<宴の夜に 後編>
「お、おお……これは!」
いつの間にか居間に戻っていたストライクフリーダムがシンの持つ皿を見て驚愕の声を上げた。
ふんわりと開いた花を思わせるように並べられた縞目の美しい切り身。引き締まった身と適度な脂が乗り、淡く光沢を放つ薄造りに皆一様に目を奪われていた。
「ふみゃあ……きれいだねー」
「慣れてないからちょっと雑になったけどな。一応気は遣ったんでこれで勘弁してくれ」
「いやいや、これで雑ってどうなのさ?」
「さくら亭の仕事で何度かやったことがあるって程度だからな。さすがにあそこの親父さんやパティと比べれば見劣りするさ」
おっと、と何かを思い出したように再びシンは台所に引っ込む。戻ってきたとき両手に抱えられた鍋の中身を見て、今度は由羅が声をあげる。
「これって……あら汁?」
「捨てるにはもったいなかったし、思い切って鯛尽くしにしてみた。ご飯とお茶もあるから刺身乗せて鯛茶漬けもできるぞ」
「おちゃづけ? メロディそれたべるー!」
「わかったわかった。フリーダム、メロディの分を頼む」
「あ、あぁ」
三度台所へと向かったシンが戻ったときには、ストライクフリーダムと由羅が同時に目を剥いた。
その手の中には、焦げ目のついた鯛のヒレが二枚。つまり、
「「ヒレ酒!?」」
「結構大きめだったから半分に分けてみた」
二つのぐい飲みにヒレを入れ、そこに温めた酒を注ぐ。ふんわりと香ばしい匂いが居間に漂ってくる。
知識としてはあったのだが、初めて作るヒレ酒の香りにシンは小さく安堵の息をついた。
「よし、できたぞ。さっさと飲め」
「僥倖っ……! なんという僥倖っ……!」
ボロボロと涙を流しながらストライフクリーダムは「ははー」と頭を下げて大げさにぐい飲みを受け取る。
だが、もう一つのぐい飲みを受け取った由羅の表情は硬かった。
「由羅? どうかしたか?」
何か失敗しただろうかと不安に思い聞くと、由羅は小さく口を開いた。
「――ねぇ、シンくん。ひょっとしてあたしのこと……」
マズイ、とシンの中で焦りが生まれる。
あの話を聞いたことを悟られてしまえば、この宴の意義が失われてしまう。
先ほどまで狂喜していたストライクフリーダムの顔にも動揺が浮かんでいた。
「ひょっとしてあたしのこと……好きになっちゃったとか?」
「――――は?」
予想だにしなかった言葉にシンはポカンと口を開ける。だがそんな少年の反応を余所に由羅は顔を赤く染めながら――酒によるものかは判別がつかないが――惚気た口調でさらに続ける。
「そりゃあたしが綺麗なのは確かだけどね~。いきなりでちょっとびっくりしちゃったわ~」
「……あのな、」
「ん~、でもねぇ……5年とまでは言わないけどせめてあと2、3年早く会えてればね~」
「ちょっと黙ろうかこのショタコン」
精神的なストレスにより発生した頭痛にシンは頭を抱える。
何故だろう、自分で望んでやったことなのに若干後悔をしてしまっている気がした。
「うわ美味っ! 美っ味! とろける様な脂の旨味と絶妙な弾力のハーモニーがマジたまらん! ヒレ酒の甘みとも相性良くて感動の倍プッシュだわ!」
「って何勝手に一人で食ってんだお前!?」
いつの間にか刺身の皿を片手に持ったストライクフリーダムがバクバクと食い漁っていた。
「返せよこの! 俺だってつまみたかったのを我慢してたってのにそんなに食う奴がいるか!」
「いいや限界だッ! 食うね! ヒャッハー! 次はあら汁だぁ!」
取り分けた椀には目もくれず今度はあら汁の鍋に手を伸ばすが、すんでのところでシンが鍋を遠ざける。
「させるかよ! もうこっちも我慢するもんか! 食われる前に食ってやる!」
「なにおぅ!? そうはさせるか!」
「ふふっ、ホント仲がいいわね~二人とも」
「そりゃ将来のお嫁さんですから! 少年が!」
「またそれか! いい加減しつこいぞ!」
