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東方種子語-06 前編その1

少女の足を舐める。そんな行為が屈辱で無いはずもなく。
ひたすら無感情で行っているうち、なんとは無くC・Eにいた頃を思い出す。
デュランダル派が身を落としたテロリスト共にはクラインの犬と罵られ、クライン派からは現プラント最高評議会議長ラクス・クラインとその一行に楯ついた愚か者と嘲笑われ、連合からはナチュラルを憎悪する悪魔と恐れられ、オーブからは国を捨てた挙句に恩人を殺した恩知らずと疎まれ。
それでも、戦いの先に誰もが安心して暮らせる時が来ると信じてデスティニーを駆って戦い続けた日々。
そんな日々と現状を比べ。

(なんか、どっちもあんま変わんない気がするなぁ)
苦笑し、思わずため息をついてしまう。ぶるり、と目の前の少女が震えるのが見えた。

(寒いのかな?)

この場にデスティニーがいたら確実にシバかれるようなことを思う。
もう少し頭を働かせれば流石に気付いただろうが、完全に自分の思考に埋没していくシンにはレミリアが浮かべた表情は映らない。

(まあいいか……ホント、こっちの方が平和って言えば平和なんだけどさ)

だからと言って、向こう―――コズミック・イラがどうしようもなく駄目だとも思うことができない。
そりゃあ確かにC・Eは客観的に見なくたって碌でもない世界だってことぐらいは分かる。
どいつもこいつも引き金が異様に軽すぎる銃しか持ってないとしか思えないほどドンパチをやらかすのだ、それこそ下はリンチから上は大量虐殺まで。
それを阻止するべき歌姫の騎士団連中も撃てと命令されれば迷わず撃つような連中ばかりだ、そこのところはキラ・ヤマトも例外ではない。
撃つと決めた後からグダグダと迷う自分とは逆に、普段はグダグダと迷っているくせに一度撃つと決めたら一切の迷いがないのだから。
そんな騎士団の行動を、戦乱を煽っているだけだと評する者だっているぐらいだ。

撃たなければ民間人にまで被害が及ぶことは事実だが、撃たなければならない状況ばかりだということもまた事実。
数少ない例外はオーブぐらいか。
だが問題がないわけではない、というよりも撃つ撃たない以外の部分が問題だらけなのだが。

思い返してみると本当に碌でもない。
一番の問題は、C・Eに住む殆どの人々はその碌でもなさを認識していて。
そのうえで何も変わろうとしていないことなのだろうけど。

(まあホントに碌でもないんだけど、な)

だけど。それでもいいことだって確かにあった。家族と過ごしていた毎日は退屈だったけど不幸なんて一つもなかったし、全てを失ったときに優しい言葉をかけてくれたトダカには感謝したってし切れない。
ザフトに入ったときだってそうだ。レイやルナマリア、ヨウランにヴィーノ。
みんながいてくれたからアカデミーに入ってからもずっと頑張れたという自覚がある。
ステラも―――本当に辛い思い出ばかりだが、それでも自分が「守る」と言ってくれたときの安心しきった顔。
自分が今でも「守る」という、いっそ陳腐なぐらいの言葉を言い続けられるのはあの顔のおかげだ。
誰もにあんな穏やかな顔を浮かべて欲しいから終戦後、ザフトが解体、名前だけを借りた別物へ再構築されてからも戦うことができた。

本当に、碌でもないことばかりだったが。
(けど、やっぱり。その中じゃあ、きっと)


―――すごく、幸せなんだろう。



(………故郷、だもんな。何のかんの言ったって)

お前は不幸な人間だ、と。シン・アスカという人間を主柱に据えたいテロリストに正面から言われたことはある。
まったくもって失礼な言い草だと思う。
自分にいいことが一つもなかったとでも思っていたのだろうか。
そんなものは自分に対して以上に、自分に対してよくしてくれた人たちへの侮辱に他ならない。
第一、本当に不幸ならどうして敵が、ラクス・クライン達は自分に手を差し伸べたのか。

