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悠久幻想曲ネタ-43


 ――弧を描く光の矛先を仰け反ってかわす。
 かすかに肌に感じる熱にぞっとしながらもなんとか後ろへ飛んで距離を取る。

「逃がすかよ、オラァ!」

 アビスの両肩のバインダーが展開し、六条のビームがシンへと伸びる。
 ナイフで直撃コースのものは防いだが、軌道の予測を誤ったひとつが肩をかすめた痛みに顔を歪ませる。

「このっ、正気かよ!? こんなところで!」
「バレる前にカタをつけりゃいいって話だ!」

 次々と突き出されるランスを受け流しながらシンは考える。
 完全にデスティニーと分断されてしまった。あの2体を相手にしている彼女も気がかりだが、今のこの状況で
はそんな心配をする余裕すらない。
 ここまで派手にやっているとはいえ、こんな路地裏では自警団がやってくるのも時間がかかるだろう。

「クソッ、なんでこんなことするんだよ!?」
「さてな、理由なんざ知らないし知りたいとも思わないね! オレはあのときの借りを返すだけだってーの!」

 振り下ろされたランスをなんとか受け止めるが、直後にバインダー先の砲口が自身へと向けられシンは反射的
に顔を逸らす。

 ――ドン!

 鼓膜が破れたのかと思ったが、砲弾が壁を砕く音が聞こえたことでその可能性を否定できた。
 強引にアビスを押しのけて後ろに飛びつつダガーを抜き放つもあっさりとランスで弾かれる。

「殺す気か!?」
「てめぇがそれを言うのかよ、俺らを散々ブッ壊してきた奴がよ!」

 次々と飛んでくる砲弾とビームを身を低くして避けながら路地の角へと逃げ込む。

 ――クソッ、デス子は……!?

 食らいついたように背後に迫るアビスの気配を感じながら見えるはずもない元いた場所へと視線を向ける。
 ここからではあの二体を相手に一人で戦っているデスティニーの戦況を窺うことすらもできない。
 助けに行くにしろ助けを求めるにしろこの状況では厳しいことに変わりは……
 そこまで考えて、思わず立ち止りそうになる。

 ――馬鹿か俺はっ!

 本音がどうであれ、今デスティニーの元へ向かうということは彼女の力を借りてカオスたちを撃退するという
ことに他ならない。
 それは自分への恨みを持った相手を、彼女に背負わせることと同義だ。
 一時でもそんなことを考えてしまった自分に歯ぎしりをして、シンは踏み止まり振り返る。

「ハッ! 覚悟を決めたかぁ!?」
「――あぁ、今さらな」

 ランスを振りかぶるアビスを正面に見据えて、シンはナイフを構えた。



 ポッドから放たれるビームをかわしながらデスティニーはカオスへと肉薄する。

「どかないなら斬ります!」
「やれるもんならやってみやがれ!……ですわ!」

 袈裟斬りに振るったフラッシュエッジがサーベルで受け止められる。逆の肩から引き抜いたフラッシュエッジ
で逆袈裟に斬りかかるがこれも脚のビームクローにより阻まれた。

「ガイア!」

 声とほぼ同時に仕掛けられた下方からの攻撃にたまらず距離を取る。
 その先に、カオスの機動ポッドが待ち構えていた。
 射出されたミサイルが白煙の尾を引き

「くっ!?」

 ミサイルの爆風に煽られ地面へと落下していく。目まぐるしく回るデスティニーの視界に、変形したガイアの
姿が映った。展開されたビームブレイドがその刃を輝かせている。
 背筋が凍るような悪寒を感じつつも翼のスラスターを全開にして落下を加速させてやり過ごす。
 しかし不安定な体勢のまま急加速をかけたため受け身も取れずに地面へと叩きつけられる。

「がっ……!?」

 激痛に歪む視界の中に人型に変形したガイアがサーベルを抜き迫る姿を捉えたデスティニーは飛翔して距離
を取る。

 ――ガキッ!

 突如身動きが取れなくなり、デスティニーはハッと頭上を見上げる。
 カオスが変形させた脚部のクローで両肩を掴み、上昇を妨げていたのだ。

「おーっほっほっほ! チェックメイトというやつですわね……ガイア!」
「うん……」

 勝ち誇った笑みを浮かべたカオスの命に従い、ガイアが再びMAへと姿を変え翼に光の刃を宿す。
 カオスを振りほどこうともがくが真上という位置関係と凄まじい力で肩の装甲に食い込むクローによりロッ
クを外すこともその場から離れることもできなかった。

 焦りに染まりきったデスティニーの瞳に、迫り来るガイアの姿が映った。



 ――楽勝だ、そうアビスが考えていた。
 純粋に戦闘を楽しめそうもないという点はともかく、生身の人間を相手に劣るわけがない。
 退屈だが楽な役回りだ、物足りなさはあるが文句はない。
 ……そう、楽なはずだった。

(なんなんだよ、コイツ!?)

