「……何しに来たですか」
「つれないなぁ。いやなに、仕事のついでさ。そこまで追いかけてたんだけど見失ってね」
仕事、という目の前の少女にはとてもじゃないが似つかわしくない言葉に勝手にデスティニーの眉間に皺が
寄る。それを見て「あぁ」と呟き、ストライクフリーダムは持っていたバールを掲げた。
「ボランティアのノルマが足りなくてね。こうやって公道近くに出てきた魔物を追い払うことになったわけ」
「……なんでバール?」
「鈍器って響きからして最高じゃね?」
深く追及しても徒労に終わるのはコーラを飲んだらゲップが出るよりも確実であるのでのでさっさと特訓の続きをすることにした。
「そうですか、こっちも忙しいのでお互い自分のことだけに集中するのがいいと思うですよ」
「いやいや、それは確かなんだけどさぁ。やっぱどう考えても無駄じゃないかねぇそれって思ってね」
バールを担いで含みを持たせて笑うストライクフリーダムを肩越しに睨む。
デスティニーはその笑顔が嫌いだった。
「何が無駄なんですか」
「んー、口ではちょっと説明しづらいかな」
そう言うなりストライクフリーダムはデスティニーの傍らを通り過ぎる。
決して速いというわけではない、ごく普通の歩調。しかしあっさりと間合いの内に入られ、そして離れていっ
たことにデスティニーは愕然とした。
「さて、と」
足元にバールを突き刺し、ストライクフリーダムは目の前にそびえ立つ巨木の幹にそっと手を当てる。
何をするつもりなのか問いかけようとするデスティニーだったが、目を伏せ集中する少女に声をかけるのを
躊躇ってしまった。
互いに動かず語らずの状態で数秒の時が過ぎた。
そして、
「ふっ!」
静寂を切り裂く声と同時にストライクフリーダムの掌が幹に触れ、大気を震わせた。
巨木の中心に叩き込まれた衝撃はやがて全体へと浸透し、枝という枝を跳ねさせては大量の木の葉を散らす。
「Let’s轟ゥ!!」
腰を低く沈めたストライクフリーダムが翼を展開し、蒼い羽根を八方へと飛ばして光の翼を広げる。
直後、跳躍。
疾風を引き連れた蒼光の翼は大木の周囲を縦横無尽に駆け抜け、通り過ぎる度に舞い落ちる木の葉がデスティ
ニーの視界から消えていった。
やがて木の葉がすべてなくなり、デスティニーの前にストライクフリーダムが降り立った。
「よっと、ざっとこんなもんさね」
両手いっぱいに掴んだ木の葉を見せびらかすように掲げる。
ニッと笑うストライクフリーダムをデスティニーは憮然とした顔で睨みつけるしかなかった。
その二人の間に、ひらひらと一枚の葉が舞い落ちてきた。
「……い、一枚くらい取れてなくてもどーってこたぁねーですよ?」
「ものすごい動揺してますけど」
「そんなことないの! いつもどおりのクールでビューティなストフリさんだってーの!」
ブンブンと両手を振り回す少女から目を逸らし、デスティニーは溜息を漏らす。毎度のことながら何を考えて
いるのか、何をしたいのかさっぱり分からない。先ほどの木の葉の件にしてもそうだ。
「それを別にしても、インチキして取ったのだって何枚かあったじゃないですか」
「おろ? バレてたか」
悪びれもせずストライクフリーダムは背中の羽根をパタパタと動かす。
派手に動き回っていた影で地に落ちる寸前の葉をドラグーンが拾っていたのをデスティニーは見逃さなかっ
た。とはいえそれほど数は多くはなく、それを差し引いても取った枚数には大きな差があったのだが、それを
認めるのは癪なので考えないようにしてはいたが。
「ま、本当に言いたかったのはそれよ。やり方にこだわらなけりゃ十枚取ろうが百枚取ろうが大して変わりゃ
しない。それでもデス子っちより小回りにゃ自信はあるけどね」
そう言って、バッと両手に持った木の葉を放る。再び舞う葉の中で、互いに射るような眼で睨み合う。