……彼女たちが行ってきた戦争への武力的介入そのものは今でも納得していない。
してはいないが、そのことを蒸し返して戦争の火種にするほど子供でもない。
例え突けば弾けるような危うげな平和でも、戦争よりは遥かにマシだ。
治世が始まった当初こそ火薬庫と揶揄されるほどに不安定な時期が続いたが、
それでも近年は一部のザラ派やブルーコスモスといった過激派のテロも僅かずつ―――実感としてわかないのは、自分が最前線にいたからであろう―――ではあるが治まっては来ている。

もしも、そんな実績を鑑みてもなお許せぬ外道だったなら反旗を翻したのかもしれないが、実際には。
(悪い人たちじゃ、ないんだよなぁ)

そう、至って善人。手を差し伸べただけではなく冷や飯を食わずに済むよう配慮してくれた。
クライン派の暴走に対する抑止力として利用するつもりもあっただろうが、それだけならば問題があればいつ反乱をおこしても構わないなどと馬鹿正直に言うはずもない。
シン・アスカという人格を信頼していたからこそなのだろう。
………もっとも、何故そこまでに信頼してくれるのかは未だに分かっていないが。
信頼。そう、彼女はシンを、ひょっとしたら恋人のはずのキラ以上に信頼してくれていた。
だからこそ、ラクスはあんな頼みごとをしてくれたのだ。

(――――って、ん?)

頼みごと。はてなんだったかと頭をひねる。どんな頼みをされたのか全く思い出せない。
(いや、待て? そんなの、あり得ない……っていうかマズいだろ!?)

動揺し、思わずレミリアの指を強く吸ってしまう。
なんかさっきからピクピク震えて「待て」だの「よせ」だの言っている気がするが、まあ些細なことだ。
冷静になって思い返してみる。小規模なテロが起こったという報告があった、ひと月ほど前からキラの様子がおかしかったため自分が部隊を率いて前線に向かおうとしていた。
ここまではいい。

そしてMS隊を展開させた、ここまではちゃんと覚えている。
そして、パイロットスーツに着替え格納庫に向かおうとする直前にラクスから個室の端末に通信が入り、
出撃前だと言うのに他愛のない話―――やれ、子供の頃はどんな風に過ごしたかだの今でも親しくしている親戚縁者はいるかだの―――をされ苛ついて通信を強引に切ろうとしたら、真剣な眼で頼みたいことがあると言われ。

―――――そこから先の、記憶がない。

知らず、体が震えた。落ち着かせるために両腕で体を抱きしめる。
(そんな、馬鹿な? 待て、少し落ち着けよ? だと、すると? その先の記憶がないんだとするんなら………その後は、どうなった?)

何故今の今まで気づかなかったのか。
なんだって自分には、幻想郷に移った瞬間の記憶が存在していない。
そもそも何故記憶を失っていることに疑問を抱かなかったのか、常識的に考えれば真っ先に考えるべきことのはずだというのに。
そうだ、真っ先に考えなければならないはずのことだ。
だが、今の今まではシンはこう考えていた。

(さほど、重要じゃない?)

馬鹿な、と声に出さずにひとりごちる。そうだとするのなら自分の中の価値観は曖昧すぎるにもほどがある。
それとも或いは、思い出せないことに困惑して適切な判断を下せていないだけで本当に重要なことではなかったか。

(そんなはずはない、よな? 少なくとも部隊のみんながどうなったかは重要なはずだろ!?)

焦燥だけが募っていく。
何度思いだそうとしても思い出すことができないことがここまで焦れるものだとは思わなかった。
記憶を失った人間は常にこんな、記憶の境界が曖昧になる感覚を味わい続けているということなのか。

(くそっ………ここで考えててもどうにもならない、か?)
とすると、誰に聞くべきか。真っ先に思い当たったのはアリスだ。
今のシンはアリスの作った人形に宿った存在なのだ、もしかしたら調べられるかもしれない。
が、それも可能性の問題にすぎない。アリスが人形の記憶を確認できるかどうか、例えできるのだとしても自分という特殊極まりない人形に対してもできるかどうかは甚だ疑問である。
次に思い当たるのは。