 遠慮など一切せず砲撃を放っている。カオスはああは言っていたが実際のところシン・アスカの生死など
どちらでもいいと考えていた。ガイアについては何を考えているか分からないが少なくとも反対する気はない
ことだけは確かだった。
 だからこそ、アビスはほとんど躊躇することなく本気で殺しにかかった。
 ――だが殺せない。退くならばその背を撃つつもりだったが、逆にどんどん前へと進み距離を縮めてくる。
 ビームや砲弾がまったく当たっていないわけではない。砲弾を避けても石畳に当たれば砕けた破片が皮膚を
削り、またビームはほとんどをナイフで弾いてはいても捌き切れないものが肌を焦がしていた。
 だというのに、瞳に紛れもない戦意を宿しながら徐々に近付いてくるのだ。
 いや、ただの戦意ではない。何か別の決意が籠った執念があった。

「このっ、舐めんなぁ!」

 バインダーが開き六条のビームが奔る。身をかがめたシンはそのうち一本のみをナイフで弾きさらに前へ出る。
 その姿にアビスは苛立ちと共に戦慄を覚えていた。
 一方で、慎重に歩を進めるシンは焦っていた。多少どころではない無茶をしたせいで傷を負い過ぎた。生きて
いるだけでも御の字ではあるが、それでは不味い。

「……どけ」
「あぁ!?」
「あいつを、助けに行くんだよ」

 その言葉がデスティニーのことを指しているのだと気付き、アビスの中に溜まりに溜まっていた感情が一気に
沸点を超えた。
 ――助けに行く? デスティニーを?
 ――自分を無視して?
 ――……自分が手にかけた相手を無視して?

「は、ハハハハハ……アハハハハハハハハハ! 上等だこの野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 すべての兵装を展開し一斉に安全装置を外す。
 もはや周りの被害が広がろうと知ったことかと全身の砲門が凶悪な光を溜め始める。
 ――つまり、先ほどまでの攻撃よりもチャージの時間が長い。
 その瞬間、シンは動く。今までの慎重さを捨て一気に駆け出すと同時に懐から取り出した玉をアビスへと投げ
つける。

 ――バシュッ!

 破裂音と同時に路地が白い闇に包まれる。
 煙幕――ダークダガーとの一件以来使えるかもしれないと数は少ないが用意していたものだった。
 不意のことで戸惑ったアビスは動きを止める。このまま撃てばいいのか、一度退いた方がいいのかの二択に
思考までもが硬直していた。

 一瞬の判断が命運を分ける戦場ではあまりにも大きすぎる隙の内に、シンは少女の懐に潜り込みナイフを握っ
た右手を突き出した。



 ガイアが飛翔し、翼のスラスターを噴かす。
 カオスはその瞬間、自分たちの勝利を確信した。ガイアのスピードを持ってすればデスティニーの身体など
容易く両断できる。それ故の判断だった。
 その認識は間違ってはいない。肩を抑え動きを封じている状況を踏まえて考えるなら絶望的と言っていい。
 ――そう、その速さを上回ることでもない限りは。

「――エクストリームブラストモード、起動」

 デスティニーがそう呟いた瞬間、その双眸が輝いた。背部スラスターが展開し、光の翼が瞬時に広がる。
 次の瞬間、ガイアの軌道からデスティニーの姿が消えた。

「っ、速い……!」

 翼が空を切った感覚にガイアは変形しデスティニーの姿を探す。
 いた。上にカオスを乗せたまま凄まじい速度で上昇している。かすかながらカオスの悲鳴が聞こえてきた。
 圧倒的なまでの推力。サード・ステージの機体の中でもトップクラスのスピードを誇るデスティニーだから
こそできる芸当だった。
 デスティニーが空中でぐるりと回る。一瞬の停止の後、上昇時とほぼ変わらぬ速さで今度は地上へと下降して
くる。

