を刈り取る動作。
力の差が在る無いの問題ではない。
生物としてのランクそのものが全く異なるのだ。

奴に近付きレリックを爆破すれば全ては終わる。最初はそう考えていた。
だが・・・

デス子『威力:AA 発射速度:AA+ 誘導性能:D 弾速:S 完全回避はほぼ不可能。フルゴールを使用してください』

現実は甘くなかった。

シン「デアボリック・エミッション! また広域空間攻撃かよ!」
シンの目の前が闇の書の闇の作り出した暗黒の球体で埋め尽くされていく。
腕についたソリドゥス・フルゴール(盾の役割を果たすシールド型の防御デバイス)を急いで展開しようとするが、
背中に走った鋭い衝撃がそれを中断させた。
シン「・・・いぐぁっ!!」
デス子『後方からのプラズマランサーが三発命中。自動防壁の展開を確認。空間攻撃、来ます!』

無謀だと分かっていた。
作戦の成功率も僅かだった。
それでも、どこか楽観視していたかもしれない。
勝てるかもしれないと・・・。
シンとデスティニーならもしかしたらと・・・。
前と同じく奇跡が起こるかもしれないと・・・。

シン「この程度で・・・舐めるなぁっ!!!」
背部からの衝撃に体勢を崩しながらも、シンは迫り来る空間攻撃に対して必死にシールドを張る。
デアボリック・エミッションに呑まれながらも必死で持ちこたえようと粘るシン。

だが、受け流した一撃は次なる一撃への布石にすぎない。
なのはのAAA+の魔力でも闇の書は20ページ足らずしか埋まらなかった。
そう考えると防衛プログラムの想定魔力は幼少時のなのはのおよそ33倍。
前の戦いで半分は削られたとしても、未だに相手は、なのはの16倍もの膨大な魔力をもっているのだ。

デス子『バリアジャケットの構成魔力が残り81%に減少。敵はフォトンランサーのジェノサイドシフトの詠唱に入りました。
威力:AAA 発射速度:S 誘導性能:C 弾速:AA+ 合計弾数:12600発 回避は不可能です。
フルゴールを起動してください』
リンカーコアを一度蒐集されているなのはとフェイト。
元々闇の書の一部だったヴォルケンリッター。
そして、長い歴史の中で蒐集されてきた幾多の魔法が、シンに絶え間なく襲い掛かってくる。

シン「・・ぐぅう・・こっちはまだ・・・・デアボリック・エミッションを喰らってる最中なんだぞ!」
立て続けに迫る広域攻撃に焦りを募らせるシン。
このまま、攻撃を喰らい続ければいつかはシールドが破られ落とされてしまう。
だからといって、飛びながら撃つことしかできないシンには広域攻撃を防ぐ手立てはない。

デス子『フォトンランサージェノサイドシフト来ます! 続いて敵はスターライトブレイカーの詠唱にはいった模様。
威力:S+ 射程:B 発動速度:C 魔法ランク:S直撃すればガードの上からでも一撃で落とされます。
マスター、何とか回避を!』
シン 「ちくしょう、次から次へと。少しくらいは反撃させろ、灰色ザリガニ!」
シンの叫びもフォトンランサーの轟音の前に掻き消えた。
敵の戦闘力、攻撃方法の情報、自身との戦力差。
全ての予測が甘かった。
管制人格であるリインフォースですら、なのはとフェイトを二人まとめて圧倒するだけの能力を備えていたのだ。
まして、彼女たちが防衛プログラム(闇の書の闇)を倒せたのは、
本稼動していなかった防衛プログラムに対し、十名の精鋭の一斉攻撃とアルカンシェルがあったからに他ならない。
しかし、今のシンにはその全てが足りない。

シン「デス子、確率の計算はもういい! 敵の行動予測とバリアジャケットの被害だけ報告しろ!」
デス子『了解。敵はスターライトブレイカーexを5秒後に発射。
   その後、本体は先程と同じように魔力補給のため40秒の休眠状態にはいると思われます』
シン「何とかこの隙に近づければ・・・・」
デス子『マスター、周りの触手が援護砲撃を開始します! 触手の数は65、威力:A 発射速度:S- 誘導性能:C 弾速:A+』
シン「どけえええええ!」

魔法で簡単になぎ払えるはずの闇の書の闇の周りに生えている触手。
それすら、尋常ならぬ高速再生能力によって増殖し続け、殲滅しきる手段がない。

シン「撃っても撃ってもきりがない! これじゃ近づきようがないじゃないぞ!」
デス子『このままではジリ貧です。マスター、一度後退を!』
シン 「ここまで来て、退けっていうのか!?」
デス子『しかし、この弾幕の中でどうやってレリックを奴の近くまで運ぶんですか!』
シン「駄目だ! ここで奴に背を見せれば狙い撃ちされる!」
完全にその力を取り戻しつつある防衛プログラム。
無尽蔵に近い魔力で空間攻撃魔法を連発し、隙を突き死角に回り込もうとしても、同じく無限に生えてくる触手が絶えず魔力弾を放ち続ける。
遠距離からの砲撃は交互に魔力と物理の複合四層式バリアには通用しない。
いや、例え撃ち抜けたとしてもコアを破壊しない限り防衛プログラムは無限に再生するのだから、全くの無意味である。

 焦るシンを尻目に、絶望はさらに濃くなっていく。
デス子『あれはまさか・・・! マスター、ブラストカラミティの魔力反応です!!』
シン 「そんな、あれは合体魔法のはずだろ。一体どうやって!?」

ブラストカラミティとは、シンが述べている通りなのはとフェイトの中距離殲滅コンビネーションによる合体空間攻撃だ。
シンも過去に何度か喰らったことがある。
十年後にS+ランクとなったなのは達ですら、この魔法のチャージに相当な時間と手間を費やしていた。
それが目の前で意図も簡単に、出せるのが当然のように魔方陣が展開していく。

デス子『フェイト隊長を取り込んだときに、魔法の運用方法まで吸収していた?
    でも・・・そんなことが・・・・』
殺傷設定であれを喰らえば、どれだけガードを固めても骨まで瞬時に消滅する。
防衛プログラムの『力』の前に、勝機が全く見えないシン。
彼は今、フリーダムに対峙したとき以上の『死の恐怖』を感じていた。

デス子『この距離では回避が間に合いません。早くシールドを!!』
シン「こんなことで・・・こんなことで俺は!!」

 空間内の全てがなのはのディバインバスターとフェイトのスマッシャーでを満たされていく。
一呼吸置いた後、闇の書の闇はその全てをシンに向けて発射した。
膨大な数の魔砲がシンのシールドに突き刺さり、直後に巨大な爆炎が彼を包み込む。

闇の書の闇「・・・・・・・?」
煙が晴れたときには、シンの姿は跡形もなく消えていた。















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最終更新:2011年01月04日 12:14
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