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ARMORED CORE-04


アーマード・コア -マスター・オブ・女難


ACMoJ レイヴン試験前編


 暗闇の中、腕時計からのアラーム音に気付いて、シン・アスカは閉じた意識より覚醒した。
輸送機独特の、複数のエンジンが重なり合った重低音が、シンに戦場を思い出させる。
ザフトレッドのパイロットスーツを着たシンは、現状を再確認するためジノーヴィーからもらった携帯端末を取り出した。

 我々グローバルコーテックスは、レイヴンを志す諸君に唯一の課題を課す。
レイヤード閉鎖都市区域内において、こちらの指定した目標を全て撃破するか、
制限時間を越えて生き残ってさえいれば、君達は晴れてレイヴンだ 。
このチャンスに二度目はない。……それでは健闘を祈る。

 戦闘区域は閉鎖された都市すなわち、市街戦。
ジノさんから貰った情報では、敵戦力は戦闘マシンMTが10機程度。
特化型ならともかく、通常型はACの足元にも及ばないらしいからCEで言うMAみたいなものか。
次に貸与されるAC。一般的にレイヴン達の間で初期機体と呼ばれるタイプだ。
ACとしての基本的な機能と、最低限の武装を兼ね備えた傑作。
……ザフトでいうプロトジンか。
手持ちの情報のチェックを終えて、シンは天井を見上げた。
時計に目を通すと到着予定時刻まで30分はある。

顔を正面に戻すと、ふと横を向く。
そこには白いパイロットスーツを着込んだ、シンと同じ位の年齢の栗色の髪をショートカットにした少女がいた。
……どこかマユに似てるな。 一瞬心をよぎったそれを否定する。
ついこの間ジナイーダに人に過去を重ねるなと言われたばかりだった。
少女はちらりと見ただけでも分かる程緊張し、その体は僅かに震えていた。
その様は、ジンやインパルスに初めて乗った時の自分を見ているようだった。
あの時は教官やコートニーさん、リーカさんに声を掛けて貰っただけで随分緊張がほぐれたっけ
緊張している少女の姿は、過去の自分を見ているようでどうにも放っておけず、シンは小さな親切心で、大きなお節介を焼いてやることにした。
…………他人に過去を重ねるなっていうけど、これ位は良いよな?
答えの返ってこない疑問を、心の中にしまい、シンは顔を少女の方へと向けた

「なぁ、じゃなくて、ねえ……ちょっといいかな?」 先走る自分を押さえ、柔らかい口調を心掛ける。
「なっ、なんですか?私ですか?」 ビクッと体を震わせると少女は言った。
「少なくとも、この場には君と俺しかいないよ。」
名前は確か
「エネさんだっけ?」
「はい。そうですけど、何でしょうか?」
「いや何って訳じゃないんだけど。同じ試験を受けるのに挨拶もしてなかったからさ。」
「そういえば、そうですね。……えっと」  
話しているうちに少しは緊張がほぐれたのか、微笑を浮かべ目の前の男の名を思い出そうとするエネ。
「ああ、俺はシン。 シン・アスカよろしく。」 そう言うとシンは右手を相手に差し出した。
「アスカさんですか。いえ、こちらこそ。」 エネはシンの右手を握り返す。
「シンで良いよ。 」
「私もエネで良いです。」 そうは言うものの、エネの顔は青白い。
「どうしたんだ?」

右手を離したところで、エネの様子が変なことにシンは気付いた。
「いえ、意外だなって。 ……レイヴン試験を受ける人はみんな怖い人ばかりだと思っていたのに、シンはとても優しいから。」
「そう言えば、何でエネはレイヴンに?」 
シン位の歳で、わざわざレイヴンになりたがるのは余程の変わり者かロクデナシ─社会不適合者─が殆どだ。
そうシンに向かい言ったジナの顔が脳裏に浮かぶ。
「笑わないでくださいね?」 躊躇いを見せるエネ。
「笑うもんか。」 シンは顔を引き締めると即答した。
「……家族の為なんです。」 しばらくの思案の後エネはゆっくりと口を開いた。
「母が病気で、治すのに入院しなきゃならないのにお金がなくて、それで、レイヴンになればお金が稼げると思ったんです。」 確かにレイヴンに支払われる報酬は莫大だ。……でも
「母には反対されました。試験で命を落とすこともある。命を危険にさらすことはない。って、でも母が苦しんでるのに何もで
 きない自分が情けなくて、正直に言って怖いです。死にたくないです。シンに話し掛けられるまで、怖くて震えていたんで
 す。可笑しいですよね?そんな女がレイヴンになろうなんて……」