だがその殺気立った気配は、すぐにストライクフリーダムが浮かべた苦笑で霧散した。
「そんな私が唯一負けてるかなーって思ってるものがある。はてさて、それはなんでしょう?」
「負け……?」
雰囲気の変化と意味の分からない問いかけにデスティニーは戸惑いの色を見せる。言葉の響きこそからかうよ
うなものがあったが、ただの戯言にしては目が真剣だった。
何かが、がむしゃらに進もうとして見失いかけていた何かが見えてきそうだった。
「さてさて、それじゃ言いたいことは全部言ったし私ゃお仕事に戻るとしますかね」
「…………」
「お仕事に戻るとしますかね」
「なんで2回」
「ニートが仕事というオーバースキルを手に入れると神にも挑める気分になる、らしい」
「さっきボランティアって」
「うむ、つまるところタダ働き。ふはは、ふははははははは! 消えたい」
あえて気付かないフリをしていたのか、がくりと手を地についてうな垂れる少女が一人。
そのなんともいたたまれない姿にデスティニーはなんでもいいから声をかけるべきなのかと思案したが、突如
ストライクフリーダムが起き上がり明後日の方向を向いたことで言葉を詰まらせた。
「な、何が……」
ストライクフリーダムと同じ方向へ視線を向ける。そこには変わらず雑木林が広がって……
いや、何かいる。
20mほど先だろうか、木の後ろからこちらを覗き見る二つの影があった。
見覚えがある、たしかオーガーという魔物だ。強靭な肉体と人語を解することができる知性を兼ね備えた種族。
デスティニー自身も幾度か戦ったこともあった。
それが何故こんなところに、あんな風に隠れるようにして……?
「みぃ~つぅ~けぇ~たぁ~」
傍らから唐突に表れた強烈な気配にデスティニーは背を震わせながら地の底から這い出るような声の発生源
を見やる。
そこには、獲物を見つけた肉食獣のように目を爛々と輝かせるストライクフリーダムがいた。
そういえばさっき追いかけてただの見失っただの言ってたような気もする。
「ひぃっ!? ば、バレちまっただ兄貴ぃ!」
「あ、慌てるでねぇ! とにかく逃げるべ!」
「むぅわ~てぇ~! 魔物がこんな人里近くに出てくるなどド許せぬ! この天下御免の超絶美少女が成敗してくれる!」
背を向け逃げ出す二匹のオーガーたちとの距離をストライクフリーダムは木々の合間を縫いながら一瞬にし
て縮めてしまった。すぐにでも抑えられるだろうにすぐ後ろにピタリと張り付くように追いすがるその姿を見て、
デスティニーは若干トラウマを掘り起こされて陰鬱な気分になった。
「うわぁっ! く、来るなぁ!」
「うふふ、待て~待てったら~。でないとこのバールが『あのね~今日のラッキーカラーはね~ドス黒い赤なん
だよ~☆』って呻くんだよぉ~」
「ど、ドス黒い!?」
「なんで鮮血って鮮やかな血って書くんだろうね。とス○ールデイズを見ながら思ったわけですこの私」
「ひぃっ、あ……悪魔!?」
「ありがとう、最高の褒め言葉だ。そんなわけでおとなしく私のハイマット爆裂強打の型を食らうがいい」
「「た、たすけてくれぇぇぇぇぇぇ……!」」
3人(?)の姿が見えなくなった後そんなモンスターたちの絶叫を聞き届けながら――何か殴打するような音
が聞こえた気もするがあえて聞こえなかったことにする――、デスティニーは天を見上げる。
風に揺れてさざめく梢の合間から、果てなき蒼が広がっていた。
「――おー」
黒い少女が右を見る。綺麗に整頓された本棚があった。
「――おー」
黒い少女が左を見る。綺麗に整頓された本棚があった。
『――おおー』
二人の少女が正面を見る。無限に立ち並んでいるような錯覚をしてしまうほどの数の本棚がそこにあった。
「……なんでお前らまで感心してるんだよ」
「えっと、実は図書館に来たことなくて」
「恥ずかしながら私もだ」
「アタシは」
「あるわけがないな」
「なんで断言できるんだよお前!?」