「お付き合いを前提に結婚してこれからもいいお友達でいてください!」
「時系列くらいちゃんと統一しろ! っていうか振ってるだろそれ!?」
「私とサイクロンジョーカーしてタトバコンボしてジョーカーエクストリームしてください!」
「意味が分からん! というか物理的に別れてるぞおい!?」
「いつもながらイケメンなのにいいツッコミね、嫌いじゃないわ!」
「誰のせいで突っ込んでると思ってんだお前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「まったく……メロディ、危ないから離れてろ」
「はーい!」
言い争いながらもしっかりと全員分の刺身やあら汁を確保するシンとストライクフリーダム、
騒ぎに巻き込まれないよう距離を置くフリーダムとメロディ、
そして、そんな様子を見て大笑いしながら、そっと目尻に浮かんだ涙を拭う由羅。
それぞれの思いすらも巻き込んで、宴は新たな盛り上がりを見せていた。
「これでラストぉぉぉぉぉ!!」
「させるもんかぁぁぁぁぁ!!」
卓に並んだ鯛がほとんどその姿を消した頃、残った一枚の刺身を狙いストライクフリーダムとシンの箸が皿へと伸びる。
「なんの、もらった!」
「また皿を!? 待てこのっ……とっ!?」
そこで事件は起こった。
皿を抱えて逃げようとしたストライクフリーダムを捕まえようと立ち上がったシンが、バランスを崩して転んだのだ。
「へっ? ってうおっ!? マイシスタ!」
「むっ……!」
ストライクフリーダムは皿をフリーダムへと放り、シンを受け止めようとする。
が、あまりにも身体の大きさが違いすぎたせいかそのまま一緒に倒れ込んでしまった。
「ちょっ、二人とも大丈夫!?」
「シンちゃん!? ちいおねーちゃん!?」
「遠慮も知らず騒ぐから……!」
それを見た三人は慌てて二人の元へ集まる。
そして、固まった。
「ったた……って、大丈夫かS・え、ふ……?」
下敷きになったストライフクリーダムの無事を確かめようとしたシンの動きが止まる。
いつもの――そう、うっかり忘れてしまっていたがいつものパターンで、
右手が、胸を掴んでいた。
「――貴様」
「ま、待て! これは事故だ! 決してわざとなんかじゃない」
「怪しいわね~」
「由羅まで!? あぁもう! おいS・F、お前からも何か言って……」
冷たい殺気を放つフリーダムとジト目になる由羅から助けを求めて振り返ったシンの目に意外な光景が映った。
ストライクフリーダムが、顔を真赤にして胸を隠すように両手で覆っていたのだ。
「……あの、S・Fさん?」
「――き、」
「き?」
「記憶を失えーーーーーーーーー!!」
「ぐぼっ!?」
口の中に酒瓶を突っ込まれ、シンは無理矢理酒を飲まされる。
その中身が半分ほどになった頃、ようやく解放されたシンはそのまま仰向けになって倒れ込んだ。
――朦朧とする意識の中、「貴様もじゃー!」と同じようにフリーダムが酒を飲ませられているのが見えた。
「う……?」
気がつけば、部屋の中は真っ暗になっていた。
鈍痛を訴える頭を手で抑えながら辺りを見渡す。
由羅、メロディ、フリーダムが静かに寝息を立てていた。どうやらあの騒ぎの後疲れて眠ったらしい。フリーダムはシンと同じく「眠らされた」と言った方が正しいのかもしれないが。
そして、皆薄い毛布がかけられていた。身体を起こすまで気付かなかったが、シンの上にも同じようなものがかけられていた。
「――お、起きたかい」
声に振り返ると、ストライクフリーダムが顔を窺うように屈んでいた。
その顔に疲労はない。先ほどまであれだけ騒ぎ、酒を飲んでいたとは思えないほどに。
「S、F……?」
「あーあー、そんな無理しない。ずっと働きっぱなしだったんだからまだ寝てなって」
起き上がろうとするシンをやんわりと抑え、そっと寝かせる。
