東方ネタ-07


さて、みょんなことから紫の家の一日家政夫を引き受けることになったシン
当然他に手伝ってくれる者などおらず、全ての家事を一人でやることになったのだが
しかし、その作業は思いのほかさっさと終わってしまった
それも当然で、シンは幻想郷に来てからほぼ毎日紅魔館の家事を行っているのである
他にメイドがいるとはいえ、あれだけでかい館の家事を毎日行っているのだ
そりゃその手のスキルが上がり、小さな家屋一つ程度の家事だったら簡単にこなせてもおかしくはない
というわけで、さっさと全ての作業を終え、コタツでゆっくりお茶を飲むシン
「ふぅ、やっぱり一仕事した後の一服は最高だな。」
心地よい倦怠感と共に、ため息をつきつつつぶやくシン

ぶっちゃけ湯飲み片手にそんなことをつぶやく姿は、ひどく爺臭い
そんな風にシンがリラックスしていると、不意に彼の腹の虫が鳴いた
「……そういや俺、朝飯を食べる前にここに連れて来られたんだっけ……」
ここにきてようやくシンは、自分がまだ何も口にしていないことに気がつく
「時間も丁度いい頃合だし……なんか作るか。」
直も騒がしい腹の虫を抑えるために、コタツから抜け出し台所へと向かうシン
そして台所を漁っているなか、ふと紫に頼まれていたことを思い出す
「そういや、式神とかいうのに何か作ってくれって頼まれてたっけ。」

冷蔵庫の中身を見ながら何を作ろうか悩むシン
正直なところ、シンは式神というものが一体どんな物なのか分かっていなかった
ただ普段は仕事を任せていると言う紫の言葉から、使い魔みたいなものであろうと想像しているだけである
なので、料理にも何か特別なことをしなくちゃいけないかも知れないなどと難しく考えてしまってるのだが
「悩んだって仕方ないか、とりあえずお粥でも作って駄目なようなら作り直そう。」
散々悩んだ結果、あきらめてシンプルに考えることにしたシン
冷蔵庫から食材を取り出し、早速調理を開始した

「むぅ、思ったより時間かかっちゃったな。」
お盆を両手でもち、紫家の廊下を歩くシン
そのお盆の上には完成したお粥と、自分用におにぎりがのせられている
「まぁ、ご飯を炊くところから始めたんだから仕方ないんだけど……」
先ほどから我慢の限界だと言うようにがなりたてる腹の虫の音を聞きながら、ため息をつくシン
最初、シンはご飯を炊いてる間にパンでも焼いて食べてしまおうと思っていたのだが
なんと紫の家にはパンがなかった
と言うよりも、洋食を作るための材料がなかった
なので、シンもご飯が炊けるまで待つしかなかったのだ
それでも未だにその盆の上のおにぎりに手を出さないのは
病人を差し置いて健康な自分が先に空腹を満たすなんてことが許せなかったことと
どうせ食べるなら一緒に食べた方がいいだろうという、彼の律儀な性格が働いたからだった
つくづく損な性格をしていものである

「っと、ここだな。」
一つの部屋の前で、足を止めるシン
「失礼しますっと……」
障子張りの戸を、あまり音を立てぬようゆっくりと開き、中に入る
部屋の中には布団が一つ敷いてあり、その中で女性が一人静かな寝息を立てて眠っていた
「まだ寝てるか……」
畳に持ってきたお盆を置き、シンもその場に座り込む
しかしこうなると手持ち無沙汰になる
下手に起こすのは憚れるし、かといってこのまま放っておくとせっかくのお粥が冷めてしまう
「さて、どうしたもんか……ん?」
ここでシンはふとあることに気づく
風邪の看病御用達アイテム、濡れタオルが女性の頭に乗っていないのだ
あれがあるのと無いのでは、熱の引き方にかなりの差が出る
そして看病する側にも、かなりする事に幅をもたせることが出来る
というわけで、手持ち無沙汰なのも相まって、タオルと水を用意しようと立ち上がるが