「何? まさか、あったのか!?」
「信じられないもの見たって顔すんじゃねぇよ! 悪かったなアタシもねぇよ!」
いつも通り喧嘩をし始めるブラストとソード、そしてそれをたしなめるフォース。
「貴方たち、図書館では静かにしなさい」
『はい……』
そしていつも通り視線の冷たい図書館のアルバイトに叱られる4人の姿があった。
いや自分たちのことなのだが。
「久しぶりねシンさん。あまりにも懐かしすぎて私が別の場所に来てしまったのかと勘違いしてしまいそうだったわ」
「相変わらず言うことがキツイな、イヴは」
「そうかしら? これでも多少言い方を抑えたつもりなのだけど」
「……あぁそう」
「明日は槍が降ってくるかもしれないわね。それとも竜巻かしら」
「抑えてるのか!? 抑えてそれなのか!?」
「冗談よ。それより今日は何をしに来たの? シェリルさんならまだ来てないのだけど」
無表情かつ淡々とした口調というサイクロンにジョーカーな抜群のコンビネーションで冗談と言われたとこ
ろで納得できるわけがないのだが、これ以上追及しても柳のように受け流されるだけなのは分かりきっていたこ
となので寛容な精神で抗議の意志を喉元で押し止めることにした。
別に悔しくなんかない。ないったらない。
「いや、俺が用っていうかコイツがさ」
と言いつつダークダガーの首根っこを掴んで持ち上げる。入る前はあれだけベラベラと喋っていたというのに、
今は気味が悪いほどおとなしく手足をだらんとさせながら「にゃー」とか鳴いていた。
「…………シンさん」
「なんだ?」
ダークダガーを上から下までざっと眺めたイヴは珍しくとても言いにくそうに視線を泳がせ、たっぷりと間を
置いてからようやく口を開いた。
「私はそういったことにこれといって偏見や差別を持っていないのだけれど、なんというか世間の風当たりが
強そうな相手というのはさすがにどうかと思うのだけど」
「よぉぉぉぉぉぉし分かったぞイヴさん! どうやら俺たちには致命的に互いを理解するというとても重要な
ことが足りてないと思うんだ! だからまずは俺の話を最後まで聞いてくださいお願いします!」
「いえ、別に私は二人の馴れ初めの経緯を知りたくは」
「違うから! 説明したいのはそういうことじゃないから!」
「それはともかく図書館では静かにしなさいとあれほど」
「誰のせいだ誰の! っていうか何? なんだよこれめんどくせー……」
何から手をつければいいのか分からないほど話をごちゃまぜにされたことに加えてツッコミの連続で精神・
肉体共に異常な疲労感が積もりに積もっていた。
重苦しい息を吐きながら、ふとダークダガーが掴み上げられたままじっと見つめていることに気付いた。
「なんだよ?」
「ぽっ」
「『ぽっ』じゃない!」
「ふつつか者ですが」
「なんでこの状況を真っ向から受け止める気でいるんだよお前は!?」
「子供は100人くらい欲しいかと」
「何を目指してるんだよ!? ギネス!? ギネスなのか!?」
『元マスター……』
「なんでそんな冷たい目で俺を見る!? 頼むからお前たちぐらい俺の味方でいてくれ!」
「だから、図書館では静かにと」
「分かった! 分かったから俺に話をさせてくれ!」
周りの人間の迷惑そうな視線を一斉に浴びながら、それでも不毛な会話を続ける男女の姿があった。
いや自分たちのことなのだが。
――シン・アスカ16歳、秋。
この日、四面楚歌という四文字の意味を言葉ではなく心で理解できた瞬間であった。
「――なるほど、ようやく話が見えたわ」
「今度からもう少し早くそうしてほしい……」
5分もかからない説明だというのにぐったりとしてしまう。ともあれ誤解がとけたことに心底安堵していた。
とっつきにくい性格ではあるが、イヴは意外なほど顔が広く、嘘はつかない人物として知られている。あんな
