織部神社 門
「ここだよ」
俺と小蒔は今大きな神社の前にいる。
どうしてこんなところにいるのかというと小蒔の親友がこの神社の掃除のアルバイトを捜していて
その掃除のアルバイトを俺が紹介して貰ったからだ。
「織部神社っていうのか、でかいな…」
「小蒔様」
後ろで声がしたので振り返る。
黒髪に白い肌の清楚な女が立っていた…こういうのを大和撫子って言うんだろうな。
「雛乃!」
雛乃…アルバイトを捜している小蒔の親友か。
「そちらの殿方はもしや?」
「うん、この人が昨日話した飛鳥シンくんだよ」
「織部雛乃です。よろしくお願いします」
「よろしうっ…」
胸の辺りがチクリとして挨拶を中断してしまった。
「どうしました飛鳥様?」
「いや、ちょっと…」
どうしたんだろうか?胸の辺りを触ってみるが何もない。なんだったんだ?
「…そういえばなんで様付けなんだ?」
「小蒔様のご友人は私にとっても大切な人ですので」
「はあ」
「ここではなんですので、どうぞ中にお入りください」
「あ、ああ」
織部神社 母屋
俺たちは居間に通されアルバイトの概要を聞かされた。
敷地を掃き掃除するのが大体の仕事の概要で、週に少なくとも一日は来て欲しいこと
望めば朝食・昼食・夕食は織部家で食べていいとの事だ。
「でもさーどうしてすぐに見つからなかったの?すごくいい条件なのにさ」
確かに時給もいいし、いつ来てもいい。その上、三食付きなんてかなりの好条件だ。
「今まで何人か雇ったんです。でも皆さん辞めていってしまって…辞めた理由を聞いてみると敷地が広いので掃除がかなり大変
であるということとそれと姉様が…」
「オレがどうしたって?」
声がした方の襖が乱暴に開き女が入ってきた。
女は雛乃とは正反対の風貌をしている。
「雪乃!」
「おっ小蒔~来てたのか!ん、そいつは?」
「ボクのクラスメートの飛鳥シンくん。ここでアルバイトすることになったの」
「ふ~んそいつが…そんな貧弱そうな奴で大丈夫なのかよ。まーたすぐに逃げださなきゃいいけどな」
『ブチッ』
俺の中で何かが切れた。
「女の癖にオレなんていう男女に言われたくないな」
『う…ボクもだめかな…』
「なんだと!いい度胸じゃねえか表に出ろ、勝負だ!!」
「ああ、やってやるさ!!」
「ね、姉様っ!」
「ちょ、ちょっとシンくん!」
織部神社 母屋裏庭
俺は今掃き掃除をしている。
なぜかというと明日の昼飯代を稼ぐためだ。
小蒔はついさっき帰っていった。
掃除を手伝ってくれるって言ってくれたけど、流石にそこまで甘えるわけには行かない。
「痛っ…」
俺の体は満身創痍だ。
なぜかというとさっき雪乃にボコボコにされたからだ。
雪乃、織部雪乃は薙刀の達人で雛乃の双子の姉だった。
果敢にも俺は素手で薙刀に立ち向かっていったけど、流石に勝てるわけがない。
「くそ…悔しい」
こんなので誰かを守れるわけがない。だから俺はステラを…強くならないとな、強く。
「そんなに焦らなくても餌は十分にあるよ」
茂みの奥から声がした。
誰だ?いやこの声は聞き覚えがある。俺の怪我の原因、織部雪乃だ。
「ハハ、くすぐったいな。こら、そんなとこ舐めるなって」
茂みの奥には織部雪乃が四匹の犬とじゃれていた。
「へぇ、アンタにも女の子らしいとこがあるんだな」
「な…」
俺の声を聞いて織部雪乃が固まる。
「ひ、卑怯だぞてめぇ、隠れて見てるなんて」
「別に隠れてなんかない。掃除していたらたまたまアンタがいたそれだけだ」
「ぐ…」
「首輪をしてないけど野良犬なのか?」
「だ、だけどちゃんと躾をしてるし餌もあげてる。他人に迷惑掛けたりしない。だから見逃してくれ!」
「見逃す?なんのことだよ」
「保健所に言わないでくれ…」
保健所?そうか野良犬が捕まって飼い主が見つからなかったら…
「言わないさ。生きられる命なら生きるほうがいいだろ?」
「お前…」
「でもなあ、普通はつないでいない犬を見たら恐いと思うぞ。飼えないのか?」
「ああ…」
なにか事情があるのか…俺の家は無理だし。
「じゃあ飼い主を見つけないとな。二人で頑張ればなんとかなるだろ?」
「…わ、悪かったな。さっきお前を馬鹿にして怪我さして」
「もういいよ。俺も悪かったし、それに…」
「それに?」
「さっきのアンタの笑顔を見てたらさ、悔しさなんか吹っ飛んだよ」
「な…」
言ってから気付いた、俺は何て事を口走ってしまったんだということを。
「…お前のことシンって呼んでもいいか?」
「ああ、いいよ。じゃあ俺もアンタのこと雪乃って呼ばせてもらうぞ」
「ああ、もちろんだぜ」
「じゃあさっそくうっ…」
傷の痛みではない痛み。雛乃に挨拶をしようとしたときに起こった胸を刺すような痛みが再度起こった。
「どうしたんだシン?」
「いや、何でも…」
真神学園 オカルト研究室
暗い教室に二人の生徒の姿がある。
一人はオカルト研部長、裏密ミサ。
もう一人は真神学園生徒会長でマドンナの美里葵。
二人は中央に置かれた水晶玉が映し出している人物を見ていた。
「ど~お~この人形の効力は~」
「すごいわミサちゃん…これがあれば他の女の子にうつつをぬかせないわ」
裏密の手にある人形。
それはシン・アスカを模っており胸には針が刺さっていた。
「ありがとうミサちゃん…ミサちゃんわかってる?」
「う~ふ~ふわかってるわ~皆には秘密ね~」
「うふふ…うふふふふふふ」
静寂の教室を美里の笑い声が木霊した。
最終更新:2008年06月25日 03:02