(デスティニー………通信のログからなんか割り出せるかな? ああ、でもラクスさんの頼みは分かんないか)
通信のログが残っているかどうかは………………微妙だ。MS上でとったログは機密漏洩を防ぐために一日ほどで破棄するうえ、シンはデスティニーのOSへの負担を減らすため普段はログは取っていない。
プライベート回線やよほど重要な指令ならともかく、基本的にはログは戦艦任せだ。
普段は戦艦とはネットワークでつながっているからMS上でもログを確認することができ、問題は無かったのだが……

(流石にこんな事態は想定してないしなぁ………でもま、漁るだけは漁ってみるか、ラクスさんの頼みはともかくなんかサルベージできるかもだし)

アリスとデスティニー。
どちらを当てにするにしても一度家に帰ってからでないと調べようがない。
アリスはいないし、ログのサルベージは時間がかかる上に場所もとるからだ。
まさに、ここで考えていてもどうにもならない。大人しく明日になるのを待つしかない。
出た結論に、思わず大きな溜め息をついてしまう。
―――と、すっかり感触を忘れていたレミリアの足がかくかくと震えていることに気づく。

顔を上げ、レミリアの様子を見る。ふるふると羽を震わせ時折ひくりと全身を震わせている。白かった肌は紅潮し、ふぅふぅと気だるげな息。
とろんと蕩けた目に、口端には涎が一筋垂れていて。
それらの情報を総合し。思考し。結論。

「寒いんですか?」

蹴られた。


………まあ、シ ン だ し な 。
何が起こったのか気づけるようならルナマリアが夜、寂しさで夜泣きすることもありはしない。無論、性的な意味で。

蹴られた勢いのまま吹き飛ばされてしまう。
後頭部を打たぬよう、落ちる間際に両手を地面に着きそのままバク転の要領で足から着地し。
よろけて尻もちをついた。……アスランやルナマリア程の運動能力は無いのに無理するからである。

「あててて………なん、だ、なにするんだよいきなりっ!?」
流石に声が荒くなる。
心配したらこの仕打ち、いくら丸くなったからと言って笑って流せるようなことはできない。
シンの言葉に、だがレミリアは答えずただ震え。やがて開かれた口から出た言葉は。

「――――さーくーやーーーーー!!!」
「お呼びになりましたか、お嬢様」
突如(シンからすれば)レミリアの隣に現れた咲夜に対してレミリアはシンを指差し。

「殺せ!」
「かしこまりました」
「ちょっ!?」
レミリアの声とほぼ同時に投げられたナイフを、足のバネだけであらかじめ横っ跳びに跳んで避ける。
そのままいつでも逃げられるように窓のそばに寄りながらも困惑した声を上げた。

「待て、ちょっと待て! 少しは主人の命令に疑問を持ってくれよ!」
「あら、おかしなことを。いちいち命令に疑問を持ってたらお仕えできないじゃない」
肩をすくめ溜め息混じりの声で一蹴されてしまう。
手には大量のナイフが―――いつの間に回収したのか、先ほど投げたはずのナイフも混じっている―――握られている。

「そりゃ正論だけどさぁ!?」
「往生際悪いわよ、大人しく頭か胸をぶっすりやられなさいな」
「こちとら死にたかないんだって、おわっ!」
喋る合間にもナイフを投げられてしまう。
眉間を狙った一本は首を捻って躱し、心臓への一本は脚で蹴り弾く。
どちらもあたっていたなら確実に致命傷だ、その正確な狙いに背中に汗が滲む。
もし咲夜の狙いが正確「でなかったら」身体に突き刺さっていただろう。
弾いたナイフが地面に落ち、乾いた音を立てる中で咲夜は視線を僅かにレミリアに向ける。

「それにしてもお嬢様、何故ご自分で―――ッ!?」
ガラスが割れる音。シンが窓から外に飛び出したからだ。

僅かとはいえ意識を逸らした隙を突かれてしまった。
視界の端に映っていたが完全に虚を突かれては咲夜も反応しきれない。
そのまま時間を操る程度の能力を使う暇も無いほどの速さで逃げていく背中にナイフを一本投げはしたが恐らくは当たってはいないだろう、逆に武器を与える形になってしまったかもしれない。
苛立ちを隠しきれずに思わず舌打ちをしてしまう。
彼女らしくもないが、レミリアの前でここまでの失態を晒してしまっては流石に瀟洒さは保てようはずもない。