――何かおかしい。
そう思ったシンだったがそれ以上うまく頭が働かなかった。
「……今日はありがとう。本当に感謝してるよ。ま、ちっとアクシデントもあったがさ」
照れたように頬をかきながらも、少女は柔らかく微笑んだ。
「あとは私の仕事さ。だからゆっくり朝まで休んでな」
そう言ってストライクフリーダムは立ち上がり、玄関へと向かう。
どこへ、そう聞こうとしてもシンの身体は起き上がらず声も出ない。すでに半分意識が落ちかかっていた。
だがその様子に気付いたのか、ストライクフリーダムが振り返りフッと笑った。
「心配しなくていいさ。朝までには帰ってくるから」
じゃ、と軽く手を振り少女は外へと出ていく。
――シンが確認できたのはそれまでだった。
意識が沈んでいく中、少女が去り際に浮かべた儚げな笑顔が頭から離れずにいた。
――由羅の屋敷から数百mほど離れた丘の上に、『彼ら』はいた。
5人組の男たち。服装から顔を覆うマスクまで夜闇に紛れるように真っ黒に染まっている。
双眼鏡で屋敷を確認しながら、一人の男が口を開いた。
「リーダー、例のライシアンがいるって屋敷は本当にあれなんですかい?」
「あぁ、あの街で得た情報だ。間違いない」
「確かに人の出入りはあるみたいだが……いくらなんでも街に近すぎる。ライシアンってのは人間嫌いだった
はずじゃ?」
その言葉に、リーダーと呼ばれた男はマスクの内側で皮肉げな笑みを浮かべた。
「そう言われてるが、連中はどうも寂しがりらしいからな。離れたくても離れられんのだろうさ。俺たちにとっ
ちゃ助かる話だ」
「ちげぇねぇや」
下卑た笑いが静かに広がる。そこに同情や憐みなど一切なかった。
――ライシアンハンター。彼らはそう呼ばれている。
今や希少種族となったライシアンだが、それ故にその価値はすさまじいほどに高まっている。また法的にも
所有物として扱うことも可能なことから、彼らを欲しがる者は後を絶たない。
だが、所有物とするにも手順が存在する。要するに自らを所有物とすることに対しての同意を得なければなら
ないのだが、そんなことを進んで行うライシアンなど皆無である。
つまり、行き倒れたライシアンを拾いでもしない限り同意『させる』ために攫うことが前提となるのだ。
だがライシアンに対しても人間と同じように誘拐や拉致に準ずる行為は認められていない。よって彼らのよう
なハンターに依頼が舞い込んでくるのだ。
「しかしもったいない話だ。ライシアンってのはみんなとんでもなく美人だってのに金持ちどもがこぞって欲し
がるもんだから俺らは捕まえても一切手を出せない、生殺しもいいとこだ」
「ボヤくなよ。その代わりたんまりと報酬が出るんだからそれで我慢しろ」
「けどよぉ」
「……まぁ、抵抗しちまったら仕方ねぇって言い訳も立つがな。ちゃんと攫えば文句も出ないだろ」
含みを持たせたリーダーの言葉の意味を察し、4人の部下は火がついたように笑い出す。
要は生きて連れ帰ればいいと、ならばある程度手を出すこともできるというお墨付きを得て彼らはドス黒い
欲望をたぎらせていた。
「――おー、ゲスいゲスい。さすがの私もドン引きだわ」
「誰だ!?」
突如降ってきた声に5人は互いの死角を補うように円になる。腰に下げた艶消しを施された剣を引き抜き辺りの気配を窺う。
……が、何もいない。声の届く範囲には隠れられるような場所はなく、ハンターたちの間に動揺が広がった。
「せっかくこんなに空が綺麗だってのに、下がこんなんじゃ酒も不味くなるねぇ。いやはや、清濁を併せ持ってこそとは言うが、やっぱあんたらみたいな人間はどう考えてもアウトだわ」
「っ、上だ!」
リーダーの声に全員空を見上げる。
――月を背にして、無機質の羽を持つ少女が酒瓶を片手に宙で胡坐をかいていた。
意外な声の主にさらにハンターたちは混乱する。ただ一人、リーダーだけが敵意を隠さず声を張り上げる。
