「やっぱり止めようぜ。あそこは本当にやばいんだって」
放課後急に倒れてしまった美里を遠野のアドバイスに従って、オカルト研に連れて行った俺たちは、そこで裏密の診断を聞いた
なんでも美里の深層心理に誰かが侵入しているんだそうだ。
遠野が話していた、墨田区で起きている眠ったまま死んでいく高校生達の事件。
ちょうどその事件が起こった頃に美里は墨田区に行っていた。何が関係があるのかもしれない。
それはともかく、俺達は美里を治すため裏密に紹介された桜ヶ丘中央病院に向かっている。が…
「俺は絶対行かないからな!!」
さっきから京一がずっとこんな調子だ…
京一は桜ヶ丘中央病院に行ったことがあるらしい。
「別にいいけど。そんなことしたらボク、一生口聞かないからね」
「うっ…わかったよ」
京一は観念したらしい。ブツブツ言いながらも付いて来ている。
「ふぅ」
美里は意識を失っているので俺が学校から背負っているんだが、流石に疲れた。
「飛鳥、変わろうか?」
「正直助かる…ん?」
離れない。美里は意識を失っているはずなのに首に回した腕が離れない。
「どうした?」
「いや、離れないんだ…しょうがない病院まで頑張るよ」
「そうか、わかった」
桜ヶ丘中央病院 ロビー
「すみません誰かいませんかー!」
遠野の声が病院内に響き渡る。が、誰も出てくる様子がない。
「誰もいないのか?…とりあえず美里をソファに移そう」
…やっぱり離れない。みんなに手伝って貰ってやっと美里が離れた。
「いらっしゃいませー」
美里をソファに移すと病院の奥からナース服を着た巻き髪の女が出てきた。
それにしても、いらっしゃいませって何だよ…
「急患なんだけど…」
「久しぶりのお客様だから~ゆっくり遊んでってね」
「…話が伝わらないな」
『ドスン ドスン ドスン』
いきなり病院内が揺れ出した。
「地、地震か!?」
「来るぞ…来るぞォッ!」
「うるさいよッ! このガキ共!!」
現れたのは巨大な女。
でかい、醍醐よりも大きい。
「わしは、この病院の院長の岩山 たか子だ」
「ちなみにわたしは看護婦見習いの高見沢 舞子で~す」
なんかすごいなこの病院。
「で、用があるのはどっちだい?」
「え!?」
「お前かい?それともそこのちっちゃい嬢ちゃんかい?」
「あっ この子です」
遠野が美里を指差す。
すると岩山先生は巨体を揺らしながら美里に近づいていった。
「どいつの子だい? そこのいい身体の子かい? それともそこの美少年かい?」
「子って?」
「うちは産婦人科だよ。この子が妊娠してるんだろ?」
「妊娠って…葵妊娠してるの!?」
「だからここに来たんじゃないのかい?」
「いや、俺達は友達に勧められて…」
裏密のやつ、なんてところを紹介するんだよ…
「う~ん、華奢だと思ったがかなり良い身体してるじゃないか
こっちにおいで」
いきなり俺は引き寄せられ抱きしめられた。なんてことだよ! 俺が一切反応できないなんて…
というかぐるじい…
「シン君が肉に取り込まれてる!?」
「ア、アトハタノム…」
京一が恐れた理由がわかったよ…
「シ、シィィィィィィィィィィィィィン!!」
薄れ行く意識の中、京一の俺を呼ぶ声が聞こえた。
なんとか生存することができた俺とみんなは岩山先生から美里の診察結果を聞いた。
先生によると美里の意識が戻らないのは意識が何者かに束縛されているかららしい。
そいつを見つけて止めさせないと美里は死んでしまう。
絶対に止めてみせる。俺はもう大切な人を失いたくない…
遠野は美里の様子を見るために残った。そのかわり…
「わあ、お出掛けだ~うれし~な」
高見沢がついて来ることになった。
先生によると高見沢には普通の人間にはないものを持っているらしい。
「レッツゴ~」
本当に大丈夫かよ…
「あっ…飛鳥さん偶然ですね…私のこと覚えてますか?」
不意に掛けられた声で後ろを向くとカラス事件の時に渋谷で事故のせいで、
《本当に!》事故のせいで押し倒してしまった少女がいた。
「お、覚えてるよ」
「嬉しい…」
「おいシン、何してんだ…あっどうも」
やばい。京一にあの事故のことを知られると何を言われるかわからない。
いや、京一よりもまずいのは小蒔か。せっかく機嫌を治して貰ったばかりなのに。
「こんにちは」
「なに?シンの知り合い?」
「えっ…いえ 私が勝手にそう思ってるだけです。ごめんなさい引き止めたりして
あの飛鳥さん。私、比良坂 紗夜っていいます。・・・また今度―――
また今度こんな風に偶然に会えるといいですね。それじゃ…」
「おいシン、あんな可愛い子とどこで知り合ったんだよ」
「し、渋谷。それはいいから早く行こう。美里が心配だ!」
この話は早く終わらせないとまずい、そう思った俺は先を急いだ。
「怪しいな・・・お前あの子と何かあったんじゃないのか?」
