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なのはクロスの作品集-22

――――――すばらしい
「喜び」と呼ばれる感情までこの身に宿るとは想定外だった。
餌を撒き、以前と同じようにおびき寄せられた魔導師を貪り食す。
そして、自らを損傷を修復し再び破壊の連鎖を繰り返すつもりだったが・・・・。

――――――旧暦に存在した『超高エネルギー結晶体 レリック』
その実物を吸収できるなど、予想だにしなかった僥倖。
おかげで、一度受けた魔法はすべて解析、使用ほどに自らを高めることが出来た。
デリートしかけたことも、あながち無駄ではなかったと言うことか。
運命の女神がいるとすれば、恐らく吾に微笑んでいるに違いない。

――――――これで吾の望みは叶う。
管制人格のリインフォースを飲み込み、夜天の主を食い破り表へ出る。
そうなれば、更なる力を手に入れた吾を何者が止められようか。
吾を消滅させようとした魔道師共など、もはや取るに足らぬ。
今度こそ、すべての存在に等しい滅びをもたらそう。
それこそが闇の書の本質。それこそが闇の書の存在理由。


いや、その前に礼をせねば・・・。

さぁ、紛い物の魔法使いよ。
吾が収集した中で、もっとも強力な魔法を船に黄泉比良坂へと旅立つがよい。


『 破滅の光 アルカンシェル 』

デス子「なんとかして、マスターだけでも・・・・」
自分の頬を叩き、消えていく意識を気合で持たせようとするデス子。
自分が気絶すればマスターは助からない。
その意識だけが彼女を支えていた。
しかし、そんな儚い努力も『闇の書の闇』の前では風前の灯でしかなかった。
デス子「・・・なんて大きさ。これがあの闇の書の闇なの・・・?」

40mにも迫ろうかという巨体に、自身の体を覆いつくすほどに巨大化した六枚の翼。
六層に強化された物理魔法複合バリアと同形式の魔力を持つ六枚の翼は、驚異的な自己再生能力と共に、
『闇の書の闇』の不死身とも言える防御力を支えている。
大して役にはたたなかったはずの体を支える足は八本に増え、正面には新しく上方と下方に突き出た腕が一対ずつ生えていた。
その四本の腕はより早くより正確に魔力を精製し、ばらばらに魔方陣を紡げば、決定的な弱点となっていた
広域殲滅魔法のタイムラグすら消えるだろう。
突起物しかなかった背中にはおぞましいほどの眼が散らばっており、
その一つ一つが変異前に発生させていた触手の目玉とそっくりだった。
その数、およそ200。
もし一斉砲撃ができるならば、三本に増え刃物のように鋭利に輝く尻尾と合わせて、
『闇の書の闇』の背後に立てる可能性は完全に消えたことになる。
頭部にある女性の形をした『船首』も、形状だけ言うなら以前よりもリインフォースに近かったが、その禍々しさは比べようがない。
触手は巨竜の頭部のように変化し、保有魔力から逆算して、生み出す火球は恐らく
ソリドゥス・フルゴールが健在であっても一撃で貫かれていただろう。

前の戦いの時のような、生物のパーツと無機物のパーツを継ぎ接ぎにしたキメラのような形態とは全く異なっている、
醜悪でおぞましく、見るものを完膚なきまでに圧倒する姿。
まさに、神話に出てくる邪神そのものだ。
これが見掛け倒しと言い切れるならばどんなに楽だろう。
感じ取れるだけでも、魔力、防御力、火力その全てが次元が違う。
その力たるや、例えここに機動六課の全員が集結していたとしても、まず勝ちはないと言い切れるほどだ。

デス子「でも・・・どうしてここまで・・・・」
レリックの魔力を逆に取り込み、以前とは比べ物にならないほどに成長した『闇の書の闇』。
ここまでくると成長という言葉では表現できない。もはや、『進化』と呼ぶべき段階だ。
デス子「闇の書の闇には自分を成長させるプログラムなんてないはずなのに・・・」