「――ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!?」

 地上に近付くにつれ大きさを増してきたカオスの絶叫が石畳が砕ける爆音を境に途絶える。
 濛々と上がる土煙の中から、デスティニーだけがゆっくりと立ち上がった。

「か、は……」

 かろうじて呻き声を漏らしていることからカオスがギリギリではあるが無事であることを知り小さくほっと
息をつくガイアだったが、すぐに表情を引き締めデスティニーへと斬りかかる。
 だがその刃がデスティニーへと届く前にその掌から放たれた光にガイアは弾き飛ばされた。
 ほとんどチャージもしていない中距離モードだったため撃破までは至らなかったが、それでもガイアは壁に
叩きつけられそのまま崩れ落ちる。

「あ、う……?」

 フラフラとカオスが立ち上がり、ガイアの姿を見て息を呑む。
 そして無言でアロンダイトを引き抜いたデスティニーに「ひっ!?」と小さく悲鳴を上げた。
 大上段で振り上げられた対艦刀を怯えた目で見つめる。足がすくみ、逃げることもできない。
 そして、一切の言葉もなく大剣が降り降ろされ……

「デスティニー!」
「っ!?」

 カオスの頭上数センチ手前でアロンダイトが止まる。剣圧により発生した風だけが顔を叩き、カオスは地面へ
とへたりこむ。

「マス、ター……!?」

 ゆっくりと声の元へ振り向いたデスティニーの視線をカオスも辿ると、アビスを背負ったボロボロのシン・
アスカの姿があった。



「……負けちゃったね」
「くっ、まさかあれほどの性能だったとは」
「お前らはまだ良い方だろうがよ……チッ、あの野郎!」

 毒づきながらアビスは立ち並ぶ木のひとつを蹴りつける。
 すっかり陽も落ち暗闇が広がる林の中を三人は隠れ家へと向かい歩いていた。
 ――あの後、気絶させられたアビスを押し付けるとシンとデスティニーは止め刺すでも自警団に突きだすでも
なくそのまま立ち去ろうとした。

 ――テメエらっ、情けでもかけるつもりか!?

 力が抜けて上手く立ち上がることもできなかったが、屈辱に顔を歪めながらカオスはそう叫んだ。
 シンは立ち止り、しかし振り返ることはせず答えた。

 ――……そんなんじゃない。ただ、もうこんなことはうんざりなんだよ。

 それだけを言って、デスティニーを連れて路地裏から消えていった。
 追うことも考えたが、自警団が近付いてくる気配に考えを改めその場を逃げるしかなかったのだった。

「で? どうするよカオス。あの仮面のおっさんに報告すんのか?」
「できるわけがないでしょう!? 返り討ちにあった上にこんな屈辱まで受けたことを!」
「ま、そうなるか。つってもすぐにバレそうな気も……あ? 何してんだガイア?」

 一人立ち止り明後日の方を見つめるガイアに気付いたアビスは振り返った。遅れてカオスも眉を寄せて問い
かける。

「ガイア? いきなり何ですの?」
「……こっち」

 隠れ家とはまるで関係ない方へと進み始めたガイアの様子を怪訝に思いながらも放置するわけにもいかず
二人はその後に続く。
 ……十数分は進んだだろうか、相も変わらず続く草木以外に何もない景色に苛立ちながらカオスは先を行く
ガイアに声をかける。

「ちょっとガイア? いい加減何か説明を……」

 言いかけて、声が止まる。
 ガイアが立ち止っていた。その先の闇の中に何かがいる。アビスもそれを感じ取ったのか息を呑む気配があった。
 やがて、その『何か』は姿がはっきりと分かるほどまで近付いてきた。

「お、おいおい! マジかよ!?」
「あなた、は……!?」

 カオスとアビスはその正体を見上げ驚愕のあまり絶句する。
 そしてガイアは、すっと息を吸った。

「――や、はじめまして」

 小さく手を掲げる少女に応えるように、『何か』も真似をするように手を上げた。




<反省会~人それをセルフツッコミという~>
アビス「そういやカオス、お前なんでそのままデス子にトドメを刺さなかったんだ?」
カオス「え?」
アビス「上を取ったんならそのままライフル撃つなりサーベル刺すなりできたはずだろ?」
カオス「そ、それは……ほら! フ○ストコンビネーションだって弟がトドメを刺せばいいのに兄に譲っているわけで……」
アビス「…………」
カオス「…………」
アビス「もう過ぎた話だしいいか」
カオス「ですわね」

ガイア「結論、カオスがタジャドルプロミネンスドロップを使えば勝てた」
二人「「使えねぇよ!」」

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最終更新:2011年03月11日 12:00
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