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ARMORED CORE-05


アーマード・コア -マスター・オブ・女難


「……続きだな。」
静まり返った輸送機内部
「あー、ちょっといいかしら?」
黒髪にポニーテールの女性がその沈黙を打ち壊すように声を上げた。
「えっと、どちらさまでしょうか?」 シンは呆然としたままの表情で答えた。
「「まあそうだろうな(ね)」」
ポニーテールの女性と、後ろに立つ灰色の髪の長身の男が頷く、………だけれど何か他に視線を感じる。
コホンと咳払いひとつ
「……今回レイヴン試験実施にあたり、グローバルコーテックスより依頼を受け、試験官役として派遣されたレイヴン、レジー
 ナです。以後よろしく。……でこっちは」
顔を引き締めレジーナと名乗るレイヴンは言った。
「同じくコーテックスより護衛役として、依頼を受けたレイヴン、フリッツ・バーンだ」
瞳と同じ色のエメラルドグリーンのパイロットスーツ姿に髪をおそらく灰色に染めている男フリッツは興味なさげにいった。

スッ、と値踏みするかのごとくエネとシンに視線を走らせる。
その視線の意味に気付いたシンは、眉を吊り上げ、フリッツを睨んだ。
その瞬間、シンへとフリッツが振り向いたことで、シンとフリッツの視線が交差する。
(まさか、こいつは!?) その時フリッツは気づいた、シンの真紅の瞳、その奥底に宿る激情の炎に。
(そんな、この人も!?) 同時にシンもまた気づいた、フリッツの漆黒の瞳、その深遠に眠る殺意の刃に。
そして、本能的に二人は感じていた。
こいつは同類―復讐を心に刻みつけた者―だと。
しばらく睨み合っていた二人は、どちらからともなく視線を外した。
やがてフリッツはゆっくりと口を開いた。
「……君とはいずれ、ゆっくり話がしてみたいな」
「ええ、俺もです」
まただ また視線を感じる。 辺りを見渡すと、いた。
翡翠色の瞳にプラチナブロンドの髪。見覚えのある顔がそこにはあった。

…………ジナイーダだ。扉から半分だけ顔を出し、シンを睨んでいる
固まるシン。
それを見るジナイーダの目は冷たい。
「何? ジナイーダ、貴女も出てくれば良いじゃない」
レジーナはジナの袖を掴み、引っ張っているようだ。
「いやいい。……私のことは気にしないでくれ」
顔はシンに向けたままジナは言う。
「じ、ジナイーダさん。 もしかして怒ってます?」
意を決したシンが話しかける。

「いや、全然怒ってないぞ、アスカ」
「お前が女の子だったら誰にでも『君の事は俺が守る』と言っていた事なんて、気にもしていない」
そうは言いつつも、ジナイーダの眉はヒクヒクと引きつっている。
やばい。……何か知らないけど、すげー怒ってる。
助けを求め周囲を見渡すも、エネは状況に付いていけずに戸惑い、フリッツは生暖かい目でこちらを見ている。
レジーナはしばらく面白そうにみていたが、思い出したように声を上げた。
「あッ! お取り込みの最中で悪いだけど、仕事の話がしたいなぁ」
それを聞いたジナとフリッツの顔付きが変わる。
そう、獲物を狙う猛禽のそれへと顔つきを変えたのだ。それを見たエネは軽く驚いたがすぐに平静を取り戻す。
「……話の続きは帰ってからだ」
ポンっとシンの肩に手を置くと、口の端だけを吊り上げジナは嗤った。

「それでは聞かせてもらう。監督役がいるにも関わらず、わざわざレイヴンを二人も呼んだ理由をな」
フリッツが言うと、ジナイーダも同意するように頷いた。
「……本当は受験生の前じゃ言いたくないんだけどね」
シンとエネを見ると考え込んだ様子で、レジーナは言う。
「言って下さい」エネは迷いの無い、はっきりとした口調で言った。
エネのその言葉に三人は驚くと同時に納得もしていた。 やはり彼女も無力な存在ではない。死の覚悟を背負ったレイヴン候補なのだ。
「分かった、全て話すわ」
レジーナの話した事を要約すれば
数年前レイヴン試験を妨害しようとし、あるレイヴンにより壊滅させられた組織が戦力をかき集め再び試験を妨害しようとしているという事だ。
「それで、相手の戦力は目処が付いているのか?」
フリッツは顔を僅かにしかめるといった。

「大型爆撃機十機以上、MT。それも対AC用を含めて、三十機以上。それらが二方向に別れて襲来すると見られているわ」
手元の携帯端末を操作しレジーナは静かに告げた。
「……確かに、新人には荷が重いな」
ジナイーダの呟きが静かに響いた。

降下開始五分前
シンは輸送機後部のカーゴ部にいた。銀色の地肌が剥き出しになったACが二機。
左肩に書かれたナンバリングが01がシンの機体。02がエネの機体だ。
機体各部のチェックを終え、OSを起動する。 今まで、黒一色だったモニターが周囲の光景を映し出した。
「予定ポイントに到達しました。 護衛のレイヴンは、降下開始して下さい」
輸送機のパイロットの声がカーゴ部に響く。
それに呼応するように、黒―闇の中にあっても、闇にさえ交わらぬであろう気高い黒だった。― 一色の重装ACが動き出し、
ゴーグルに覆われたカメラを持つ頭部(CEのウィンダムに似ていた。)をこちらに向けた。
「安心してくれ。お前らの所には、一機だって通さない。……だから頑張れよ、シン。それにエネさん」
ぶっきらぼうな物言い。だがそれが彼なりの気遣いなのだろう。
「はい! 絶対に合格して見せます。だから、フリッツさんも気をつけてください」
エネの声がカーゴ内に響いた。その声に最初に会ったときの様な緊張の色はない。
「ありがとう」 僅かに微笑みそう言うと、フリッツは機体を開放されたハッチに歩かせていく。
「フリッツ・バーン。 アナイアレイター、降下する!」
漆黒の機体が闇の中へと飛び込んだ。
それに続き、赤紫色のAC、ファシネイターも動き始めた。

──────ジナはまだ怒ってるんだろうか?
「シン、先程も言ったが話は帰ってから聞かせてもらう。だから……」
あまり感情を込めずジナは言った。
「だから?」 シンは思わず唾をゴクリと飲み込んだ。
「……必ず生きて帰って来い。それと私は嘘付きが嫌いだ。だから絶対に彼女を、エネを守ってやれ」
言い聞かせるようにジナは言った。
「ジナイーダ。 ファシネイター、出るぞ!」
赤紫色の後ろ姿が見えなくなり、シンは口を開いた。
「……ああ、当たり前だ」
操縦桿を握る手に、力が入る。その瞬間、通信機から聞き覚えのある声が流れた。
「レジーナよ、聞こえるわね。今更説明するまでも無いから説明は省くわ」
「……私が言えるのはただひとつ。このチャンスに二度目はない、だから必ず合格しなさい」
シンとエネは空気を飲み込んだ。
「それではこれよりレイヴン試験を開始する。ナンバー01より順次降下開始」

体中に感じる緊張が心地よい。今暫く離れていた戦場の感覚だ。
目を瞑り、大きく息を吸い込み、そして吐き出すと、目を見開く。
「シン・アスカ! 行きますッ!」
ブースターを吹かし、CEの時の様に、勢いよく輸送機から飛び出した。


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最終更新:2008年06月24日 19:16
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