「……申し訳ありません、お嬢様」
「ン、いやいい。あそこまであっさり逃げに走るってのは私も予想外だったしな。
 メイド妖精どもに連絡をとらせな、もう館からは見えないかもしれないけど」

頷き、咲夜はメイド妖精を一体呼び紅魔館周辺の索敵情報を聞き出し。

「はあ?」
素っ頓狂な声を上げた。

「あン? どうした咲夜」
「いえ、その………あの黒黒がまた館内に進入したとの情報が」
「―――にゃんだとぉ?」

驚いて椅子からずり落ちそうになる姿はかりすまにあふれていた。
………カリスマは、微塵もなかったが。
椅子から最早完全にずり落ちたところでレミリアは慌てて姿勢を正す。
手遅れではないまだカリスマは有り余ってる、と自分に言い聞かせながら。

そんなレミリアを横目に、咲夜は唇に親指を押しあてながら呟く。
「なんで……ああそうか、白黒ね。もう、余所様巻き込んだりするわけないじゃない」

失礼な男ねぇとほっぺたをぷくぅと膨らませながら唇を尖らせて不満を顔中に張り付ける。
白黒―――霧雨魔理沙を回収してから逃げようなどという余裕を出されると流石に咲夜としては面白くない。
大体あの白黒泥棒は放っておいたってきっちり逃げ切れるだけの速さがある、それに気づいていない間抜けさもまた苛立たしい。

「でもま、間抜けは私が言えた義理でもない、か。それではお嬢様、これよりあの黒黒を追撃して参ります」
「うん、気をつけるようにね。まあ咲夜なら大丈夫だろうけど」
「………ありがとうございます」
主の手前、そうは言ったが。実際のところレミリアが言うほど楽な相手だとは思っていない。

確かにあの男、反応そのものはそう早くない、むしろ並みだろう。
ナイフを避けた時も弾いた時も目がナイフを追っていたわけではない。
あれが美鈴―――ただし、完全に油断が抜けきった全力状態に限るが―――だとナイフを目で捉えた上で避けれるはずだ。

問題なのはシンの反応速度ではない。
あの男は、ナイフが咲夜の手から離れる前に横に跳んだのだ。
ナイフを投げる直前の手の動きだけで首を捻じり脚を動かしたのだ。
まるで咲夜がナイフをどの位置に投げるかを推測したかのように。
それに、相手が目を逸らしたと見るや迷わずに窓の外へ飛び出すなどという行動。
派手ではあるが実際には一番堅実で的確な行動だ、下手に扉に向かおうとすればそれこそいい的になる。
戻りはしたが、あのまま闇夜に紛れられると追いようがない。

つまるところ。洞察と判断。
その二点に対してはシン・アスカという男は少なくとも並みではないという認識をしておくべき。
それが咲夜の出した結論だ。

「咲夜? どうかしたの、顔強張ってるけど」
「え? ああいえ、大したことではありませんわ」

どうやら知らずの内に顔から瀟洒さが消えていたらしい。
少し気まずくなり、何の気無しに咲夜は先ほど聞きそびれたことを聞く。

「そう言えばお嬢様? 
 ご自分では行かれないのですね、普段でしたら何が何でも自分の手でシバき上げようとなさるのに」
「シバくて、お前………あーいや、そうしたいのは山々なんだけどな、その、なんだ」


「腰が、抜けて動けないのよ」


(笑うな咲夜鼻血も出すな、今の言葉におかしなところは何一つ無いッッッ)
自分の感情を殺さなくてはならない、メイドとは実に因果な職業である。

「なんだぁよう! そんな目で私を見るなよぉ、なんなんだよう!?」
しかし、生暖かい目にはなっていたらしい。
何とも言えない空気が二人の間には流れ。

「………行って参ります」
「……ああ、気をつけて」

ひらひらと力無く手を振るレミリアに一礼し、咲夜は生暖かい目をしたままで扉を開けることなく部屋から出て行った。
咲夜が去った部屋で、レミリアは頭を抱えながらどうにかカリスマを取り戻す方法は無いかうーうー声を出しながら悩むのだった。
カリスマ? なにそれ、喰えんの。