「……なんて」 シンは下を向き何事かを口走っている。
「……シン?」 エネはシンに近づく。
「そんな、そんな事情があったなんて(´;ω;`)」
家族のためにという言葉に文字通り滝のような涙を流すシン。
心配そうにエネはシンの顔をみる。
「大丈夫。君は死なせない。君の事は絶対俺が守るから。」
エネの両肩に腕を回し、抱きしめるように力強くシンは言った。
───ついこの間、ジナイーダに似たような事を言った事は勿論覚えていない。
「し、シン ////」
エネの頬が朱に染まる。

賢明なる人はすでにお気づきだろう。
これこそが『らき☆すけ』すなわちパルマフィオキーナ─因果を超越せし女難の鎗─に次ぐシン・アスカ第二のアクティブスキル。無意識なフラグ立て─エクストリームブラスト─ である。
シン・アスカは勘違いをしていた。シンは元々色恋沙汰とは縁の遠い男で鈍感である。
しかも言葉のボキャブラリーも貧困だ。
そもそも14歳にして帰るべき故郷を焼かれ、目の前で家族を失った。
その後難民としてプラントに移り住み、力を得るためアカデミーに潜り込んだ。
普通の同年代が、甘酸っぱい恋なんぞをしている間、文字通り血が滲むほどの努力を重ねる事でアカデミートップの証、赤服を手に入れた。
その後すぐにインパルスのテストパイロットに任命され、ミネルバに配備された後は激戦に次ぐ激戦。
それらしい恋愛経験は敵兵ステラとの心の交流位(補足:元は高山版なのでルナマリアとは関係は気の置けない異性の戦友)
色恋沙汰もボキャブラリーを豊かにする事もなく成長してしまったのだ。

一見すると告白じみた台詞のシンには自信があった。
一度この言葉でパニックにおちいった少女を救ったことがあったのだ。よってシンはこう思ってしまったのだ。
『異性の守るべき対象には君は俺が守ると言ってやれば良い』と
勿論そんな事は知らないエネは告白じみた台詞を聞き動揺した。
エネ自身そういう経験が不足していたので言葉を勘違いして受け取ってしまった。

すなわち『君が好きだ』と。

…………嗚呼、なんと言う悲劇。ある意味喜劇でもあるが。
輸送機の中に甘い空気が流れる。シンとエネの顔はこれまでにないほど接近している。
「シン……」 エネの目が閉じられる。
(えっ‥…それってまさか?) シンは自分が蒔いた種にあわてふためく。
(良いって事か!? どうする、どうする俺!?)
シン自身、何故こんな事になったのか理解できないが据え膳食わぬは何とやら女の子の行為を無碍には出来ぬ。でも守るべき対象にそんな事。アスランとの決戦以上の迷いが生じる。
思春期で根が真面目なシンにはまさしく生き地獄。自業自得で同情には値しないが。

そんな中シンたちのいる輸送機一室から、コックピットにつながる扉が僅かに開き、そこから覗く二つの視線があった。
「大変な事になったわね。」 一つの黒い目の持ち主は思わず溜息をつく。 
「…………あいつ.........」 もう一つの翡翠色の目の持ち主はスチール缶を形が変わるほど力強く握り締めていた。
(まずいかな?)黒い目の持ち主は心の中で呟いたその時
「何やってんだ、お前ら?」
二人の後ろからシン達のいる部屋にも聞こえるような男の声がした。
「「誰!?」」シンとエネの声が輸送機内部に響き渡った。

「……続くようだな。」男は興味がなさそうに呟いた。

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最終更新:2008年06月24日 19:11
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