「ん、うぅ……」
身じろぐ音と声と共に、女性がむくりと体を起こした
まさか自分のせいで起こしてしまったかと、少し不安になりながら女性へと目を向けるシン
女性は寝ぼけているのか熱のせいなのか、焦点のあっていない目を瞬かせながら
「ご飯……油揚げ……」
と鼻をヒクヒクさせながら、それだけを呟いた
その言葉にずっこけそうになるシン
どうやらお粥の匂いに釣られて起きたらしい
自分のせいでない事がわかりホッと安心するシン
そしてお粥の入っている土鍋の蓋を開けると、蓮華で中身を掬い
一度自分の口元へ持っていき、息を吹きかけよく冷ました後、女性の口元へと運んだ
「ほら、熱いかもしれないから気をつけて食えよ。」
シンのそんな言葉が届いているのかいないのか、ともかく女性は虚ろな眼で蓮華を見つめるとゆっくりとかぶりつく
そして中身をゆっくりと咀嚼すると

「美味しい……」
ものすごく幸せそうな顔でもらすように呟いた
その顔に満足しつつ、シンは二杯目をよそう
しかしなぜ彼女はお粥の中に油揚げが入っていることが分かったのだろうか
冷蔵庫の中に何故か大量に余っていたので、勿体無いと思いお粥に刻んで入れて見たのだが
もしかしたら彼女の好物だったのかもしれない
そんな他愛のない事を考えつつ、先ほどと同じように女性の口元へと運んでゆく
それを女性は先ほどと同じように咀嚼し、その度に幸せそうに頬を緩める

そんなことを何回か繰り返すうちに、いつの間にかお粥はなくなっていた
腹が膨れて満足したのか、女性は既に布団の中で静かな寝息を立てている
「あんな風に幸せそうに食べてもらえると、作ったかいがあるってもんだよなぁ。」
女性の綺麗な寝顔を見ながら、満足そうに微笑むシン
「そういえば、マユが熱を出したときも、こうやって看病してやってたっけ……」
ふと、懐かしい過去を思い出すシン
まぁその時お粥を作ったのは自分ではなく母親だったのだが
そういえば最近は色々忙しくて、こうしてゆっくりC・Eの事を思い出すのもひさし……
「え……?」
そこまで思って、重大な違和感に気づくシン
自分は今何を思った?C・Eの事を思い出すのが久しぶり?
自分が今紅魔館で働いているのはC・Eへ帰るための足がかりとするため
そう、あくまで目的はC・Eへと帰ること

ならばどんなときでも頭の中にはC・Eの事を思っていなければならないはずだ、だというのに
「俺が……忘れていた?C・Eをの事を?」
それはあり得ない、あり得てはいけない!
あの世界の事を忘れるなんて、あっちゃいけない!
他でも無いこの俺が!
「ああああああああああああ!」
焦燥からくる恐怖を、大声で叫ぶことによって振り払うシン
「んぅ……」
その声に反応したのか、布団で眠っている女性が億劫そうに寝返りをうった
その気配にハッとなり、あわてて口を抑えるシン
「そうだ、落ち着け、COOLになるんだシン、時間ならたっぷりあるってパチュリーさんも言ってたじゃないか。」

シンは落ち着くためにパチュリーから言われた事を思い出した
彼女が言うには、外の世界と幻想郷はそれぞれ独自の、違う時間が流れており
此方で何年暮らそうが、向こうに帰るときは誤差はあるが殆ど同じ時間に帰れるらしい
「時間ならある、まだ慌てるようなときじゃないんだ、目の前の問題を一つ一つ解決していこう、そうすればきっと帰る手段も見つかるはずだ。」
気を取り直し、さしあたって迫る問題(つまりは女性の看病)を解決するため、土鍋を片付けるシンであった


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最終更新:2008年06月25日 02:10
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