ヴォルケンリッターは成長するプログラムである。
彼女たちにはあらかじめ、それぞれ自身の経験を元にプログラムを書き直す『成長』というプログラムが組まれている。
それは『学習』と言い換えてもいいかもしれない。
身体的な意味合いではなく、精神、技術の方面で『経験』を『学習』することにより、
より強く賢くなっていくのだ。
それは、生物にはなくてはならない必須事項であり、呼び出されたのがどのような環境にあっても主を守り続けなければならない
ヴォルケンリッターには必要不可欠なプログラムだ。(状況の変化に対応し続けるため)

しかし、防衛プログラムは違う。
防衛プログラム・・・『闇の書の闇』にだけは『成長』というプログラムは付属していなかった。
主と直接接触することもなく外部からの侵入者を食らうだけのトラップに、成長する能力など必要ないという理由もあるが、
一番の理由は、防衛プログラムが成長することを覚えてしまえば、防衛という概念すら書き換えてしまいかねないからだった。

だが、現に『闇の書の闇』は――――防衛プログラムは――――『進化』している。
ならば、防衛プログラムが『成長』というプログラムを手に入れたのはいつなのか?

プログラムを自分で作り出した?
――――『闇の書の闇』にそんな機能はない。以前からあったのなら、
何故今なのか説明がつかない。

レリックを取り込んだ影響で?
――――どれほど魔力を取り込もうと、成長する能力がなければ変化はない。
このとき既に『闇の書の闇』は『成長』というプログラムを手に入れていたと考えるべきだ。

可能性があるとすればあの時だけだろう。
ヴォルケンリッターを闇の書と分離させたとき、リインフォース(管制プログラム)は
完全にプログラム同士の繋がりを断つために防衛プログラム(闇の書の闇)を含む全システムにアクセスしていた。
そのときのみ、奴には『進化』のプログラムを入手するチャンスがあった。
管制プログラムを逆にハッキングし、必要なプログラムだけをコピーしていたとしたら・・・。
成功確率は限りなく低いはずだが、今の状況からすれば結果は推して知るべしだ。
しかし、だとするとわからないことがある。

はやてをわざと侵食したのはどうしてだろうか?

思考能力があるなら、一度負けた相手に対して挑発するような真似はしないはずだ。
下手に手を出して、管制人格ごと消滅させられれば完全な再生はできなくなる。
それほどの危険を冒してまで、はやてへの侵食を行った理由は恐らく一つだけだ。

デス子「初めから全部仕組まれていたことだったの? はやてちゃんを苦しめれば、マスターと私が・・・
    一定レベル以上の魔導師がここにくると・・・!?」

闇の書が生まれて数百年。
持ち主を食い殺す『闇の書の闇』――――防衛プログラム――――を排除するために、シンと同じ方法を考えた連中は腐るほどいたはずだ。
『闇の書の闇』さえ消すことが出来れば、闇の書の所有者は浸食を受けることなく幾らでも力を行使できる。
成功者こそいなかったが、その欲望の『記録』は間違いなく闇の書に刻まれているはず。

だとすれば、奴がこれまで溜まっていた『記録』を『経験』として『学習』し、わざと魔導師を自分の中におびき寄せ
逆に喰らって自身を復元しようと考えても不思議ではない。

姿が急激に変わったのも、修復に使用する以上の過剰な魔力を一度に手に入れたため
身体能力の強化に当てたのだろう。

『闇の書の闇』にとって、自分へたどり着くための理由がはやてを助けるためだろうが
自分を排除して力を手にするためだろうが関係なかったのだ。
奴には魔導師がここへ来るという確信があり、こちら側は罠だと知らずおびき寄せられた。
そして、強大な魔力を使い、懸命に戦い、敗北した。
賭けに勝ったのは奴だった。
自分達は最初から、『闇の書の闇』の手の中で踊らされていたのだ。