赤い絨毯が敷き詰められた廊下のおかげで、多少早めに走っても音が響かずに済む。
シンは魔理沙がいる部屋を目指して紅魔館内を駆けずり回っていた。
「なんだっていきなり怒りだすかな、あの小娘はさぁ?」

怒った理由がさっぱり分からない。
さ っ ぱ り 分 か ら な い。

(どこの部屋だったかなぁ………ちゃんと覚えとくべきだったよ)
自分の迂闊さに溜め息を洩らしそうになる。

入るときは気を失っていたのだから仕方がないとしても、せめて窓からの景色で部屋がこの館のどの辺りにあるのか当たりぐらいは取るべきだった。
こんな気の緩み、C・Eで要所への潜入任務―――ゲリラ相手ではMS戦よりも、ナイフや銃を持っての白兵戦の方がどちらかと言えば多かった―――に当たっていたころではありえないことだった。
先ほど回収しておいた、自分に向かって投げられたナイフの刀身に気を引き締める意味を込めて触れる。

(っと、これ以上はまずいか)
廊下の角から妖精たちの影が見える。迷うことなくすぐ近くの部屋に音も無く入り込む。
外に妖精がいないことを確認し、窓を開けて壁をよじ登り二階の部屋の窓をゆっくりと開ける。

(いーまーせーんーねー、っと)
誰もいないことを確かめると音を立てないよう気を配りながら部屋に侵入した。
確認した通り誰もいなかったことと音が立たなかったことにふう、と安堵の息をつく。

別に息が上がったわけではない。この程度で息が切れるほどやわな鍛え方はしていない、これぐらいはパイロットとして当然だ。
現状のアリスの人形としての肉体はシンが16歳だった時のものと同一だが、知識は当然として筋肉のつき方はこの幻想郷に移る直前のものと変わっていない。
若い肉体に熟達した知識。
要は完全な、理論上としてのベストコンディション。
それが今のシン・アスカだ。
……無論、訓練を怠ればあっという間に筋肉は落ち、知識は錆つくのだけれど。

(さぁて。二階、か。どうやって降りるかねぇ)
魔理沙がいるのは一階だ、適当に妖精に「侵入者が二階にいる」ことを認識させ、二階に集めた上で自分は一階を悠々と捜しまわればいい。
C・Eのゲリラ共にはそう易々とはとれない行動だが、この館の妖精メイド達の錬度の低さなら十分に通じ得るだろう。

(やっぱ上が優秀だからかな? 気が緩むよなぁ、そりゃ………キラさんとかアスランとこもそうだったみたいだし)
この館への侵入者がほとんどいないのは、十六夜咲夜と紅美鈴。
あの二人がいるからこそだろう、そうでもなければあの妖精メイド達の錬度では簡単にレミリアの所までたどり着かれてしまう。
だが、上司が優秀すぎると部下はどうしても「あの人がいるから大丈夫」という、ある種の安心感を覚えてしまう。
こと組織においては一番拙い思考だ、全てに手が回る人間などいはしない。

例え全てを完璧に行えるような存在―――例えばキラ・ヤマト―――であっても同じことだ、純粋に、それこそ文字通り手が足りない。
組織においては、だからこそ―――

(だからこそ、君のような「そこそこ優秀な人間」が一番必要なんだよ、シン)
「………虎め」
忌々しく呟く。声が漏れてしまったことに気づき口を抑えるが、どうやら妖精たちには気づかれなかったようだ。
安堵の息をつく、そこに苛立ちが混じっていることがシンには腹立たしい。
(だからこそ、君のような「そこそこ優秀な人間」が一番必要なんだよ、シン)
「………虎め」
忌々しく呟く。
声が漏れてしまったことに気づき口を抑えるが、どうやら妖精たちには気づかれなかったようだ。
安堵の息をつく、そこに苛立ちが混じっていることがシンには腹立たしい。


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最終更新:2010年06月11日 21:26
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