話が街中に流れようものなら明日にでもシンはどこへも顔を出すことができなくなるというものだ。
「それで、探している本というのは何かしら?」
「えーとですね、これに全部書いてるッス」
そう言いながらダークダガーはどこからか取り出したメモをイヴに渡す。そこに並んだ題名をひとつひとつ
確認した後、エメラルドの瞳が上がった。
「専門的な書籍が多いわね、それに数も多い。一応は貸し出しの限度内ではあるけど、いくつかは閉架書庫に
しかないものもあるわ」
「へーかしょこ?」
「貸し出しすることのできない類の本が保管されているところよ」
「んげ、マジッスか」
「題名だけでよくそんなことが分かるな。表に出てるのだけでもこれだけ数があるのに」
「そう? 当然のことだと思うのだけど」
この図書館で働くにはどれだけ特殊な技能が必要なのだろうかと呆れる他ない。
仮にここで働くことになったとしても、出来るのはせいぜい事務仕事や整理くらいのものだろうなと諦観して
しまうシンだった。
「ん~、とりあえず全部見せてもらってもいいッスか? その閉架にあるものも含めて」
「わかったわ。こっちに来てちょうだい」
ラーサ!(`・ω・´)ゞと返事をしててっこてっことイヴの後を行くダークダガーについていこうとして、シンは
インパルスたちの方を振り向いた。
「見張りは俺だけでいいから、お前たちはそこらへんで時間潰してていいぞ」
「え? でも……」
「そういうわけにはいかない。まだ奴が危険ではないとは限らないだろう?」
「イヴもいるし、平気だって。それに、そんな周りをきょろきょろしてたら見張りも何もないだろ?」
「それは、その」
言い淀む三人に、「大丈夫だ」と軽く笑いかける。
「何かあったらすぐ来てくれればそれでいいから」
「……分かった。その気持ちに甘えさせてもらおう」
「危なくなったら絶対呼べよな、元マスター」
念を押すソードの言葉に頷くと、インパルスは三人でどこから行くか相談しつつ何処へと向かっていった。
「ほうほう、まるで父親のようですなぁ」
「うるさい、っていうか何戻ってきてんだよお前。ほら行くぞ」
「へーい」
ダークダガーの言葉にむず痒くなるような恥ずかしさを感じながら、それを誤魔化すように早足でイヴの後を追った。
「そういやさ、お前が世話になってる人ってのはどこの誰なんだ?」
「なんですか藪からスティックに。答えられないッスよそんなこと」
「どうしてもか?」
「どうしてもです。自分これでもザパニーズニンジャーを目指してるんでそんなことは教えられません」
イヴが閉架書庫から本を取りに行っている間、何かしら情報が得られればと思い切って尋ねてみたシンだった
が、やはり無理があったのかものの見事に玉砕した。
ツーン(`、´)と顔を背けるダークダガーの様子からこのままでは何も聞けないだろうと悟ってシンは溜息をつく。
恩の押し売りをするつもりはないが、それでもここまで付き合っているのだからと思わないでもなかった。
――でも、さっき病気とか言ってたんだよなぁ。
それを聞いた手前、踏み込んだ質問がしにくいという心のブレーキがかかってしまうのだ。なんとも言えない
やり辛さにやきもきしてしまう。
「気になる?」
「え?」
「気になるなる?」
「そりゃまぁ、気になるな」
「聞きたい?」
「あぁ」
「だが断る」
殴りてぇ。
どや顔で勝ち誇るダークダガーに拳をめり込ませたくなる衝動をグッと抑えつつ、シンはまたひとつ自分が
大人になったと考えることで精神を安定させることにした。
そんなまったく得のないやりとりをしているうちに、数冊ほど本を抱えてイヴがやってきた。
「おまたせしてしまったかしら?」
「いえいえ、そんなことないッスよ~」
「そう? シンさんが鬼のような形相になっているのだけど」
「……気にしない方向でお願いしマス」
変な具合にイントネーションがついてしまっていたが何も問題はない。いたって平常心だ、と自分に言い聞かせた。