「なんだてめえは!?」
「なんだとは不躾だね。まぁいいや、答えてあげようか。別になんてことはない、月明かりに誘われて外へフラフラやってきた酔っ払いだよ」
それを証明するかのように手にした酒瓶を一気に煽る。瞬く間に中身がなくなり、少女は空になった瓶を放り捨てた。
「まぁ、今宵この刻に限って言うなら、」
声のトーンを落とした少女の気配が変わる。翼を広げ、腰に下げた銃らしきものを手にした瞬間にハンターたちは未だかつて味わったことのない寒気に襲われた。
「――あんたらの上に落っこちた、とびきり最悪な『不幸』だよ」
そして彼女の翼から、光の尾を引く羽根が一斉に飛び出した。
――翌朝、自警団は住民の通報を受けエンフィールド郊外にある丘へと急行した。
さながら局地的に魔法の絨毯爆撃を受けたような惨状の中心で、5人の男が意識を失った状態で発見された。
命に別状はなかったものの全員怪我をしており、意識が戻った後事情を聞こうとしても全員極度の錯乱状態に陥っていたためほとんど情報を得ることはできなかった。
後に彼らがライシアン狩りを生業にしたグループであることが発覚したため、余罪の追及を含め北方へと護送されることとなった。
彼らが何者かに襲われたのは確かだったが、目撃者もおらず、調査の結果から特殊な魔法を使う者であるということ以外には何も分からなかった。
現場に残っていた何かすさまじい熱量をもつものに撃ち抜かれたような剣を見た自警団第一部隊に所属する∞ジャスティスとセイバーが心当たりがあるとの報告をしたものの、被害者の護送が決定したことにより調査は中断、真相は闇の中へと葬られた……
――昼下がりのジョートショップに、それは前触れもなく現れた。
「ちーっす! 元気にしてっかい少年!」
――ジャキンッ!
「……ヘイ、デス子っち。お客様にいきなり剣構えるのはどうかと思うんだけど」
「お客じゃない人に対する礼儀なんか持ってないです」
「あー、剣下ろしてやれデス子。っていうか店の中で武器出すな」
「……はいです」
渋々ながらデスティニーは鼻先に突きつけていたアロンダイトを引く。両手を上げて無抵抗を示していたストライクフリーダムはわざとらしくほっと息をついた。
「いやはやびっくりした。で、大丈夫……じゃなさそうだねどう見ても」
「おかげさまでな。ったく、あんなに酒飲ませるとかどうかしてるぞ……」
「あはは、まだまだ子供だねぇ」
二日酔いによる頭痛でぐったりとカウンターに突っ伏しているシンを見てストライクフリーダムは悪びれもせずからからと笑う。こっちは昨夜の記憶がところどころ曖昧になってる程なのだから少しは反省しろと思わないでもないシンだったが今はそんな気力もなかった。
「で? 今日は何しに来たんだ? 悪いけどお前の相手できるようなテンションじゃないぞ」
「あぁ、そのことなんだけど……まぁ、なんだ、改めて言うとなるとちと恥ずかしいが」
「なんだよ」
「あるがとう、な」
そう言って深々と頭を下げるストライクフリーダムを見て、シンとデスティニーは思わず互いの顔を見合わせる。
「この世界で初めて会って、私が存在する理由を作ってくれた恩人なんだ。だから、なんとか助けたいって思った」
「……それで人間の俺をあの場に呼んだのか」
「ありゃ、バレてたか」
一晩経ったこともあり、シンはストライクフリーダムがなぜ自分を呼んだのかをおおよそ考えることができた。
ライシアンの人間に対する潜在的な恐怖心。それを払拭させるには彼女が受け入れる人間の手助けが必要だった。
彼女の住む屋敷で、彼女のために宴に尽くしてくれるような人間が。
「回りくどいことを……最初からそう頼めばいいんだよ。わざわざ自分が勝手に呼んでワガママ言ったみたいな悪者になろうとする必要なんかなかっただろ」
