渋谷駅前
「人混みがすごいな…」
人混みで溢れかえる歩道。シン・アスカはその中心にいた。
なぜこんな所にいるのかというと、いつものようにいつものメンバーでラーメン屋に行こうとした時に、遠野杏子が事件を持ち込み、その事件を調査するために渋谷に乗り込んだからだ。
事件というのは渋谷区での殺人事件。普通の殺人事件ではなくカラスが殺人を犯すというものだった。
その背後に美里たちのような力を持つ存在を感じ取ったシンたちは、事件が起こった現場、代々木公園に向かっていた。
「…やばい信号がうっ」
「きゃッ!!」
歩行者用の信号が点滅していることに気付いたシンは急いで渡ろうとしたが、
ちょうどシンの前を横切っていた少女とぶつかり倒れこんでしまった。
「痛たた…」
目の前にはシンの妹、マユと同じ髪形に髪色をした美少女の顔があった。
「あ…あの」
「え?」
「手が…胸に…」
「あ!?」
シンは見とれていてしまっていて自分の置かれた状況が把握できていなかった。
今の状況はシンがこの少女を押し倒し胸を掴んでいるというもの。
傍から見るとかなり危ない光景になっていた。
「ご、ごめん!!」
シンはすぐに跳ね除き謝罪する。
「いえ…わたしがボーッとしていたのがいけないんですから」
「で、でも…」
「大丈夫ですから」
少女は笑顔で許してくれた。シンは内心ホッとする。
「怪我はないのか?」
「はい。あの…よかったらお名前を教えて頂けますか?」
『名前を聞いてどうするんだ?まさか訴えたり…俺が悪いんだし正直に言うか…』
「シ、いや飛鳥シン…」
観念したシンは自分の名前(この世界での)を少女に告げた。
「飛鳥シンさん…あっごめんなさい。おかしいですよね。初めて会ったはずなのになんだか昔…どこかで…」
『昔か…マユが大きくなったらこんな風になってたのかもな。』
「飛鳥君…どこなの?」
声のした方、横断歩道の向こうで美里がシンを捜していた。
「あ…変なこと言ってごめんなさい。また会えるといいですね。それじゃあ…」
少女はそう言って去っていった。
「飛鳥君よかった…みんな捜してたのよ」
「え…あ、美里か」
さっきまで横断歩道の向こうにいた美里がいつのまにかこちら側に来ていた。
シンは信号を見るがまだ赤のままだった。
『いつの間に来たんだ?』
「さっきの人は?」
「いや、ちょっとぶつかって押し倒してしまって…うっ」
説明する途中にシンの胸を、刺すような痛みが走った。
織部神社でも味わった痛みである。
「みんな待ってるわ行きましょう」
「わ、わかった…病気なのか?」
渋谷 路地裏
「これは事故だ!! 信じてくれ!!」
シンと美里がみんなと合流したのと同時に女性の悲鳴が聞こえて来た。
駆けつけると複数のカラスに女性が襲われていた。
そのカラスをその場にいた槍をもった金髪の高校生、雨紋雷人と協力して倒したのだが、その後が問題だった。
襲われていた女性を助け起こそうと駆け寄ったシンは、石につまずいてしまい女性の胸にダイブしてしまったのだ。
シンが起き上がり振り返ると殺気が立ち上っていた。
「シンくんのエッチ! 変態! スケベ! 」
「飛鳥君…不潔よ…」
「ワ、ワザとじゃないんだ信じてくれよ!!」
「シン、骨くらいは拾ってやるからな」
「すまん飛鳥。俺たちじゃどうしようもない」
「こ、この薄情者ぉ!!」
俺たちが助けた女性、天野絵莉はフリーのルポライターであり、このカラス事件を追っていた。
彼女と話している途中、唐栖亮一と名乗る男の声が聞こえ代々木公園に来いという声が聞こえた。
雨紋によるとこいつがこの事件の黒幕らしい。
公園内の工事現場の鉄骨の上で俺たちは対峙することになった。
なったんだが…痛い…
俺の頬は三倍に膨れていた。なぜかというとさっき小蒔に何百回もビンタを貰ったからだ。
それに胸が痛い。あの、胸を刺すような痛みがずっと続いている。
「そこの君もそうは思わないかい?」
「え、ああそうだな」
いきなり話を振られたので反射的に肯定してしまった。
辺りを見回すと京一と醍醐が口を開けてこっちを見ている。
「シンくんサイテーだよ!!」
「へ?うっ…」
今まで以上に強い胸の痛みについ声が出てしまった。
「葵がアイツに相応しいなんて本当に思ってるの?!」
…やってしまった。痛みがひどくてまったく話を聴いていなかった。
「み、美里ごめん!! 話聴いていなくて…本当にごめん!!」
「飛鳥君…」
はあ…今日は間違いなく厄日だ…
俺たちはなんとか唐栖を倒した。雨紋によるともう力を感じないんだそうだ。
だけど他にもこんな力を持った奴がいるだろう。そう雨紋は言っていた…
俺は嘗て力を求めた。戦争を失くす力…議長の言葉に従って、デスティニーで全てを薙ぎ払った。
でも今思えば俺も唐栖と同じ いや、あいつの操るカラスと同じだったのかもしれない。
力を与えて貰い、何も考えないで命じられるままに力を振りかざして
その結果、故郷を撃つっていうことになった上にあと少しでルナを、大切な人をこの手で…
『お前が欲しかったのは本当にそんな力か?!』
俺が欲しかった力は…全てを薙ぎ払う力じゃなくて大切な人を守る力だったんだ。
美里も京一もみんなこの町を守るために戦っている。
だから俺はこれからも、みんなと一緒に居てみんなを守りたい。
あの世界で傷つけてきた人たちの為にも。
「あっこの服も似合うよ葵!!」
「そうかしら…飛鳥君どう?」
「えっ似合ってると思うよ」
「よしっ! じゃあこれも追加だね!!」
代償は高くつきそうだけど…
最終更新:2008年06月25日 03:18