「とりあえずメモにあった分を持ってきたわ」
「どもども。それじゃ中身を拝見しますか……っと、申し訳ないッスけどシンさん、このメモにある本も持って
きてくれません?」
「なんで俺がそこまで面倒見なくちゃいけないんだよ」
「余計に時間を食うのも悪いかな~と思いまして」
「そうね、彼女のことは私が見ているから心配ないわ。探しに行ってあげても良いのではなくて?」
いつの間にかイヴまであちら側についていた。論理的な考えを重んじるというか、無駄を嫌う性格だからなの
だろうが。何にせよ面白い流れではない。
「……わかった」
このままさらに頭痛の種が増えるのも精神衛生上よくないと判断して大人しく従うことにした。
釈然としないものはあるが仕方ない、と自分を納得させて。
そうしていつの間にか追い詰められていたせいか、気に留めることはしなかった。
ダークダガーがさりげなく、閉架書庫の方を窺っていることに。
「えーっと……なんだこの本。本当にこれ読みたいのかよこれ書いた奴」
パラパラと中身を見てみるが、どのページも複雑な数式や単語が羅列している分厚い本だった。流し見してい
るだけなのに頭が混乱しそうになる。
すでにいくつか見つけた本もジャンルこそ違えど似たようなものだった。ふと時計を仰ぎ見ると、馴染みの
ない場所で馴染みのない内容の本を探すという苦行に予想以上の時間を費やしてしまっていた。
「む、こんなところで何をしているのだ元マスター」
「え? あぁ、ブラストか。なんか気付いたらあいつの本探す羽目になってた」
「あいっかわらず流されやすいなぁ元マスターって」
「で、でもそれは悪いことじゃないかなって思います」
正直すぎるソードの言葉と、それをフォローするフォースの言葉にとても複雑な気分になる。今までの自身の
言動を振り返るに反論もできなければ助け舟を素直に喜ぶこともできなかった。
「……ということは、今ダークダガーは一人なのか?」
そんな中、ただ一人声に緊張感を含ませてブラストが問いかけてきた。
「いや、イヴが付いてくれてるけど……」
そう言いかけたとき、背後から名前を呼ばれてシンは固まった。
ゆっくりと振り返る。そこには予想通りの、いましがた名前を出した人物が立っていた。
「イヴ? なんでここに」
「あの子からもう一冊閉架書庫から探してほしいと頼まれたのだけど、受付に戻ったら誰もいなかったの
よ。ひょっとして貴方のところにいるのかと思ったけど、いないのかしら?」
嫌な予感に全身から汗が噴き出した。思わず顔を見合わせたブラストも焦りの表情を浮かべている。
そして、その様子を嘲笑うかのようにけたたましいベルの音が館内に響き渡った。
「……閉架書庫の警報ベルだわ」
イヴの呟きを聞いてすぐさまシンは走り出していた。すでに予感は確信に至っている。
余程の偶然でもない限り、この騒ぎを起こしたと考えられる者は一人しか思い浮かばなかった。
広いとはいえ、図書館の中である。ほんの十数秒ほどで閉架書庫の前まで辿り着く。
「――やぁ、ご苦労様」
そこには、破壊した扉を跨いで悠々と書庫から出てきたダークダガーがいた。
その腕の中には、得体の知れない一冊の本。
昔ながらの友人にそうするように軽く手を挙げて別れを告げ、背中にジェットストライカーを出現させて
黒い少女は離陸する。熱気を伴いながら地を滑るように飛行して、瞬く間にその姿は図書館から消えていった。
「フォース!」
「はい!」
元主の呼びかけに応え、フォースインパルスも翼を広げて外へと飛び出していく。
「……とんでもない子を連れてきたものね」
「悪い、あとで謝る! 今はとにかくあの本を取り戻す!」
呆れたように言葉を漏らすイヴにそう言って、シンも二人の少女追うために走り出した。
最終更新:2010年10月18日 00:41