デス子「・・・私達の頑張りが・・・始めから全て利用されていたなんて!」

全ては自身を消滅しえるほどの魔力を手に入れ、自らを修復するため。
全ては『八神 はやて』を食い破り、あらゆる存在を破壊しつくすため。
全ては茶番、全てはお芝居。


マスターの八神はやてを思う気持ちが逆に利用された。
悔しさと怒りで頭がいっぱいになり、デス子は下唇から血が出るほどにかみ締めた。
そうすることでしか怒りを表現できない自分が情けなくなる。
翼も折れ、武装も失った今のデス子には、自分達をあざ笑う敵に対し睨み付けることぐらいしかできないのだ。

デス子(屈辱です! ここまでマスターを嘲られながら、私には一矢報いるどころか尻尾を巻いて
    逃げることしかできないなんて!)

自己修復に加え自己進化、奴はもう戦術や精神論でどうにかなる段階を超えている。
時期に奴はレリックで受けた傷を完全に修復し、失った転生機能を蘇らせるはずだ。
そうなる前に外にいる彼女達が異変に気付き、リインフォースを消滅させる儀式魔法を再開できなければ・・・・。

はやての命と引き換えに、この海鳴市は終わりを迎えることになる。
刀折れ矢尽きたシンとデス子にそれを止める術はない。


レリックを持ち込み奴を強化させてしまった責任を取ることもできず、
外にいるリインフォースたちに現状を知らせることも出来ない。

それでも、ここでシンを死なせるわけにはいかない。
この状態で未来に帰還すれば、僅かだが生き残れる可能性が残るはずだ。

デス子は気絶しているシンと無理やりユニゾンすると、
自分の手についた小さな腕時計型の時間跳躍システムに目をやる。
こうしてユニゾンすれば、基本的に一人ずつしか運べない時間跳躍システムでも
シンを連れて帰ることが出来る。

デス子が選んだのは、リインフォースを見捨ててでも、シンの命を救う道だった。
確かに、リインフォースはデス子にとって姉のような存在だ。
八神家で一緒にご飯を食べ、時には布団を共有することもあった。
だが、それでもデス子にはシンのほうが大切なのだ。

力のない人間には、選択肢を動かすことは出来ない。
ここまできて殺されたら、シンをなんとかして生かそうとした仲間の努力が無駄になる。
そう自分を納得させて、デス子は覚悟を決める。

仲間の無事を祈りつつ、シンを未来に帰すことだけがデス子が奴に出来る精一杯の抵抗なのだ。

奴はこちらをいつでも殺せると油断している。
チャンスは今しかない。
デス子は時間跳躍システムを作動させると迫り来る転移の衝撃に備える。
この装置は、作動して三十秒後に十年後の未来(機動六課へ)に帰還するようにセットされていたはずだ。
エネルギーの関係もあって一度の作動が限界だが、確実にこの空間から離脱できる
・・・・・・はずだった。

デス子「そんな・・・・・発動・・・しない!?」
残念ながら、デス子が装置を起動させる数分前に未来はその姿を変えてしまっていた。
時間跳躍システムの本体も時空のかなたに消え、頼るべき人達ももういない。

デス子たちが用意した帰還のための手段は、潰えていた。


そんなシンとデス子に止めを刺すかのごとく、『闇の書の闇』は新たな魔法を構築し始めた。
これまでとは比べ物にならないほどの莫大な魔力量を用いて、破格の大きさの環状魔法陣を3つも展開させていく。
その大きさは、単体でMS形態のデスティニーを丸々包み込むほどだった。

デス子「・・・・・あ・・・ああ・・・・・」
それは、管理局員なら誰もが知りうる最凶最悪の魔砲。
学習機能を手に入れたならば、自分をこれまで消滅させてきた『それ』を『闇の書の闇』が使えないはずがない。

