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夜向性 ◆pLz4u.wgPs-第一話

春、それは多くの学生にとって始まりの季節である。
思春期を脱しかけた子供達は、不安と期待に胸を膨らませながら
また一歩大人の階段を上るためここ『私立ザフト学園』へと入学してくる。
そして、在学生は自分が少し大きくなったことの戸惑いと責任を背負いながら、
新たな一年を始めるために新入生を受け入れる。

この物語の主人公である彼も、新たに入ってくる後輩達と絆を深め共に助け合えるような関係に・・・。
シン「はあっ!? 俺が転校だ・・・ですか?」
デュランダル「厳密には転校ではないのだがね、シン・アスカ君。君には、
   他校との交流の一環として計画された留学システムの第一号になってもらいたいのだ」
シン「それって、断ることは・・・」
デュランダル「事後通達になって申し訳ないが、すでに関係各所に君が転入することは通達していてね。
   まぁ、一年ほどで戻って来れる予定だから気軽に愉しんできたまえ」
・・・なれなかったようである。

題名未定 第一話「 転 入 」 前編

  • 昼間
ビアガーデンのような作りになっている学園の屋上でお昼時に弁当を囲んでいるのは、
今年高校二年生になるシン・アスカ、レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホークの三人である。
彼らは幼少の頃からの親友同士で、クラスが何度変わっても時間が合うと
こうして一緒に食事を取っていた。
今日は食事の予定はなかったのだが、シンが理事長に直々に呼び出しを受けたと聞いて
緊急集合したのだ。

彼が理事長であるギルバート・デュランダル氏の話を掻い摘んで話すと、
ルナマリアは食べようとしていた卵焼きを弁当の中へ取り落とし、レイは無表情で麦茶を噴いた。
余程、信じられなかったらしい。
シン「なんだよ、その驚き様は。そりゃ、俺だって驚かなかったわけじゃないけど」
ルナ「いやだって・・・。ねぇ、それ本当にマジな話なの?」
シン「色々条件も説明してもらったし、マジなんじゃないか」
一年後に帰ってきた後は成績に関わらずあらゆる大学への『推薦状を書く』。
学費、寮、交通費用は全て大学が持ち、月に数回の仕送りもする、など学校側からは
破格の条件まで付いてきている。
インフラが整備された都会なので帰ろうと思えば何時でも帰れるのも転入条件としては悪くない。
ルナ「しっかし、よりにもよってあんたが選ばれるなんてねぇ。
   成績も素行も悪いシンを行かせるなんて、どう考えても選択ミスだと思うけど・・・」
レイ「そうだな。性格はどうあれ、座学があれではどうしようもない。
   シン、向こうに行って勉強は付いていけるのか?」
シン「そこなんだよなぁ。どうも、向こうの方が科目が進んでるらしいんだ。
   で、アティ先生と来週から放課後に残って一対一で補習授業だって」
ルナ「うええぇ~、ご愁傷様」
軽い口調とは逆に、うだるような顔をするシン。ルナマリアなど話を聞くだけでげんなりしていた。
アティ先生は確かに美人で優しいが天然で失敗も多いため、補修を受けた生徒は十中八九何らかの後始末を
手伝わされるはめになるのだ。
共働きの両親の分まで家事を請け負っているシンにとって、家で過ごせる時間が減るのは中々厳しいものがある。
妹のマユが全寮制の学校へ行くのが決まったとはいえ、これでは悠長にバイトなどやっていられない。
もっとも、校内美人ランキングの上位に食い込んでいる彼女にマンツーマンで勉強を教えてもらえるなど普通ではありえないことだ。
他の男子生徒が聞けば丑の刻参りが殺到することだろう。

ルナ「ねぇ、本当に何も心当たりないわけ?」
シン「あるわけないだろ。レイならともかく何で俺が・・・」

流れるような長い金髪と整った容姿、成績優秀のレイや、人当たりがよくほどほどにもてるらしいルナマリアと比べると、
シンが勝っている部分など身体能力ぐらいしか思いつかない。
学校の面子を保ちたいなら学年一位のレイを、親睦を深めるならルナを行かせようとするのが普通なのだが。

レイ「他に思いつく可能性といえば・・・・左遷か」
ルナ「ああ、ありえるかも。あまりの問題児っぷりをもてあました先生達がこれ幸いとばかりにシンを・・・」
シン「や、やめろよ。しゃれになってないぞ、それ!」
レイ「冗談だ。学校の名誉も関わってくる事業を私物化できるわけがない。なにより、ギルがそれを許さない」

ギルバート・デュランダル氏は理事長であると同時にレイの義理の親父さんでもあった。
思えば、シンが“金持ち”という存在を言葉ではなく心で理解したのも、レイの家に遊びに行ってからだ。

ルナ「でも、そうなるとなおさらわかんないわね。なんで、シン一人だけ?」
レイ「さあな。ギルの考えは俺たちにはわからん。だが、あの人が訳もなくそんなことをするはずがない。
   それなりの理由があるのは確かだ。」

そんなもんかな、とシンが缶コーヒーを飲み干すとちょうどいいタイミングで昼休み終了の鐘がなった。
あと五分で午後の授業が開始されるとあって、三人は慌てて昼食を片付け始める。

ルナ「ま、見聞を広めるいい機会なんじゃない?」
レイ「そうだな。視野の狭いシンにはちょうどいいだろう」
シン「レイ! それどういう意味だよ!」
レイ「帰ってきた時の成長に期待しているという意味だ。早くしないと授業が始まるぞ」
ルナ「留学期間は一年だっけ? 時々遊びに行ってあげるからすねるんじゃないわよ」
シン「子ども扱いするな。そっちこそ、遊びって名目で人の財布にたかるなよ!」

憎まれ口を叩きあいながらも、揺ぎ無い絆で結ばれた三人。
それこそが自分が転入させられた本当の理由なのだと、このときの彼は気付く由もなかった。


  • 理事長室
真夜中の誰もいない学校で、デュランダルは一人の女性と話していた。
電気はついておらず、月明かりだけが部屋を照らしている。

デュランダル「これで、打てる手はすべて出し切ったか」
???「彼、うまく動いてくれるかしらね」
デュランダル「難しいだろうね。彼が未来を勝ち取ってくれるのか。それとも、自ら育てた“影”に喰われて人が滅ぶのか・・・。
    どの道、私にはもう信じることしか出来んよ。」
???「そうね。・・・私ももう行くわ。あっちでやらなくちゃならないこともあるし」
デュランダル「この世界から追い出した我々(にんげん)が言うのもなんだが。
    妖怪の賢者よ、人類と彼の未来を頼む」
???「ふふ、善処するわ」
そう言い残すと、女性はかき消すように理事長室から消えてしまった。


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最終更新:2010年05月05日 11:23
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