「少年……」
「ジャスティスが伝えたかどうか知らないけどな、もう一回言うぞ。人の手が欲しけりゃ素直に言え。必要ないものまで背負い込もうとするな」
ぐったりとしながらではあったが、シンははっきりとそう言った。
口に出したことで二日酔いとは別に昨晩から燻ってた苛立ちがいくらかなくなるのを感じていた。
「……これからは、なるべくそうするよ」
「あぁ、そうしろ」
「それで昨夜の報酬なんだけど、お詫びの意も込めてこれを」
「詫びなんかいいって。っていうかいったい何、を……」
ポンと手渡されたものを見てシンの動きが止まる。
見覚えのあるものだった。というか昨日見たものだった・
――例のスイッチだった。
「おいいいいいいいいいいいいいいいい!? 何渡してんの!? っていうか何持ってきてんの!?」
「私にはこんなものしかあげられないから……あ、こっからでも操作できるように改造したから安心して」
「できるか! っていうか間接的に自分の姉妹売るんじゃない!」
「不束者なマイシスタだけどどうか今後ともよろしくお願い……」
「不束なのはお前だ! 返す!」
スイッチをストライクフリーダムに突き返そうとするシンだったが、すぐに手ごと押し返された。
「そんな! 私の感謝の気持ちを受け取れないと!?」
「感謝の皮を被った悪意の塊なんかいるか!」
「わかった! じゃあ気持ち以外を受け取って!」
「一番大事なもの放りだして変なもの押しつけるなぁぁぁぁぁぁ!!」
押しては引いての繰り返しでスイッチが二人の手を交互に渡っていたが、タイミングがズレたのかぽーんと飛び出してしまった。
その落下地点には、デスティニー。反射的にキャッチしてしまったスイッチをしげしげと眺めて頭上に疑問符を浮かべていた。
「なんですかこれ?」
「デス子!? いいか、それを絶対押すなよ!?」
「え? あ、はい(カチッ)」
「ってだから押すなああああああああああああああ!!」
迷わずスイッチを押し込んだデス子がシンの絶叫を聞いてビクッと身体を震わせた。
「え? でもそう言われたらやるなって言われたことをやれって教えられて……」
「どこの誰だそんな余計なこと言ったのは!」
「それも私だ」
「お前かよ!? 森羅万象お前のせいなのかよ!?」
「ちなみに嘘だ」
「これ以上話をややこしくするな頼むから! とにかくデス子! もう絶対に押すなよ!? 絶対にだ!」
「は、はい(カチッ)。あ、ちがっ!?(カチッ)じゃなくて!(カチッ)ってあぁもう!(カチッ)
とりあえずもう一回(カチッ)」
「おいィィィィィィィィィィィ!? 何やってんの!? 何やってくれてんのお前!? しかも最後明らかにわざと押したろ!?」
スイッチを連打するデスティニーにシンは頭痛も忘れて叫びまくる。その様子に、ストライクフリーダムは達観したような目でぽつりと言った。
「あーあ、5回連続で押しちゃったかー」
「何!? 何が起こるんだ!?」
「しばらく全部のスイッチがONになったままロックされます。数十分くらい」
「なんでそんな機能を!?」
「面白そうだったからつい」
「面白くねぇよ俺は! あいつここに来ないだろうな!?」
「あ、出る前にここに来るって言っちゃった。てへ」
「終わったあああああああああああああああああ!!」
――シンの予想通り、というかそれよりも早くフリーダムもジョートショップにやってきた。
だがそのあまりにも壮絶な有様にシンとデスティニーは口を半開きにしたまま目が点になり、ストライクフリーダムはそのまま放っておけば笑い死にするんじゃないかと思うほど床を転がりながら爆笑していた。
……そのまま何もせず帰っていくフリーダムの背にシンは同情の念を抱かざるを得なかった。
ある昼下がりの日、エンフィールドはいつものように平和だった。
最終更新:2010年10月18日 01:00