「な、何もないって」
「エッチなことしたんじゃないだろうな?」
「ち、違う!! あれは事故なんだ!! 転んだ先にたまたま胸があって…」
「…胸揉んだのか」
なんて俺は馬鹿なんだ。軍人なのに誘導尋問に、いや誘導尋問ですらないな。自爆してしまった。
自爆はあいつの専売特許なのに…
「シンくん最低…」
ああ、世の中はなんて無情なんだ。
墨田区 白髭公園
あれから小蒔は口を聞いてくれない。
京一にはラッキースケベって言われるし、全然ラッキーじゃないだろ。
断固抗議するアンラッキースケベだよ俺は。いやスケベは余計だ。ただのアンラッキーだ。
それよりも高見沢だ。この公園に入ってから何かおかしい。
いや今までも十分おかしかったんだが、今はそれに輪をかけておかしい。
さっきからずっと誰もいないところに話しかけている。
「なあ高見沢。何をしてるんだ?」
「幽霊さんたちとお話だよ~」
「そうか、幽霊さんたちとお話しているのか…ってなに言ってるんだよアンタは!」
「ここには成仏できない幽霊さんたちがいっぱいいるんだよ」
「本当に見えるの…?」
「うんっこの辺りはね…東京大空襲のときに爆撃されて、たくさんの人が犠牲になったの~今もね戦争が終わったこともわか
らないまま、苦しんで彷徨ってる人がいっぱいいるの」
…父さん達はどうしてるのかな。やっぱりここの人たちと同じで苦しみながら彷徨っているのかな…
「それに~飛鳥くんの後ろにも沢山幽霊さんいるよ~」
「へっ!?」
「大丈夫~悪い人たちじゃないよ~飛鳥くんのこと見守ってくれてるから~」
父さん達かな…ははっ 頑張らないとな
頑張って美里を助けるよ。父さん、母さん、マユ。
白髭公園 ???
「ちょっと醍醐くん速いよー」
醍醐が俺達の前を足早に歩いている。
醍醐は幽霊が苦手らしい。俺も会ったことないからわからないけど醍醐のはちょっと異常だ。
「待ってたわよ」
醍醐の前には茶髪の女が立っていた。
今まで会ったことのない…高飛車そうな女。う~ん、ルナは高飛車だったかな。
「待ってたってアンタは…」
「こっちには全部わかってんのよ。あんたたちとあの女の関係で、ここに何しに来たのかもね」
こいつが美里を…
「ふふふ、私は藤咲 亜里沙。でもあんたたちも変わってるわね。あんな面白みのないお嬢様を助けるために、こんなとこまで
来るんだもんね」
「なんだとっ 葵はボクたちの大事な友達なんだ。葵を悪くいう奴は許さない!!」
俺も小蒔と同じ気持ちだ。
「あはははっ 麗司もとんだ読み違いをしたもんね。こんな青春馬鹿に私達が負けるはずがないのに」
「そいつが主犯か。今までの事件、アンタたちの仕業か?どうしてこんな…」
「ガタガタうるさいんだよ!! あの女を助けたいんなら黙ってついてきな」
そう言って女は近くにあった廃ビルに入っていった。
「あの人の後ろにいる男の子…あの人を助けてって言ってた」
高見沢が突然そう呟いた。
この事件の犯人は嵯峨野 麗司という奴だった。
苛められていた嵯峨野が美里に優しくされて、いわゆる自分だけのものにしておきたくて、美里を夢の世界に閉じ込めていたらしい。わからなくもないけど、それで美里を苦しめるのはやっぱりおかしい。
俺達は夢の世界で嵯峨野と藤咲を倒した。
俺達と藤咲は無事だったけど嵯峨野は意識を取り戻さなかった。
あいつは生きるのに疲れたと言ってた…家族が死んでしまったとき、俺も生きるのに疲れてた。
だけど、支えてくれた人がいたから俺はここまでやって来れた。
今度は俺が支えになってやりたい。嵯峨野が目を覚ましたときに生きるのが楽しくなるように。
藤咲にはいじめで死んでしまった弟がいた。だからいじめを憎んでいた…
高見沢が藤咲の後ろに見た幽霊はその弟。高見沢が弟の言葉を藤咲に伝えた。
弟は藤咲に幸せになってと言っていた…
廃ビル前
「結局、誰が悪いのかよくわかんなくなっちゃった」
「そうだな…」
「待って」
廃ビルから藤咲が出てくる。
「もういいのか?」
「うん…ねえあたしもあんたたちの仲間に入れてくれない?」
「はあ?」
「あんたたちといると楽しそうだし…
それに飛鳥くんの戦う姿、とてもかっこよかった…」
「なっ」
そういいながら藤咲は腕を組んでくる…これは当たってるんじゃないのか?
「あ~ずる~い~舞子も~」
反対側の腕を高見沢が取った。ダブルで当たってる…
「シンくんいやらしい…」
小蒔が汚物を見るような目で見ている。
はあ、俺は本当に不幸だな…
「胸が当たってにやにやしてるんだよーホント、シンくんHなんだから」
「そうね…うふふ、うふふふふ」
「いたたた…」
「どうしたシン?腹でも壊したか?」
「い、いや…また胸が痛い…」
最終更新:2008年06月25日 03:23