―――― アルカンシェル(Arc-en-ciel) ――――
管理局の大型艦船にのみ搭載されており、屈指の殲滅力を誇るため
特定条件を満たした状況や対象に対してのみしか許可されない魔導砲。
その破壊力はまさに脅威そのもので、着弾から一定時間経過すると
着弾点から約百数十キロを空間歪曲と反応消滅で対象を蒸発させる。

闇の書内の空間で使うため発動規模は小さくしてあるが、それでもシンを葬るには十分すぎる威力だ。
防御はもちろんこの距離からでは回避もできない。
シンとデス子の『終わり』は決定付けられたようなものだった。

デス子「私は結局・・・何も、守れなかった・・・」
デス子の目から悔しさと悲しみが入り混じった涙が零れ落ちる。

頼みの綱も絶たれ、全ての希望は掻き消えた。
シンは意識を取り戻さず、羽を失ったデス子にはもう飛ぶ力すらない。
アルカンシェルの咆哮は数秒もたたずにシンとデス子を蒸発させるだろう。
例え何らかの偶然が重なりこの攻撃を避けられたとしても、この空間から脱出する手段はないのだ。
もはや手は出し尽くしている。
『チェックメイト』だった。

デス子「ごめんなさい・・・シン」

シンとユニゾンしたまま、自分の最後を覚悟し目を閉じるデス子。
動くことすらままならないほどの重傷を負い、気を失ったままのシン。
そして、レリックの魔力を得て『自己修復機能』に加え『自己進化機能』まで
手に入れた『闇の書の闇』
アルカンシェルが放たれようとしている今、既に勝敗は決しているかに見えた。

だが、張本人でさえ気付かない間に逆転の手札は揃いつつあった。
デスティニーをデス子として生まれ変わらせた『セイオウノツルギ』と
シンの中に眠る時空跳躍能力。
そして瀕死のシンと強大な敵の存在が、彼らに自分達の持ちえる最強の『ジョーカー』を引き当てさせる。

―――――――― プログラム 『セイオウノツルギ』 起動 ――――――――

バリアジャケット              損耗率 89% 危険域
アロンダイト                損耗率 65% 危険域
パルマフィオキーナ             損耗率 71% 危険域
ヴォワチュール・リュミエール        損耗率 72% かろうじて浮遊可能
ソリドゥス・フルゴール           損耗率 100% 使用不能
高エネルギービームライフル         損失
フラッシュエッジ2 ビームブーメラン      損失      再構成可能
高エネルギー長射程ビーム砲         損失

ロード;シン・アスカ            意識レべル2に低下
                      損傷レベル8 危険域 
          左腕部 損傷度70%  使用不能
          臓器損三箇所 粉砕骨折一箇所 
          肋骨、右足、その他三箇所骨折 
          肋骨の破片が内臓を二箇所損傷 
          ひびも多数確認 内出血有り

戦闘続行は困難と判断

ロードの命にかかわる緊急事態と認定

戦闘対象は飛散したレリックの魔力を吸収し急激に回復中、損傷値 20%、19%に低下。

対象の現有戦闘力はSSS-と判断。シン・アスカの現状での勝率0%
対象は聖王の重大な脅威になると認定。
排除、殲滅用特殊システム・・・・・起動準備完了。


ベルカの騎士用SSS級秘匿魔道兵器『セイオウノツルギ』
――――第二段階 始 動 『 ロードノ持チエル全潜在能力ヲ連結シマス 』

ロードの所得能力に設定外のイレギュラーを確認。
――――有効な攻撃手段と判断。

シン・アスカの次元超越能力へのアクセス開始
――――接続完了

多次元同位体との精神リンクを開始
コード:NANAYA
コード:ZYENOBA
コード:KIRUSURESU
コード:A-TU
――――精神リンク完了

騎士甲冑(バリアジャケット)システム 性能限界解除開始
――――解除完了


『  デスティニーフォーム  セカンドリミットリリース  』

―――――――― エクストリームブラストフォーム 封印開放 ――――――――







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最終更新:2011年01月04日 12:49
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